第43話
しばらくして、モトキが戻って来た。
「買って来たぞ。」
「ありがとう。」
「そう言えばモトキ、学園は?」
「お前を見舞ってから行くって連絡してある。」
「そっか。」
「ちょっと言いづらいけど、篝ちゃんと会ったか?」
モトキが天井を見上げて控えめに言う。
「うん。面会した。」
「容体は?」
「とりあえず一命はとりとめてるけど、意識が戻らない。」
「……。」
「フユト、お前、これからどうする?」
「え?」
「それでも篝ちゃんと付き合いたいか?」
真剣なモトキ。
「……うん。僕は、篝さんのことが好きなんだ。」
「そうか。それなら俺はいつでもお前の味方だ。」
コンコン。
今日3回目のノック。
「どうぞ。」
すると、看護師さんだった。ちょっと慌てている。
「早坂さん!花音様がお呼びです!」
「え?」
どうしたんだろう?
「フユト、行って来い。」
「うん。」
看護師さんに案内され、昨日のようにID認証の扉の前に花音さんは居た。
『ごめんなさいね、急に呼び出して。』
「いいえ。平気です。どうしたんですか?」
『移動しながらお話しするわ。』
「はい。」
花音さんのあとに続く。
『篝が、目覚めたの。』
「え!?」
ドクン。
心臓が大きく鼓動を打つ。
それ以上花音さんは何も語らない。
「花音さんは篝さんとお話は?」
『ええ。少し。なにやら、あなたに会いたいそうよ。』
「え?」
『私はここで待つわ。どうぞ。』
「ありがとうございます。」
僕はノックする。
「どうぞ?」
篝さんの声。僕は涙をこらえる。
「か、篝さん?」
「あ、フユトさん……。」
「平気?」
「はい。まだ体中が痛くてあまり動けませんが、もう…平気です。」
「篝さん、本当にありがとう。それから、ごめん。こんな目に遭わせて。」
「フユトさん、もっとこっちに来てください。」
ベッド脇の面会者用椅子に視線を向ける。
「うん。」
僕は椅子に腰かける。篝さんはまだ体は動かせないようで、顔だけこちらを見る。
「フユトさんが無事でよかった……です。」
「篝さん。僕は……。」
【言いたいことも言えない。そんなあなたが篝ちゃんの前に立った時、何を語れるというの?】
相坂さんの一言が頭に蘇る。そうだ、僕は伝えなければいけない。
「篝さん、助けてくれたことはすごく感謝しているけど、次からはそういう無茶はやめてほしいと思う。」
「……はい。」
素直に頷く篝さん。
「……。」
僕は篝さんの手に触れる。すると、篝さんは僕の手を握り返してくれた。
篝さんを見る。
やわらかな笑み。
「あの……フユトさん。」
「ん?」
「事故の時、最後に言った私の言葉を覚えていますか?」
「え?」
【好きです。】
こ、この事だよな?僕はちょっと動揺している。
「う、うん。き、聞き間違えじゃなければ……。」
「私とフユトさんはまだ出会ってさほど経っていません。でも、私は…フユトさんに惹かれるのです。」
「篝さん。」
篝さんは勇気を出したんだ。今度は僕も、伝えたい事を話すんだ。そう自分に言い聞かせる。
「僕も、僕も篝さんに……その、惹かれているんだ。」
「え?」
篝さんが意外そうな顔をする。
「えっと…、つまり?」
「うん。僕も篝さんが……好きなんだ。」
「……。」
僕は照れ隠しで篝さんの手を強く握る。
すると、篝さんも少し力を込めて再び握り返してくれた。
「ありがとう……ございます。」
「早く、元気になって学園にまた行こう。」
「はい。」
鼓動が落ち着いてくれない。信じられない。僕は篝さんと両想いだったんだ。
「っ!」
篝さんが声にならない苦痛をあげる。
「篝さん!?」
「へ、平気です。ご、ごめんなさい。今日は…もう疲れましたので、また明日…来ていただけますか?」
「う、うん。花音さんを呼んでくるよ!」
「ありがとうございます。お願い…します。」
「また明日。」
「はい。」
僕たちはまた明日会う約束をして、病室を出る。
それから花音さんと入れ替わる形で自分の病室へ戻る。
「……そういえば。」
どうして相坂さんはいないのだろう?
不意にそんな疑問がよぎったのだった。
©2017,2018,2019 すたじお・こりす




