騎士団の3人
今回は騎士団側のエピソードになります。
「モーガン団長! ジョナサンを探しに行かせてください!」
「そうだ!」「そうだ!」
騎士団の詰所。団長室に、若手の騎士達がやって来ている。相対するのは、騎士団長のモーガン。更にジダルノスとメルもいる。
「鎧を着れなくなっただけで追い出すなんて、やっぱりおかしいです!」
「一人でダンジョンに向かったとの目撃情報があります!」
「追いかけないと!」
若手の騎士達は、次々にまくしたてる。彼らにとってジョナサンは頼れる先輩なのだ。そんな彼が不運に遭い、ダンジョンに消えたとあって、居ても立ってもいられないのだ。
「落ち着け。そんなに取り乱しては、騎士団としての面目が丸潰れだぞ」
「そんな悠長なことを言ってる場合ですか!」
若手騎士のひとり、フィンが進み出る。若手の中でも行動力と義務感の強いひとりだ。
「我々だけでも探しに行きます。メルさん、支給品をお願いします」
「それは無理だよ。前回のダンジョンアタックで支給品は底をついた。次の補充を待たないとね」
メルは淡々と事実を告げる。騎士団は発掘した物品を国に納める代わりに、王女を始めとした国民から支援してもらう形で成り立っているのだ。物資は厳格に管理されており、余分は無かった。
「くっ……」
フィンは悔しさを顔に滲ませ、拳を握る。そんな彼の肩を、ジダルノスが叩いた。
「ちょっと落ち着けよ。俺がギルドに捜索要請を出すから、な?」
「ジダルノスさんが、そう言うのなら……」
フィンが下がると同時に、若手騎士達の熱も収まり始めた。そして、次第に冷静な考えが出始める。
「物資が無いのでは、二重遭難のリスクも……」
「ならば実費で……」
「よせ。これだけの人数が物資を買い漁れば、市場を圧迫してしまう。守るべき民の暮らしが……」
「くっ、しかし諦めるわけには……」
若手のやるせない思いを締めたのは、モーガンの一声だった。
「物資が届き次第、捜索隊は組む。少しの辛抱だ」
その一言で、若手騎士達は団長室を後にした。
◇◇◇
「ふぅ、行ったか……」
モーガンは椅子にどっかりと腰かけ、深くため息をついた。
「しかし、どういうことだ? 外れろとは言ったが、追い出した覚えはないぞ」
なぜか自分がジョナサンを追い出したことになっており、モーガンは困惑した。ジョナサンが鎧を着れるようになるまでの一時的な処置を下したつもりが、いつの間にか追放という話に膨らんでいたのだ。
「それは分からんが、どうも謁見の最中に抜け出したらしい。自分だけ参列できないことに耐えられなかったのだろう」
「何となく分かるよ〜。ジョナサンらしいね〜」
ジダルノスが分析する横で、メルが苦笑いをする。ジョナサンが何かしでかした時の3人は、大概このようなリアクションになるのだ。
「あぁ、なまじ優秀だからなアイツは。一人でダンジョンに潜ってもいいとこまで行けちまう」
モーガンが首だけ動かし、窓を見る。団長室からは、ダンジョンの入口がよく見える。ジョナサンが突破した入口は、門番達が修理をしている最中だ。
「バカ正直で正義感もある、でっかいガキだよね」
「それがいいところなんだがな」
メルの苦笑いが続き、ジダルノスは否定せず美点だと認める。長年の付き合いだから言えることだ。
「あんなことになっちまったが、ジョナサンは仲間だ」
モーガンは膝を叩いて立ち上がり、2人を見据える。
「ジダルノス、ギルドに捜索依頼と応援要請だ」
「心得た」
「メル、無理言ってでも物資を調達してくれんか?」
「しょうがないなぁ……何とかしてみせるよ」
2人はすぐさま行動にかかるため、退出してゆく。
「さて、俺も動かねばな。まずは噂の出どころを探るべきかな」
モーガンも動き出す。3人は自分ができることを始めた。腰布一枚の戦友のために。
◇◇◇
「いいぞ、ジョナ山。すり足もう一本だ」
「ごっつぁんです! 谷風さん」
おいどんは、年配の男――谷風さんに稽古をつけてもらっていた。力士の基本だという、すり足での持久走。軸足をぶれさせないよう、気合を入れて踏み出す。
「親方と呼べ!」
「ごっつぁんです親方!」
谷風さん……いや、親方の稽古は、まだまだ続きそうだ。
次回から、またジョナ山に戻ります。




