第31話
私は結局、中庭には行かず急いでクラスルームへと戻った。
席に着いて、一旦落ち着こうとするけど全然鼓動が落ち着いてくれなかった。
まだドキドキしている。
どうしてあんなことを?
もしかして、相坂ちゃんもフユトさんが好きなの?
「篝ちゃん?」
「え?」
不意に声をかけられて顔を上げる。
「どうしたの?」
モトキさんだった。一人でクラスルームに戻って来たようだ。
「何でもありません。」
「泣いてるよ?」
「え?」
言われて慌てて目をこする。涙は出ていない。
「心当たりがあるんだ?」
「モトキさんは意地悪ですね。」
「察する男と呼んでくれ。」
ドヤ顔で胸を張るモトキさん。
「ふふっ。面白い人ですね。」
「面白い事だけが取り柄だからね!」
そして真面目な顔になる。
「フユトの事、嫌いにならないでくれよな。あいつ、約束を破るような奴じゃないからさ。きっとお人よしだから何かあったんだと思う。」
「・・・モトキさん。」
「俺が今日の事情は聞いておくから、また昼飯にでも誘ってやってくれよ。」
「・・・ご配慮ありがとうございます。」
どういう事だろう?もしかして、フユトさんって私に気がある?
まさか・・・。私ったら勝手な妄想を。
「篝ちゃん?」
「ふぇっ!?」
そんな妄想途中に声をかけられて変な声になってしまった。
「大丈夫?顔、赤いよ?」
「へ、平気です。」
恥ずかしすぎてうつむく。
「それじゃ、俺は席に戻るよ。」
「はい、ありがとうございます。」
危ない危ない。
すぐ顔が赤くなるのどうにかしたい。
「はぁ。」
深呼吸で気持ちを落ち着かせる。
「水無月さん。」
「はい?」
再び声をかけられる。知らない男子生徒。
「あの、お久しぶりです。」
誰だろう?会った記憶がない。
「失礼ですが、私はあなたのことを存じません。」
「え?あ、無理はないですよね。パーティで一度両親とご挨拶したんですが。」
ああ、また❝財閥❞の話か。
今は相坂ちゃんがいないから、私がうまく回避するしかなかった。
「そうでしたか。わざわざありがとうございます。ですが、場所をわきまえていただけると嬉しいです。」
「あ、ごめんなさい。では、また改めて。」
そういうと男子生徒は立ち去る。
こういう話、一番苦手。
私は普通の女の子として見られたい。
そんな憂鬱な気持ちになりつつ、予鈴が鳴る。
フユトさんと相坂ちゃんが戻って来たのは、その直後だった。
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