第33話
自室に入ると、相坂ちゃんはいつもの定位置に座る。
「ふぁぁ。疲れたぁ。」
相坂ちゃんは私の部屋に居るときは自然体に戻る。私がそうお願いした。
「お疲れ様。」
「ありがとぉ。」
クッションに顔をうずめ、横になる。
「生き返るぅぅぅ。」
何がだろう・・・。
「ふぁぁぁ。」
どれほど疲れているんだろう、相坂ちゃん。
「で?話って?」
とろけたと思っていたら、いきなり本題を振ってくる。
「今日、フユトさんに指。」
私はそこであえて区切る。
「え?見てたの?」
「うん。」
「あれは、あれよ。私はあなたのことを敵視していませんっていうジェスチャー。」
「そうなの?」
「そう。だって、言い訳ばかり言って来て、私に弁解するのは筋違いでしょ。」
「・・・。」
「あ?妬いてるぅ?」
相坂ちゃんは起き上がり、私のほっぺを人差し指でプニプニする。
「や、やめてよ!そんなんじゃないよ。」
「ふーん。」
「えい。」
その人差し指を私の唇に当てる。
「はーい、間接キス。」
「!!」
え!?
「顔、赤いよ?」
「あ、赤くない・・・もん。」
「いや、赤いって。」
「ないもん!」
「ふっ。」
すべてを見通したような感じで鼻で笑われる。
「あんな男のどこがいいのかしら?」
相坂ちゃんが再び横になる。
「ちょっと、私のタイプを否定しないでよ~。」
「タイプねぇ。」
コンコン。
不意にノック。相坂ちゃんがものすごい速さで起き上がり、正座する。
「どうぞ。」
「お邪魔するわね。」
「お母様。」
「久しぶりにアップルティを淹れてみたの。どうぞ。」
「花音様、わざわざありがとうございます。」
相坂ちゃんが立ち上がり、お盆に乗せられた二つのティーカップを受け取る。
「お邪魔したわね。」
それだけ言うと部屋を出て行った。
「ふぇぇぇえ。」
とろけるようにまたクッションに横になる相坂ちゃん。
「お行儀悪いよ?」
「いいのいいの。」
普段、想像以上の苦労をさせているらしい。
「で?告白予定はいつ?」
「ふぇっ!?」
私はいきなりの質問に変な声が出てしまった。
「だから、いつ「大好きです、愛してます。」って告白するのかって聞いたの。」
「いや、そこまで言ってないでしょ、もう!」
恥ずかしい。
「篝ちゃん、可愛い。」
「う、うるさいわね。」
アップルティを一口いただく。お母様のオリジナルブレンドは、真似できない美味しさだ。
「私もいただこうっと。」
ずずっと上品にアップルティを口にする相坂ちゃん。
「いつ頂いても美味しいわね。」
「お母様の青春の味らしいわ。」
「秋伸様との学園生活の思い出なんでしょ?」
「うん。そうみたい。」
お母様はお父様と知り合って、学園の司書室でいつもお茶会をしていたらしい。
「篝ちゃんの青春はまだかなぁ。」
ブフッ。
思わずアップルティを口から吹いてしまった。
「ちょっ!変な事言わないでよ!」
「言ってないけど?」
「言ったわよ!相馬廻さん。」
「そ、相馬って言うな!」
「・・・。」
『フフッ。』
私たちは同時に笑う。
私と相坂ちゃんは自室ではいつもこんな感じ。親友と言っても過言じゃない。
これが、本当の私たち。
この事実を強く実感しながら、私たちは笑った。
©️2017,2018,2019 すたじお・こりす
※本話では、「図書室のお茶会」の原作を一部引用しております。
「図書室のお茶会」©2010,2011 ゆきづきせいな




