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9.公園で

「美しすぎる彼って知ってる?」


後の席から女性の声が聞こえた。


「あ、今バズっているイラストでしょ?

めっちゃイケメンの。

anemoneだっけ? 誰なんだろうね」



私は本当にバズっていることを知り、

少し恐怖を覚えた。


もしanemoneが私だと知れたら、

もしモデルが蓮だと知れたら、


なぜ蓮が死んだのか。

なぜ美紅が寝たきりなのか。

それが全てネットで晒されたら……。


その後、もし美紅が目覚めたら。

一言目に何て言うだろう。


どうしてお姉ちゃんは、蓮さんを

見せ物にしたの?


きっと私を責めるだろう。



私は色々な事を考え、少し手が震えた。


いきなり、私の手を颯が掴んだ。


「光里さん、食べすぎちゃった。

ちょっと散歩しません?」



「え? うん」


私はその場から逃げ出すように、レジへと向かった。



外へ出ると街はまだお昼休み中のため、

会社員やOL達で賑わっていた。


確かこの先に公園があったな……。


「その先に公園があるんですけど、行きません?」


同じことを考えていたことに驚き、私は

大きく頷いた。



少し前だと桜が綺麗だったこの公園は、

新緑が眩しく、不安な気持ちを一瞬で消し去ってくれた。



「桜って、何本もあると名所だってすっごい人ですけど、

1本だと全然無名なんですよね。

同じ桜なのに。


でもね、俺は1本でも誰かを魅了する桜のような存在になりたい、なんつってね」



颯が真剣な顔で私を見た。


そして、ぶっと笑う。



「ここ、突っ込むとこっしょ。

まだまだなのに何言ってんだって」



私もつられて笑ってしまった。


「良かった。笑った」



「え?」



颯はベンチに座り、空を見上げた。


「考えたって変わらないことは

考えたって仕方ない。だから……、

考えないでいきましょう」



「その言葉って誰か有名な人の言葉なの?」


「え? いや、どうなんでしょう。

俺がずっと思っていることなんで」



「そうなんだ。同じことを言う人を知ってたから」



颯は少し驚いた顔をした。


顔は全然ちがうのに、なぜ彼といると安心するのか

ずっとわからなかった。


でも少しわかった気がする。

彼は蓮と似ている。

いや、似ているをたまに超えている。


それは私が蓮を求めているからなのだろう。

そこに寄せてしまうのだろうか。


ならば私はもっと颯自身を見るべきなのに、

申し訳ない気がした。



「体調はどうですか?」


背後から聞きなれない声がして振り返ると、

一人の男性が立っていた。


どこかで見たような。

そうだ、あの時。颯の面会に行った時に

部屋にいた主治医の先生。


隣にいる颯を見ると、顔がこわばっていた。


どうしたのだろう?こんな所で休養もせずにいると、

怒られるのだろうか。



「約束はわかっていますね?颯さん」


主治医はにっこりと笑った。



「あ、ああ。もちろんですよ。先生」


「それは良かった。では失礼します」


主治医はお辞儀をし、去っていく。


「約束って?」


颯は少しごまかすような顔をして、

「酒飲むなーとかそんな感じ」


そんな颯の顔に少しミステリアスな雰囲気を感じた。

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