まわしを締める力士
「よしジョナ山。ステータスボードを広げてみろ」
「ごっつぁんです」
稽古の合間。親方にそう言われ、おいどんはステータスボードを開いた。親方の谷風と、その娘の茜。ドワーフのザガンとエルフのエウロス。5人全員で覗き込む。
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名前:ジョナ山
職業:力士
番付:序二段
装備:塩
武器:装備不可
防具:装備不可
まわし:装備可能
装飾品:なし
髪型バフ:未発動
土俵バフ:未発動
行司バフ:未発動
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「やはりな。力士の力を活かし切れていない」
ザガンが蓄えた髭をいじりながら唸った。
「どういうことでごわすか?」
「どうもこうも、装備スロットはガラ空きだし、バフも発動してないじゃないか」
エウロスが長髪を垂らしつつ、ザガンの頭越しにステータスボードを覗き込んで指さした。しかし……そう言われても、名前や塩はともかく、それ以外はさっぱりなのだ。
「ねぇジョナ山、力士って何だと思う?」
茜が髪を揺らしつつ、おいどんを見上げた。何か、と言われると、言葉にするのに詰まってしまう。
「全然……分からんでごわす」
「とはいえ、ここまで戦って来たからには何か感じたはずだ。些細なことでもいい。言ってみろ」
親方にそう言われ、おいどんが経験したことを頭の中で整理する。ゴブリンにオーク、ゴースト、そしてオーガ。戦いの中で知った力士の特性……
「掌底による打撃に、投げ技……一部の所作が異様に強化される、特殊な職業……でごわす」
「なるほど、そう解釈したか。間違ってはいないな」
おいどんの答えに、親方は満足げに頷いた。
「相撲とは、東の地に伝わる武道であり神事だ。相撲道を歩む者を力士と呼ぶ」
なるほど、騎士道みたいなものか。しかも、職業ができることに制限を加えるのは、特殊なことだ。
「しかし、神事とは……どうりで塩が聖属性を帯びるわけでごわすなぁ」
ゴーストをまたたく間に霧散させた塩。それも職業に由来するものに違いない。
「ほう、もう清め塩が使えるのか。お前さんの中に、相撲道に通ずるものがあるに違いない。例えば、真っすぐな信念とかな」
そう言われ思い出すのは、騎士団で過ごした日々。組み手では汗を弾けさせたし、書類仕事も真面目にやった。補給品の不備も見つけ次第報告した。あの日々は良かった。
「そうと分かれば座学は終いよ。もう一度体を動かすぞ。今度は戦闘訓練だ」
パンッ! と膝を叩き、立ち上がる親方。その音は、物思いに耽るおいどんの意識を引き戻してくれた。
「なぁに、やってみれば自ずと分かるはずだ。稽古で何か感じてみろ。だが、その前に……」
ビリッ!
突然親方は、おいどんの腰布を引き裂いた。
「な、何をするでごわすか!?」
丸出しではないか。女子もいるというのに。
「もうお父さん、またなの?」
呆れる様子の茜。どうやら親方のこれは、毎度のことらしい。
「腰布では力士とは言えん。ちゃんとしたものを身に着けろ」
そう言う親方は、手に黒く輝く布を持っていた。
「親方、それは……?」
「まわしだ。しかも、リキシルバーにチャンコバルト、ヨコヅナイト鉱を編んで作った特殊な品だぞ」
「うぐっ」
そんな話を聞いていると、親方がまわしを締めてくれる。腹が締め付けられ、思わず声が漏れた。
「よし、これで良いな。次からは自分でやるんだぞ」
仕上げを終え、まわしを叩いてくれる親方。身も心も引き締まる気がした。
「ちなみに、洗うのは禁止だからな」
「ごわす!?」
「まわしの素材は特殊でな、相撲力……お前さん達で言う魔力を貯める性質がある。洗うと落ちるんだ」
ちゃんとした理由があった。強さと引き換えとは……とんでもない装備だ。しかし、魔力を貯める金属? それはミスリルのような魔法金属の芸当だ。もしやこれ、相当貴重なものではないのか?
「よし、ザガン」
「おう!」
考えるおいどんを尻目に、親方はザガンに指示を出す。するとザガンは魔力を練り上げ、地面の土でゴーレムを作り出してみせた。
「これが練習相手だ。さあジョナ山、戦ってみせろ」
リキシルバー
チャンコバルト
ヨコヅナイト鉱
相撲金属の土俵入りでごわす!




