↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/10

王女殿下の朝

今回は王女殿下側のエピソードとなります

「殿下、ご報告に上がりました」


 早朝のノクトゥス王国臨時庁舎。その中の一室。朝日が差し込む王女の執務室に、近衛兵が訪れていた。


「昨日の午後にダンジョンに押し入った半裸の男。目撃証言からして、やはりジョナサンであると結論づけられました」


「やはりですか」


 冥夜を表す深い紺色の絨毯に、同じ色のコートを着た近衛が直立している。夜空の星を暗示する白銀のボタンが、朝日を受けて煌めいていた。


「はっ、教会からの報告とも一致します。ジョブチェンジの際に不幸があり、装備を身につけられなくなったことで錯乱し、ダンジョンに向かったものと思われます」


 王女はペンを置くと、椅子にもたれかかり深くため息をついた。見上げる天井には、花を模した魔導ランプ。窓から差し込む朝日が、舞うほこりと共に、それを照らし出していた。


「状況は?」


「騎士団の半数が捜索隊を組むために奔走しております。ですが、急な出動になるため物資をかき集めており、更に市民の生活に影響が出ない形を優先しているため、未だ出動できずにいます」


 騎士団は王家と民を守る存在である。彼等はその理念を、王都が飲み込まれた後も守り続けているのだ。


「王家用の備蓄を回してあげなさい。ジョナサンは長年騎士団に尽くしてくれた組織の要《かなめ》。失うなんて以ての外。働きに報いてあげねばなりません」


「はっ! 今すぐに取りかかります」


 王女の命を受け、近衛は足早に執務室を去っていった。彼が退出した執務室に静けさが戻ってくる。そんな中、王女は口を開いた。


「それで、騎士団のもう半分は?」


 王女がそう言うと、物陰から黒装束が現れる。王国の暗部を務める者のひとりだ。足音ひとつ立てずに歩き、王女の影にひっそりと立った。


「どうやら工作員が騎士団の分断を煽る噂を流布しているようで、モーガン騎士団長が中心となってそちらを追っております」


 王女は机に積まれた書類の中から、一つの束を引っ張り出す。工作員に関する報告書だ。そこには、かの国の名が記されている。


「西の帝国ですね」


「恐らくは」


 帝国は常に領土拡張を続けて来た国だ。ノクトゥス王国が混乱に陥っている現状を見て、その領土を狙うのは自明の理であった。


「できれば私も動きたいのですが……」


「なりません。あなたを失えば王国は終わってしまいます」


 確かに王女自ら動けば、事態は押し進められるだろう。しかし工作員が暗躍する中に飛び出せば、命を狙われる恐れすらある。暗部の制止に、王女は頷いた。


「……そうでしたね。昔のようには、いきませんね」


 王女はモーニングティーを一口すすり、横目で暗部を見た。


「頼みましたよ」


「お任せを」


 暗部は現れた時と同じように、静かに消えてゆく。そうしてやっと、真の静けさが執務室に戻ってきた。


「ジョナサン……あなたは今、何をしているの?」


 誰にも聞かれない疑問が、執務室の中で消えていった。



◇◇◇



「どすこいっ!」


 おいどんの押し出しと共に、大型ゴーレムが土俵の外へと飛ばされる。最初に戦ったゴーレムよりも、ふた回りほど大きなそれは、地響きと共に倒れ伏した。


「よおしっ、もういいだろう!」


 親方の声を聞き、おいどんは手刀を切る。


「ごっ つぁん です!」


「万物への感謝も、様になってきたじゃないか」


 エウロスが褒めてくれた。彼等【竜狩りの一座】とも、順調に打ち解けられている。それが今は嬉しかった。


「おいおい、ジョナ山《サン》の聖気で、ゴーレムの残骸が塩になりかけてるぞ」


 ザガンに言われて振り向くと、ゴーレムだった残骸に、塩の結晶が生えていた。既に茜がそれを拾い集めている。


「おかげで塩に困らないから助かるよ。これで美味しいちゃんこをつくるからね!」


「えぇ……」


 自分が出したものを口にするのは何か抵抗があるが、誰も文句を言わない。おいどんだけわがままを言うわけにもいかず、頷くことしかできなかった。


「ジョナ山《サン》。食って休んだら、オーガにリベンジしてみねぇか?」


 その親方の一言は、おいどんの体に電流を走らせた。

ジョナ山は元気です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。