第45話
【視点変更:早坂冬登】
翌日。
朝食を済ませ、特にやることもなく病室のベッドから外を眺める。
「病人じゃないのに病室を占拠していていいものなのか……。」
この街で一番大きな病院だから、病床数は気にしなくてもいいらしい。
ガラッ!
病室はスライドドアになっている。
不意にノックも無しに豪快に開け放たれ、僕はかなり驚いてしまう。
「おはよーございまーす!!!」
超ハイテンションで豪快に入場する女の子。
「ア、アイリさんっ!?」
「先輩!おはよーございます!!さわやかな朝ですね!!!太陽が希望の光ですね!!!!」
ラジオ体操の始まる前の歌か…と心の中でツッコミを入れる。
「ア、アイリさん!なぜここに!?」
「お見舞いです!」
昨日とはまったく雰囲気が違い、学園でのアイリさんだ。
「昨日とテンションが大幅に違うよね?」
「昨日?」
「え?」
「私、昨日はお見舞いに来てませんよ?」
「は?」
どういうことだ?
「僕が目覚めたらアイリさんが居たよね?」
「冗談です。」
冗談なのかよ!
このツッコミも心の中にとどめる。
「我慢はよくないですよ?」
「心の中を読むな。」
「てへっ☆」
「ところで……。」
僕は本題に入ろうとする。
「待ってください先輩。」
「ん?」
するとちょっと真面目な顔をするアイリさん。
「水無月先輩、今回は先輩のせいで危険な目に遭ったんですよね?」
「……え?」
「だって、水無月先輩は先輩をかばったんでしょ?」
「……。」
「それなら、先輩は水無月先輩から手を引くべきです。」
「え?」
「だって、先輩が水無月先輩のことを好きだったばかりに標的にされたんですよ?」
それはまだ不確かな情報だ。
「そもそも、水無月先輩はご令嬢ですよ?釣り合うわけないし、交際なんてできるわけないでしょう?」
ドクン。
僕は大きく鼓動が高鳴る。
それは分かっている。でも、あえて誰も触れてこなかった部分だ。
「アイリさんは何者なの?創造主って何?」
「それは私の口から言うべき日が来たら言いますよ。」
「それは今じゃないと?」
「はい。今ではありません。」
「先輩と水無月先輩は決して釣り合いません。これは何度でも言います。」
「……。そんなの…分かってる。」
「じゃあ何で今でも諦めていないんですか?」
「そ、それは……。」
「ん~?」
言葉に詰まってうつむく僕の顔を、アイリさんは下から覗き込む。
「水無月先輩は諦めて私と付き合いませんか?」
「は!?」
「私なら、先輩と同等に釣り合いますし、先輩が私に望むことはすべて受け入れられます。」
「どういうこと?」
わけが分からない。
「……鈍いなぁ先輩。こういうことですよ。」
「!!!」
不意に唇に感じる温かい感触。
僕は目を見開きアイリさんを見ると、彼女の顔は目の前。
目は閉じられている。
僕はそのもっと奥の入り口に視線をそらすと、そこには開き放たれた入口に立ちつくしている相坂さんと目が合う。
「ちょっ!!!」
僕はアイリさんを引き離す。
「やんっ!もう!どうしたんですか?」
「いや、これは違う!」
僕は相坂さんに向かって叫ぶ。でも、相坂さんは無言で踵を返し、その場をあとにしてしまった。
「!!」
アイリさんに視線を戻すと、僕はすべてを悟った。
「……僕をはめたな?」
僕は見てしまったんだ。
アイリさんの不敵な笑みを。
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