第34話
【視点変更:早坂冬登】
翌日。僕は憂鬱な気持ちで登校していた。
「はぁ。」
昨日、家に帰ってから溜息しか出ていない。
「よう、早坂。」
後ろから声をかけられる。
「!」
浜口だった。
「何か用か?」
「先輩に対する口の聞き方がなってねぇな。」
「・・・。」
「ま、お前とやりあう気は今はねぇよ。俺は水無月のお嬢様に用があるんだからな。」
「どういうつもりだ?」
「どういうつもり?お前には関係ねぇよ。」
「・・・。女子生徒を利用して僕と篝さんの関係を壊そうとしているのはお前か?」
すると、急に胸ぐらを掴まれる。
「お前、誰に向かって口聞いてんだって言ってんだよ?」
「また殴る気か?」
「殴るなら、篝ちゃんを殴ってやるよ。」
不敵な笑み。
「篝さんに何かしたら許さないぞ。」
「許さない?お前ごときに何ができるって言うんだよ?だったら今それを実行してみろよ。」
胸ぐらを掴む手を離し、僕と対峙する。
「ほら?止めてみろよ?俺が学園に行ったら篝ちゃんを殴っちゃうぞ?」
どうせできやしないだろうという顔で僕を見下す浜口。
「どうした?」
「うわぁ、朝から喧嘩ですかぁ?」
間の抜けた声が不意に響く。
「え?」
アイリさんだった。
「クソガキが、どっか行きやがれ。」
浜口が威圧する。
「クソガキ?私はこんなにも可憐な女の子ですよぉ?おこですよ~、ぷんぷん。」
両手で鬼のジェスチャーをする。
「ふざけやがって。」
浜口がアイリさんと対峙する。
「ふざけやがって?ふざけているのは浜口センパイのほうですよねぇ?」
急に真面目な顔になる。
「アイリさん!逃げるんだ!」
「逃げる?敵前逃亡なんて考えはありませんよぉ?なぜだか知りたいですか?」
「・・・。」
「・・・勝てる相手を目にして、逃げるバカなんていませんからぁ。」
「お前、俺のことをバカにしやがって!」
浜口が右手を後ろに引き、ストレートパンチを食らわそうとしていた。
「アイリさん!!」
僕はとっさのことで叫ぶことしかできなかった。
「!!!」
え?
華麗に右ストレートをかわすアイリさん。
「あ~ん、ダメですよぉ、女の子の顔を狙うなんて。」
「なに!」
動揺する浜口。まさか、こんなおちゃらけた女の子にパンチをかわされると思ってもみなかっただろう。
実際僕もかわすとは思っていなかった。
「浜口センパイ、これは警告です。」
「なに?」
「これ以上また危害を加えるような攻撃をしたら、私は全力で反撃します。」
「どういうことだ!?」
「・・・そういうことです。」
しばらくの沈黙。
意味はちょっと違うけど、例えるなら三竦みのような状態だ。
「フユト?」
モトキも合流する。
「ちっ。」
タイミングを失った浜口は、舌打ちするとその場を後にした。
「きゃ~ん、先輩、怖かったぁ。」
不意に腕に抱き付いてくるアイリさん。む、胸が・・・。
「ぼ、僕はアイリさんのほうが怖かったよ。」
「何のことですかぁ。」
「フユト、浮気か?」
「ち、ちがう!」
「冗談だよ。」
「そういうのやめてくれよ。」
僕はまた溜息をついてしまう。
「それじゃ先輩、私はもう行きますね!」
「う、うん、ありがとう。」
嵐のように現れて、嵐のように去る不思議な女の子だ。
「・・・。」
「惚れたのか?」
「黙れモトキ。」
「あいつ、何者なんだ?」
「僕もよく分からないよ。でも、普通の女子じゃないのは確かだと思う。」
不良の攻撃を瞬時に的確にかわすなんて、常人じゃないぞ。
「ま、早く行こうぜ。」
「おう。」
浜口の脅威はまだ去っていない。僕も、何かしら対策をしないと篝さんを守れない。
僕はどうすれば彼女を守れるか、真剣に考えていた。
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