第26話
「あの、水無月さんですよね?」
不意に知らない女生徒に声をかけられる。胸元に付けられている学年章を確認する。
同じ1年だ。でも、名前は分からない。
「はい。そうですが?」
相坂ちゃんが無言で私の少し前に出る。
「あの、ちょっといいですか?」
すぐ近くの大木のあたりを指さす。どうやら、そこまで来てほしいという意味らしい。
「ここでは話せない御用ですか?」
「はい。」
少し困ったようにモジモジとしている。私は相坂ちゃんとアイコンタクトをとる。
「私も同席してよろしいですか?」
相坂ちゃんが割って入る。
「いえ、ごめんなさい。二人きりでお願いします。」
「・・・分かりました。」
「お譲様!」
「大丈夫、見えるところですから。」
「ですが、会話が聞き取れない場所です。」
「・・。」
「あの、お願いします。伝言があるんです。」
「伝言?」
誰からの?
「何かあれば俺も駆けつけるから。すぐそこだから信じてやれよ。」
モトキさんも口を開いた。
「仕方ないわね。何かあればすぐお呼びください。」
「ありがとう、相坂さん。」
女生徒に着いて行く。
「それで、どのような用件ですか?」
「あ、あの、伝言で・・・その、早坂君が・・・。」
「フユトさん?」
「は、はい。えっと、別の子とお昼を食べるそうなので先に食べてクラスルームに戻っていてくれと。」
「え?」
まさか、さっきのあの子と?
「い、以上です!!」
そういうと女生徒は早足で中庭を出て行った。
「・・・。」
フユトさん、どうして?
「お譲様!?」
相坂ちゃんが駆け寄ってくる。
「どうかしましたか?」
「いえ。フユトさんは来れないそうです。」
「え?何かあったのですか?」
「俺はそんなわけないと思うけど。」
「さっきの方からの伝言です。」
今のやり取りを説明する。
「フユトってさっきの女と面識あったかな?」
モトキさんが不思議そうにしている。
「・・・。」
でも、フユトさんが来ない。もうあれから20分は経とうとしていた。そろそろお昼休みが終わってしまう。
「お譲様、参りましょう。」
「・・・。」
「フユトの野郎。」
モトキさんが電話をかけようとしている。
「あの、モトキさん。いいんです。そういう事なのですから、強制は誰にもできません。」
「でも!あいつは!」
「いいんです。相坂さん、参りましょう。」
「相馬、ここで外してくれ。」
「お、おう。分かった。」
「(篝ちゃん、ちょっと。)」
誰にも聞こえない声で、相坂ちゃんが私を引っ張る。
「どうしたの?」
「ちょっと図書室に行こう?」
「え?うん。」
相坂ちゃんに手をつながれたまま、私は図書室へと向かった。
©2017,2018,2025 すたじお・こりす




