20.偽物と死神
私はしばらく「蓮」そっくりの、
いやわざと似せている男性の写真を見つめていた。
初めて見た瞬間は息が止まるほど驚いた。
そしてこの男性を特集したいという部下の意見に
ただ首を縦に振るしかなかった。
でも会議が終わり、1人になり冷静に写真を見つめると、
蓮には全然似ていないことがわかった。
蓮はこんな角度でカメラを見ない。
蓮は確かに美しい。
でもそれは彼のコンプレックスでもあった。
だからカメラを向けても、必ず顔をそらす。
こんな「俺の顔を見てくれ」と言いたげな
写真が残っているはずもないのだ。
それでも一瞬、蓮なのではと思ってしまったのは、
もう一度会いたいという私の願望か。
それとも……どこかで颯に心を惹かれていることへの
罪悪感か。
蓮がまさか俺を忘れたのか?
と伝えにきたのではないかと。
自分の中で言い訳を探す。
決して蓮を忘れたわけではないの。
ただ、彼の中にふいに「蓮」を感じてしまう。
顔が似ていることを面影というのであれば、
思影というべきか。
そんなわけあるはずないのに……。
スマホが鳴った。
画面には美紅が入院している病院の番号が表示されている。
まさか、何かあったのでは。
まさか、まさか……。
私は慌てて荷物を片付け、席を立った。
「ごめん、ちょっと出かけてくる」
里香に伝える。
「承知しました。
颯君が先程まで待たれてましたが、
仕事を思い出したとかで帰られました。
後で連絡をしてあげて下さい」
「わかった。あとで連絡しておく」
颯、蓮、美紅。
私の中で大事な人たちがグルグルと巡る。
慌てて地下鉄の入り口へと走る。
病院は地下鉄でここから五つ目だ。
階段を上がってくる人波に逆行して前へ進む。
慌てすぎて男性と肩がぶつかってしまった。
私は持っていたカバンを落とす。
「すみません!」
謝罪もそこそこに改札へと急ぐ。
「慌てん坊さんだね」
「山吹光里」と書かれた社員証を拾い上げ、
俺は彼女の後ろ姿を見つめていた。
周りで女子高生たちが俺を見て何か囁いている。
小さい声だから聞こえないと?
俺を誰だと思っているんだ。
そう。
美しいだろう?




