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19/22

19.偽物

俺は会議室の先にある休憩室で

光里たちの会議が終わるのを待った。


忙しいのであれば帰ってもいい、

また後で連絡する、と言われたが、

残念なことにそれほどまだ忙しいと言える

仕事は入っていなかった。


それに何より、密着取材について、

とそれを理由にまだ光里のそばにいたかったからだ。


30分ほどすると会議は終了したようで

次々と会議室から人が出てきた。


俺は光里の姿を待ったが、

光里はなかなか部屋から出てこない。


俺は少し嫌な予感がして会議室のほうへと向かった。


中から里香さんが出てきた。


「光里さんは?」


「颯くん。光里さんなら……」


里香さんは会議室の中へと視線を移した。

俺は里香さんの視線を追い、会議室の中を覗いた。


前面の白い壁はスクリーンになっている。

そこに映し出されていたのは、


前世の俺、いや俺にそっくりな人間だった。


光里はスクリーンを見ているのか、

その先の何かをみているのかわからない目で

その男の映像を見ていた。


俺は何も言わずに扉を閉めた。


「光里さんと話さないの?」


里香さんが俺に聞いた。

「ちょっと仕事を思い出したんで。

また連絡くださいって言っておいてください」


俺は里香さんに頭を下げ、オフィスの外へ出た。


もしかしたら、少しは俺のことを、

颯としての俺のことを気にしているのでは?

なんて思い上がっていたのかな。


まだ忘れられないのか。

もう触れられないようなやつ、忘れろよ。


そう思う俺と、

どこかでほっとしている俺がいた。

光里は俺のことを本当に愛してくれていたのだと。




仕事もないので家に戻った。


扉を開けると……奴がいた。



「お帰り〜」


死神は楽しそうにゲームをしていた。

やり方がわからないのか、

とんでもないひどい点数を叩き出している。



俺は無視してソファに寝転んだ。


「俺のそっくりさんがいたんだろ?」


ゲームの手をとめ、死神が話しかけた。


「訂正しておくが、お前じゃなくて俺な」


「さらに訂正しておくと前世のお前であって

今の俺な」


まあ、どっちでもいいさ。


「でもあれ……お前じゃないだろ?」


俺は死神に聞いた。


「ピンポン!さすが元俺」


「あれは人間だった。

加工か、コスプレか?そんな感じだな。


バズるとでも思ったんだろうな。

売り出し中の俳優だとかいってたから


人の顔で遊ぶなっての」


「おそらく光里も本物みたら幻滅するぜ。

似ても似つかないってな。


でもいいヒントもらったよ」


死神はにやっと笑う。


「何を考えている?」


「ひみつ、楽しみにしていて」


そして一瞬風が起き、目を閉じた隙に

奴の姿は消えていた。


ゲーム画面を見ると2位とバカほど点差をつけ、

優勝していた。

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