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15.若菜

私の小説がバズりはじめて数日が経つ。


どうしよう。

まさかこんな事になるなんて。


もちろん願っていたことなんだけど。

嬉しいけれど、どうしていいのかわからない。


どこかで諦めていた。

自分の小説がバズるはずがない。

夢だと思っていた。


でもなんと……アクセスがもうすぐ100万に届く。


ちょっとマジで書籍化なんて話にならない?

サイン会とかしちゃってさ。

妄想は得意なんだからいくらでも出来るわよ。



もしこれがヒットしたらやっと光里に

恩返しができる。


幼馴染とはいえ、居候させてもらって

5年は経つ。


5年前、光里は悲しみの底にいた。

恋人を失い、妹は寝たきりになってしまった。


たった1日。ほんの一瞬でこれほど人生が

変わるのかと思った。


私は光里が心配だった。

だからここに来た。


もちろん、いい年して定職につかない私に

嫌味をいう家族から離れたいという気持ちもあった。


小説家になるという夢を諦めたくはなかったし、

かと言って一人で暮らせるほどのお金もない。

そんな時、一人になった光里に私は言った。


「光里、なんの役にも立たないけど、

話し相手くらいにはなれる。


部屋で電気をつけて待っとくよ。

疲れて帰ってきたらお帰りって言ってあげる。

だから一緒にいよう」


光里は悲しい目で笑った。

「変なプロポーズみたいだね。

告白は二度と聞かないと思っていたのに。


ありがとう。若菜」


それから5年。

光里は私の心配は不要だったかのように

バリバリ仕事をしている。

仕事をして現実を忘れるしかなかったのかもしれない。


力になるはずだったのに、

おんぶにだっこって言うけど、

ほんとに光里にはお世話になりっぱなし。


でもやっと希望が見えてきた。


とはいえ、ヒットのきっかけは小説の中身だけど、

実はイラストの力も大きい。


結局、光里のおかげでもある。


ごめんね。光里。


今、イラストが、蓮さんがネットで

一人歩きをしている。


小説の登場人物のイメージにピッタリだったから

ついお願いしてしまった。


イメージ。それはそのはず。

だって蓮さんをイメージして書いたのだから。


ずっと見ていた。

光里を見つめる目。

もしそんな目で見つめてくれるなら、

私は光里を失ってもいいと思っていた。

奪えるものならば……。


蓮さんが亡くなった時、私は少しでもそう思った

自分を恥じた。



バン!

と背中を叩かれ振り向くと、

バイト仲間の藍斗あいとが立っていた。



こちらもまた幼馴染である。

蓮さんと藍斗は私と光里のような関係だ。


「小説、話題になってるらしいじゃん」


「え?なんで知ってるの? ペンネームなのに」


「そりゃ、長い付き合いだからさ。

売れると辞めるのか?バイト」


私たちは近くのコンビニでバイトをしている。


「そんなすぐにやめられるわけないじゃん」


「そっか。なら良かった」

なぜか藍斗はほっとした顔を見せた。


「私がいなくなったら寂しいもんね。

てか、あんたもそろそろちゃんと働きなよ」


藍斗はへいへい〜と言って倉庫へと入っていった。


品出しをしている私の横を男性が通り過ぎた。


「いらっしゃいま……せ」


一瞬だったが蓮さんに見えた。

うそ。そんなはずはない。

そんな……。


私は思わず目を擦り、もう一度男性の方を見た。


もう彼はいなかった。

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