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第47話

しばらくフランチェスカさんと他愛ない話をしていると、約束の時間になろうとしていた。


『フランチェスカ。』


花音かのんさん、おはようございます。」


『あら?早坂はやさかくんも一緒だったのね。』


「はい。おはようございます。」


『おはよう。では、行きましょうか?』


僕たちは、前回同様ID認証の部屋を通りかがりさんの病室の前にたどり着く。


「僕はここで少し待ちましょうか?」


フランチェスカさんに便乗した僕は、一緒に入室するのは失礼だと思いここに留まろうとする。


「平気ですよ。ご一緒に面談しましょう?それとも、篝ちゃんと二人きりがよろしいのかしら?」


「え!?いえ、そんなつもりは!」


顔が赤くなっていくのが分かる。


「ふふ。可愛いですね。」


『では私はここで。』



コンコン。



フランチェスカさんが静かにノックする。



「どうぞ。」



「失礼します。」


「お、おはよう篝さん。」



「フランチェスカさん、それにフユトさんも。」


篝さんが僕とフランチェスカさんを交互に見る。


「お二人が知り合いだったとは知りませんでした。」


「以前お店に来ていただいての縁ですよ。」


フランチェスカさんが軽く微笑む。


「具合はどう?」


僕は容体を確認する。


「はい、平気です。まだ体を動かすと痛みはありますが……。」


「でも、こうしてお話しができるまでに回復されてなによりです。」


フランチェスカさんが篝さんのベッドの前でしゃがみこみ、手を握る。


「ありがとうございます。」


「では、私はこのくらいで。」


「え?フランチェスカさん、もう帰っちゃうの?」


僕に遠慮して足早に帰ろうとしていたら申し訳ないと思い、引き留める。


「元気なお顔を見れて安心しました。もっと容体が落ち着いた頃にまた伺います。」


なぜか篝さんを見ながら軽くウィンクしたのが見えた。


「わざわざありがとうございました。」


「お大事になさってください。私は表で花音さんと少しお話してから帰ります。」


そういうと部屋を後にした。


きっと前室で花音さんと今言ったとおり雑談をしていくんだろう。


「……。」


お互い何を話そうと考えるあまり、言葉にならない。


「フユトさんの体調はどうですか?」


「うん、僕はもう大丈夫。篝さんのほうが心配だよ。」


「私も、体の痛みさえなくなれば平気です。」


「そういえば、相坂あいさかさんはいないの?」


僕はさっきのアイリさんの件が気になってついつい遠回しに質問してしまう。


「相坂ちゃんは私との面会を許可されていないそうです。」


「え?」


「今回の事故が事故なので、その責任を追及されそうなんです。」


篝さんが少し暗い表情になる。


「……責任って何?篝さんを怪我させたから?」


「そのようです。私はその件については相坂ちゃんの責任は無いと説明していますし、解任処分は無いと思います。」


「でも、20日間の面談禁止措置が取られています。」


20日間は会ってはいけないということか……。


不謹慎だけど、少しホッとしてしまった。その20日間でさっきの件はどうにか弁解しておかないと。


「女の子とお話ししているのに別な女の子の話をするのはどうかと思いますよ?」


少し拗ねたような顔をする篝さん。最高に可愛い。


「ご、ごめん。気を付ける。」


素で謝ってしまった。


「ふふっ。」


何がおかしかったのか微笑む篝さん。


「あ、それと昨日お父様にフユトさんと同じ病室にできないかとお願いしてみました。」


「え!?」


今、同じ病室って言ったか?


「お、お父様は何て言ったの!?」


僕は少し動揺してしまって❝お父様❞って言ってしまっていた。


「お医者様に打診してみるそうです。」


「……。」


マジか。


「もしかして、嫌でしたか?」


「そ、そんなことはないよ!う、嬉しいよ、うん!」


24時間篝さんと一緒とか嬉しいけど精神が持たなそう……。


「で、そ、それは決まったの?」


「いえ、まだお父様からお返事はもらっていません。」


「そ、そう……。」


年頃の男と女だぞ。医者が許可するとは思えないけど。


「あのフユトさん、少し私のことを起こしてもらえませんか?」


「え?」


「ベッドの脇にスイッチがあります。少しヘッドの部分を起こしてほしいんです。」


「うん。」


ベッド脇にある昇降スイッチの昇を押すと、ゆっくりとベッドの上半分が起き上がる。


「!」


上着のボタンが少しはずれているせいか、ちょっと胸元が見えてしまう。


僕の視線に気付いたのか、篝さんは肩を僕と反対方向へ少し動かす。


「は、恥ずかしいのであまりそういうのはやめてください。」


「ご、ごめん!偶然だよ!ほんとごめん!」


いきなりの失敗。


くっ……。男ゆえの性だと言い訳したい。


篝さんって、制服越しでは分からなかったけど結構胸は大きい。一瞬見えた胸元は、どこにも晒されていないような色白さを持っていた。


「……。」


再び無言。


「フユトさん。」


いつも以上にやさしい声で僕を呼ぶ。


「ん?」


「私に、本当は聞いておきたい事がありますよね?」


「え?」


「……私とその…お付き合いするにあたって、きっと…言いたいこととか……ありますよね?」


それはお家柄の事だと確信できた。アイリさんも同じ事を言っていたアレだ。


「……うん。でも、聞いていいの?」


「避けては通れない事です。向き合わなければいけません。」


しばしの無言。


「フユトさん、どうぞ。」


僕の口から聞いてきて欲しい、そう言っている気がした。


覚悟を決めろ、僕。


僕は軽く深呼吸した。

©2017,2018,2019 すたじお・こりす

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