第36話
そして、事件は昼休みに起きた。
「おいフユト、篝ちゃんを昼飯に誘えよ。」
モトキが今がチャンスだと言わんばかりに提案する。
「そ、そうしたいところは山々なんだけど、終礼が鳴ってから見かけなくて。」
それに相坂さんはクラスルームにいる。つまり、一人で行動しているということだ。
「相坂に聞いてみようぜ。」
「そうだね。」
相坂さんの机に二人で向かう。相坂さんは机に教科書をしまっていた。
「相坂さん。」
僕は遠慮気味に声をかける。
「何か用?」
「あの、篝さん知らない?」
「お譲様なら、正門前に呼び出されたみたいで私はここで待機するように言われているわ。」
「正門前?」
なぜ?今は昼休みだし、下校時間前の理由なき退校は禁止されている。
僕は嫌な予感がして窓際へと走る。
「おい!どうしたフユト!」
モトキと相坂さんが僕に続いて窓際についてくる。
「あれ!」
僕は篝さんを指さす。浜口が近くに居る。
「!!」
相坂さんが窓を叩く。
クラスルームの窓は事故防止の為開かない仕組みになっている。
僕はとっさに正門前に行く為に走る。
「おい!待てって!!」
二人も続く。
嫌な予感がしてならない。急げ!
僕は靴も履き替えないまま、急いで正門へと走る。こんなに全力疾走したのはいつぶりだろう?
全力で走り、ようやく正門付近まで来る。
「篝さん!!!」
僕は大きな声で叫ぶと、篝さんがこちらを振りむく。
「早くクラスルームの戻ろう!」
僕は息を整えようとするが、そうもいかず、ちょっと疲れ果てた声で篝さんへ提案する。
「ですが、ここで待っていてほしいと理事長がおっしゃっていたようなので。」
ここでモトキも追いつく。
「篝ちゃん!理事長がこんなところに呼び出すわけないだろ!」
「・・・ですが。」
「お譲様!急いで戻りましょう!なんだか胸騒ぎがやまないのです!」
「みんなどうしたの?」
篝さんは不思議そうだ。
ドンッ
僕は背後からものすごい勢いで背中を押され、そのまま正門を飛び越え道路へと吹き飛ぶ。
吹き飛ぶというより、思いきり押し出されたという感じだ。
「フユトさん!!!!!」
はじめて聞く篝さんの大きな声。
パァァァァァァァァァン!!!!
とても大きなクラクションの音。それが車であると感じた瞬間には、もう僕の目の前まで迫っていた。
刹那。
世界がスローモーションになった。
篝さんが、僕に駆け寄り、車が迫る反対車線へと突き飛ばす。
でも、
でも、
篝さんは・・・・・。
「いやぁぁぁぁぁ!!!!!!」
相坂さんの悲鳴。
そして、突き飛ばされたときに偶然見つけてしまった浜口の姿。
思惑通りと言わんばかりの不敵な笑み。
篝さんを助けないと!
でも、僕が尻もちをつくと同時だった。
ものすごい急ブレーキの音が響く中、確かに聞こえた篝さんの声。
『フユトさん、好きです。』
世界は白くなった。
僕の記憶はここで途絶えた。
©️2017,2018,2019 すたじお・こりす




