第23話
「先輩、右に転んでください。」
「は?」
浜口にばかり意識がいっていたせいか、なぜか僕の後ろの席付近にあの時の謎の女生徒がいた。
「右だよ♪」
浜口との距離はもうない。ここは素直に右に転んでみる。
ブーン!
浜口の拳が空を切る音が聞こえる。
「ぐっ!」
僕はそのまま右方向に転ぶ。ちょっと腕を痛めたし何か恥ずかしいぞ。
「ナイス!先輩!」
「かわしただと!?」
動揺する浜口。
「先輩、突進です!ゴー!!」
「は?」
「ほら、タイミングは待ってくれませんよ?」
「ちっ!」
僕はそのまま浜口に向かって突進する。浜口を押し倒す作戦。
「くそっ!!」
ガシャーンっと大きな音をたて、僕と浜口は近くにあった机という机を倒し尽くす。
「フユトさん!!」
篝さんが駆け寄ろうとするところを、相坂さんが止めていた。
『おいこら!なにをしとるか!』
不意に響く大きな野太い声。生活指導の野口先生が駆けつけたようだ。
「どういうことだこれは!?」
野口先生が僕と浜口のところへ来る。
「浜口!お前、なんで1年のクラスルームに居る!この騒ぎは何だ!?」
「・・・別に、ちょっと口論しただけですよ。」
僕を睨み付ける。
「とりあえず、関係者は一人ずつ面談する。とりあえず浜口からだ。次は早坂!あと関係者はいるか?」
「はい。」
モトキが手を挙げる。
「・・・はい。」
モトキを見た相坂さんが手を挙げる。
「!?」
相坂さんは篝さんが手を挙げられないように先生の死角から手を挙げないように邪魔をしていた。
「以上か?」
「はい。」
僕はその心情を察し、誰よりも先に口を開く。
「・・・よし、じゃあ浜口、来い。」
僕に舌打ちをしながらクラスルームを去る浜口。去り際に「覚えてろ」と言われてしまった。
「フユトさん!」
僕に駆け寄る篝さん。
「お怪我はありませんか!?本当にごめんなさい!」
大きく頭を下げる。
「平気だから頭をあげてよ!」
「ですが、ですが・・・。」
頭を下げているが、涙が床に落ちているが見えた。
「顔をあげて篝さん。」
「・・・。」
ゆっくりと僕を見つめる。
「篝さんこそ、平気?」
「はい。私は平気です。」
「フユト!お前、すごい反射だったな!」
「あ、ああ。」
謎の女生徒の事を思い出し、後ろを振り向く。
「いない?」
「どうしたフユト?」
「いや、さっき後ろに女生徒がいなかった?」
「・・・さぁ。」
モトキはその存在に気付いていなかったようだ。
「篝さんは?」
「えっと、ごめんなさい。事態に夢中で、それどころではなくて。」
・・・おかしい。
あの声は僕にしか聞こえていなかったのか?
「頭でも打ったか?保健室行くか?」
モトキが心配している。
「相馬も平気なの?」
相坂さんが照れながらモトキに声をかける。心なしか顔が赤い。
まさかこの二人・・・。
「ああ、こんなの慣れっこだ。」
「モトキさんも、相坂さんを守ってくれてありがとうございます。」
篝さんが頭を下げる。
「よしてくれ。とりあえず飯でも食おうぜ。また一緒にどう?」
さらっと昼食に誘えるモトキが羨ましい。
「フユトもいいだろ?」
お前、顔がニヤついてんだよ。
「お、おう。」
僕も顔、赤いかもしれないな。
「でも聴取があるのでは?それにどうして私の挙手を邪魔したんですか?」
「お譲様がこの件に関わっていたとなるとお家に知れてしまいます。面倒事には巻き込まないように仰せつかっていますので。」
「・・・。」
篝さんは不満そうだけどそれ以上は何も言わなかった。
「じゃあどうしよう?」
「とりあえず中庭なら職員室からも見えるし、そこでいいんじゃないか?」
モトキが提案する。
「そうね。そうしましょう。」
それに従う相坂さん。
「では、参りましょう。」
みんな賛成のようなので僕もみんなに続いて中庭へと向かった。
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