第29話
それから、特別指導室で事情を聴取された。
ありのままを話したから、きっとお咎めは無いとは思うけど。
早々に停学処分にならないことを祈るだけだ。
午後の授業に少し遅れてクラスルームへ戻る。
「おー早坂かー、話しは聞いてるぞー、早く席に着けー。」
先生がお気楽に声をかける。
「はい。」
篝さんを見る。でも、彼女はこちらを見なかった。
嫌われたのかな・・・。
モトキは僕をちょっと睨んでいる。
相坂さんも見ていない。
「はぁ。」
席に着くとマナーモードにしているスマートフォンが振動する。
「ん?」
【どういうことか後で説明しろ。】
モトキからだった。
【了解】
二文字だけ入力して送信する。
午後の授業は結局頭に入らなかった。
放課後。
「フユト。」
モトキだ。早く説明しろと言わんばかりな顔をしている。
「分かった。ちょっと誰も居ないところに行こう。」
「は?フユト、お前、男もいけるのか?」
「バカか!そんなことあるわけないだろ!」
まったく。
おかげで少し緊張がほぐれた気もしないわけではない。
「どこで話す?」
僕はモトキに最適な場所をゆだねる。
「憩っていう喫茶店とかどうだ?」
「モトキ、お洒落だな。」
「お店の子が可愛いんだよ。」
「まぁいいや、行こう。」
■■■■
カラーン。
とてもいいベルの音が店内に響く。
「いらっしゃいませ!」
確かに可愛い。20代半ばくらいだろうか?
「二名様ですか?」
「はい。」
「では、お好きな席へどうぞ。」
名札をちらっと見る。
『フランチェスカ』
仕事用の名前だろうか?
僕たちはカウンターへ腰かける。
マスターというより女性店主がカウンター奥からやって来た。
「いらっしゃいませ。お決まりになったらご注文どうぞ。」
「はい。」
ここはコーヒーよりも紅茶のほうがメニューが多かった。
「僕はオレンジティーで。」
僕は紅茶を注文する。
「俺はオリジナルコーヒーで。」
「お待ちください。」
迎えてくれたフランチェスカという女性はそのまま僕たちのいるカウンターの少し端のほうに立っていた。
メイドさんみたいだ。
女性店主が注文の品を作っている。
「で?話を聞かせてもらおうか?」
モトキが店主の調理を見ながら声をかける。
「ああ。」
僕は今日の経緯を説明する。
「ふーん。浜口の差し金か?」
モトキは面倒くさそうな顔で言い放つ。
「そうかもしれない。これから少し面倒な日が続くかもしれない。」
「かもな。」
しばしの無言。
店内はちょっとレトロな雰囲気で、お客は僕たち以外いない。
時々フランチェスカを見ると軽くニコっと微笑んでくれた。
「お待たせしました。」
オレンジティーが差し出された。
「いただきます。」
ホットなのでゆっくりと口を付ける。
「おいしい!」
何だろう、不思議な後味だ。
「ありがとうございます。」
今までにない味で、これからちょくちょく来たいなと思ってしまった。
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