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第46話

「はめる?なんのことですか?」


「わざとやっただろ?」


「言っている意味が分かりませんが、早く相坂あいさか先輩を追いかけたほうがいいんじゃないですか?」


「……。」


僕は無言でベッドを出る。アイリさんは僕を引き留めず、ずっとクスクスと笑みをもらしていた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



廊下に出る。


早く相坂さんを見つけて説明しないと。


気持ちばかり焦る。


「はぁ。」


溜息をつきながら、相坂さんが行きそうな場所を考えるまでもなく思いつく。


かがりさんの病室。


僕はそのままID認証の手前の部屋まで歩く。


誰もいない。


それに花音かのんさんがいないとこの扉を開けることができない。


「どうすればいいんだ……。」


今思ったけど、この扉を抜けないと篝さんに会えない。なのに、どうやって篝さんに会おうとしていたんだ僕は。


「間抜けかよ。」


少し扉に寄り掛かり、花音さんが偶然にも訪れないか待つ。


5分待っても、10分待っても誰もこなかった。


「……一旦帰るか。」


僕はそのまま来た道を戻り、病室には戻らず総合休憩室そうごうきゅうけいしつへ向かう。


入院患者さんが2~3人くらいしかいない。


誰が見ているかも分からないテレビは、今朝のニュースを伝え続けている。


僕は丸テーブルに腰かけて外を見る。


「……どうすればいいんだよ。」


「あら?」


背後から女性の声がする。


「?」


振り返ると、どこかで見たことのある顔。


「あれ?確か喫茶店のメイドさん?」


フランチェスカさんだった。


「奇遇ですね。誰かのお見舞いですか?」


その発想ということは事件の関係者だということは知らないようだ。


「いえ、ちょっと事故に巻き込まれてしばらく入院しているんですよ。」


「え!?大丈夫でした?」


「あ~、問題ないです!」


「そうでしたか、それはよかったです。」


「フランチェスカさんでしたっけ?」


あえて再確認する。


「はい。」


「誰かのお見舞いですか?」


「私は花音さんの娘さんのお見舞いに来ました。」


「!!」


「ど、どうされました?」


「フランチェスカさんって篝さんと知り合いなんですか!?」


「えっと、正確には私は花音さんと交友関係にあります。」


「なるほど……。」


すごい偶然だな。僕は少し感動してしまった。


「あの、僕も一緒に面会したいんですけどID認証の部屋を通るんですよね?」


「そうです。花音さんとは午前10時にここで待ち合わせをしています。」


「ここで?」


「はい。」


財閥の人が普通にここに来るというのか?


そういえば、花音さんって財閥の当主の妻というのに護衛がひとりもいないかった。


どういうことだろう?


今思えば篝さんの部屋の前にも護衛がいない。


まぁ、相坂さんが篝さんの護衛に近いけど、あの時はいなかった。


「何を考えているか教えてあげましょうか?」


フランチェスカさんが考え事にふけってしまった僕の顔を覗き込む。


「分かるんですか?」


「ええ。」


ポンと胸に手を当ててドヤ顔をする。


「ではどうぞ。」


僕は少し茶化し気味に解答をうかがう。


「ずばり『どうして財閥のお偉いさまなのに一人で自由に行動できているのか?』ではないですか?」


「……正解です。」


「ふふっ。やったぁ。」


小さなガッツポーズをするフランチェスカさん。結構お茶目な人だ。


「フランチェスカさんは知っているんですか?」


「ええ。もちろん。」


「教えてもらえますか?」


「いいですよ。」


「花音さんは私と出会う以前にも『普通の女の子』にあこがれ続けた人です。生まれてからずっと特別扱いされてきた花音さんにとってこれはとても大事なことでした。」


「だから、花音さんはいつも護衛はつけません。その代わりに、非常通報ボタンを持っています。場所は教えられませんが。」


「僕は花音さんを襲うつもりはありませんよ。」


「さぁどうだか?男の子っていつでもオオカミになり得るって聞きましたよ?」


どこで聞いた知識だろうか?


「冗談はさておき、篝ちゃんも同じ思いのようですけどね。」


「……。」


フランチェスカさんが髪をかきあげる仕草をした時だった。


「あれ?そのイヤリング。」


「え?これですか?」


フランチェスカさんが付けているイヤリングは砂時計の形をしていた。


これと同じものを昨日僕は見た。


「フランチェスカさんってお姉さんか妹さんっています?」


「さぁ。どうでしょうね。」


「教えてもらえないみたいですね。」


早坂冬登はやさかふゆとさん。」


「え?なんで僕の名前を?」


「何が真実で何が嘘か。問題はそこではありません。あなたが何を信じて、どの道を目指すのか?そこが一番大事なことですよ?」


「え?」


「それと、この前お店に来た時に名前を呼ばれていたのを覚えていただけです。」


「あ。」


ちょっと深く勘ぐりすぎているのか、基本的なことが見えていない僕だった。


「あと30分くらい時間がありますね。ご一緒に座ってよろしいですか?」


「はい、どうぞ。」


隣に腰かけたフランチェスカさんはテレビを眺めている。


とりあえず相坂さんを探すのは諦めて、篝さんと再び面会することを選んだ。

©2017,2018,2019 すたじお・こりす

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