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第52話

かがりさんは恥ずかしさに耐えられなくなったのか、窓の外に視線を移す。


僕はそんな篝さんをじっと見つめる。


背中くらいまでの綺麗な黒髪。まっすぐさらさら。


首筋に小さなホクロ。


「っ!?」


篝さんが窓の外、つまり、右を向いているので少し開いた胸元からちょっと中が見える。


やばい!沈まれ僕!


僕は左右に顔を思いきり振る。


「フユトさん?」


「え!?はい!?」


突然こっちを向くものだから、僕は驚いて声が裏返ってしまった。


「どうしました?」


僕は視線をベッド脇にずらす。


「あ。」


篝さんが僕のほうを呆れた顔で見つめる。


「フユトさん。」


「……はい。」


なぜか敬語になる僕。


「本当に男の子ってエッチですね。」


「え!?」


そういう発言を躊躇わずに言える篝さんもエッチなのではないだろうか?


なんて口が裂けても言えない。


「そんなに……その、女の子の体が気になるのですか?」


「え!?ご、ごめん、そういうつもりじゃないんだけど!」


「ちょっと手を出してください。」


「え!?」


この数分で何回目の「え!?」だろう?


篝さんは少し辛そうにしながらも、自分の右手で僕の手を掴み、心臓付近に持ってゆく。


篝さんの手の温もりと、心臓の鼓動を感じる。


「どうですか?」


「篝さん、すごくドキドキしてる。」


「そうですよ。好きな人がそばに居てくれるだけで、私は鼓動が高まるんです。」


さっきまでのよこしまな自分を殴ってやりたくなった。


彼女は純粋だ。


僕ももっと誠実であるべきだ……と再認識させられた。


でも、ちょっと柔らかい丘のはじまりを微かに感じる。ちょっと僕もドキドキが止まらない。


「クスッ。」


篝さんが不意に笑う。


「ど、どうしたの?」


「フユトさん……、本当は触れると思ってたでしょ?」


すべてを見透かしたような発言よりも、敬語ではなく自然に出た言葉に僕は胸が苦しくなる。


「……ごめん。」


「謝らないでください。冗談です。」


クスっと再び微笑む。


「篝さん。」


「はい?」


「僕、ますます篝さんのことが好きになったかもしれない。」


「……それはうれしい限りです。」


「顔、赤いですよ?」


「か、篝さんだって!」



……。



『クスッ』



お互いが同時に笑う。


「フユトさん。退院したら、また一緒に学園生活を送ってくださいますか?」


「うん。最高の三年間にしよう!」


結んだ僕たちの手は離れ、指切りを交わす。




……。




一瞬よぎった胸騒ぎ。


幸福の感情とは違う、なんとも言えない不安が不意に心を支配する。


「フユトさん?」


「え?いや、なんでもない!そ、そろそろご両親を呼んでくるね。」


僕は今の表情を見られたくなくて、篝さんに顔を見られないように前室へと向かった。



©2017,2018,2019 すたじお・こりす

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