9.いいんだよね?
本編の163話裏話となります
妹の逗留する部屋に向かいながら、俺は眉根を寄せる。
ユーマの言葉はあまりにも衝撃が大きすぎた。
本当の姉でないなんてことは、分かりきっている。
でも、義姉になることもない、と言い切った。
ねえ、姉様。
――それは、もういいってこと?
口元を手で隠す。……隠さないと、にやけているのがカレルにバレてしまうから。
彼女を姉様と呼び始めたのはフェリスが最初で、それに便乗する形で俺も呼ぶようになった。
姉様が欲しかったのは俺も同じだったし、実際にユーマは俺の思い描く姉だった。
だから、本気で姉と慕うフェリスの気持ちはよく分かる。
だって、ほかの兄嫁候補はこんなに俺たちに近寄ってこなかったから。
彼女らは王太子妃という立場が欲しかっただけだ。
それを咎めるつもりはないよ。だってそんなの当然だしね?
うるさい小姑なんて、いずれ降嫁するか臣下に降りるんだから、立場をはっきりさせようってことなんだろう。
だから俺やフェリスの姉にはなろうとしなかった。
でも、ユーマは違った。
俺たちの姉になろうとした。
だから、姉として懐いた。
ただそれだけだったはずだけれど。
父とレオ兄に釘を刺された。
――あれは、お前のものにはならん、と。
そんなつもりはなかった。ただ、近くにいたかっただけ。
彼女だけが自分を自分として見てくれる。
だから、姉でよかった。
姉がよかった。
家族になるのなら、いつまでもそばにいてくれるでしょう?
俺も、家族として彼女のそばにいていい存在でい続けられる
でも、それは壊れてしまった。
壊したのは兄上だ。
このまま家族でなくなるのなら、彼女のそばにはいられない。
それでも姉であり続けてくれるのなら、それでよかったんだ。
でも、姉と呼ぶことさえ拒絶されてしまった。
彼女はもう、家族ではない。
家族になることもないのだと。
そう宣言されてしまった。
――なら、俺が家族になればいいんだよね?
俺が家族になりたいと、もう言ってもいいんだよね?
姉だから、とごまかす必要もないんだよね?
「なあ、カレル」
歩みを止め、追いついてきた友を振り返る。
カレルは相変わらず渋い顔しかしない。
きっと、自分の言いたいことなどお見通しなのだろう。
「もう、我慢するつもりないから」
あれから半年経った。
お前の言う『しばらく』は待ったはずだ。
これ以上放置していたら変な虫がつくだろう?
じっとカレルを見つめるけれど、何も返してこない。
何を考えているのか、読ませてくれない。
ならいいよ。
俺は俺で動くだけだから。
誰にも……兄貴たちにも譲るつもりはない。




