第24話
中庭に向かう途中、さっきの謎の女生徒を見つけた。
「ごめん、みんなちょっと先に行ってて。」
「どうしたフユト?」
モトキが不思議そうに僕を見る。
「ちょっとあの子に用事があるから。」
アイリさんを指さす。
「・・・あまり人に指を指すのは感心しないわね。」
呆れた顔の相坂さん。
「あの人って、フユトさんと抱き合ってた人ですよね?」
ちょっと不審な眼差しの篝さん。
「ご、誤解だよ!僕は!」
「僕は?」
相坂さんがその次の言葉を促す。
「僕は?」
モトキまで続くんじゃねえよ。
「ぼ、僕は?」
篝さんまで。
「いや、何でもない。」
「・・・はぁ。」
大きなため息をつく相坂さん。誰だよ、人と話している最中にため息はやめろって怒ってたやつは。
「早く行ってこいよ。待ってるから。」
モトキがしょうがないなと言わんばかりにフォローしてくれた。
「ごめん、すぐ向かうから。」
早足でアイリさんを追う。
「ちょっと待って!」
アイリさんの背後から声をかけると、振り向くことなくその場に足を止める。
「さっきはありがとう!」
まだ振り返らない。
「どういたしまして。」
そう言うとゆっくりとこっちを振り向いた。
黒髪で背中くらいまでの髪。ちょっとツリ目。よく見ると幼可愛い感じ。
「君は何者なの?」
僕は核心をついてゆく。
「私?私はアイリですよ。ほかの何者でもありませんよ?ふふっ。」
ちょっとおちょくるような話し方。
「先輩、早く中庭に行ったほうがいいですよ?水無月さんが嫉妬しながら待ってますよ?」
「・・・どうしてそれを?」
「さあ、どうしてでしょうね?」
「アイリさんも一緒にどう?」
僕はとっさにそんなことを口にしていた。なんだろう?この人、ちょっと懐かしい感じがする。
「いいえ。夏目は今や水無月の反逆者扱いですから、きっと場を悪くしますよ。ふふっ。」
「え?夏目?夏目って夏目財閥の夏目?」
「さあ、どうでしょうね。それじゃ、私はこれで失礼します。」
女子トイレを指さされ、僕はさすがについて行くわけにもいかず中庭へと向かうことにする。
アイリさんに背を向けると背後から、ほんの一瞬、声が聞こえた気がした。
『・・・フェリーチェ・ノッテ。』
ドクン。
その一言を聞いた僕の心臓は大きく鼓動を打つ。
なんだ?なんだこの感情は・・・。
もう一度、アイリさんのほうを振り返る。
彼女の姿はもうなかった。
2019.5.13 19:40 加筆修正
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