第二十八話 変化の中で
今日は丸太切りでは終わることはなかった。せいぜい三時間程度の作業だった。
「お疲れ。これ、コーヒーだ。美味しいぞ」
黒い液体が入った木のコップを渡された。香りはなんか苦そうだった。飲んでみると案の定苦かった。そんな僕を見ながらドールさんはニコニコしている。なんてやつだ。
「ど、どうだ。うまいか?」
今にも吹き出しそうなドールさんがコーヒーを飲みながら言った。
「少し苦いです。それに、これはなんですか?」
「これは、南ある国で取れた豆を焙煎したものを粉状にしてろ過したんだ。どうだ?眠気消えるだろう!?」
そう言われれば、疲れがなくなったような?少し元気になったな。
「いやー。これを久しぶり呑めるなんてな。冒険者ギルドは、珍しいものが入ってるわな。本当は、こいつに砂糖やミルクを入れるのが美味しいらしいんだが、そんなやつより直よな」
「ミルクや砂糖を入れたらどうなるんですか?」
「そりゃあ、甘くなるだろおよ」
「甘くなるのを入れるとおいしんですね。なら、はちみつを入れたらどうなるんでしょう?これも、美味しいでしょうか?」
「しらん」
そんな会話をしてると、コーヒーがなくなってしまった。元気になれる飲み物が。
「よし、休憩はおしまいだ。作業するぞ。着替えて鍛冶場へこいよ」
そう言って、奥へ行ってしまった。急いで着替えて僕も向かった。そういえば、焙煎って何だ?まあ、いっか。
「早かったな。早速だが。また、木割りだ。さあ、これを使え」
渡してくれたのは、ハールさんからもらった木の加工道具達だった。
「そこから、ドローナイフを使うぞ。持ち手が二つあるやつだ」
見た目が独特なのですぐにわかった。見た目は、角包丁の先端にまた持ち手をつけたような見た目だった。
ドールさんがさっき切った。丸太を細くした棒を手に取って座った。僕も真似をしてみることにした。
「これを、クランプで机にでも固定して、こいつでな自分側に引くようにして四角柱、六角形柱、そして、円柱にしていけばシャフトができる」
言われた通り、やってみる。感覚はフェザースティック制作に近くて、順調に作ることができた。途中ドールさんが作るのをやめてやじりの制作を始めた。僕が作ってた石とは違い、鉄で作っていた。そこから、数時間削り続けた。
いつのまにか、シャフトが数えられないぐらい積まれていた。やっとここまで来れた。ドールさんも一通り作業が終わったのか、炉の火を弱めた。
「おおー!よくこんなに作ったな!俺だけじゃここまで一日でできなかっただろう。ありがとうな。じゃあ、仕上げをするか」
「え?これで終わりじゃないんですか?」
「ああ、今は真っ直ぐでも時が経てば水分を含んで違っていくからな。そうならないように加工するんだ」
そう言って、火を弱めた炉に鉄板を引いてそこへシャフトを並べていった。並べたシャフトを押しつぶすように鉄板を重ねた。
「これで、水分で曲がらなおようにするんだ。知ってるか。コーヒーもこんなふうに焙煎するんだぜ。まあ、これは圧縮とかに近いがな」
こんな風にするのか。少し勉強になったな。
数分熱していると、ドールさんが一本取り出して、板と板で挟んで転がし始めた。転がされたシャフトは、綺麗な丸になっていた。
「これで、完成だ。手伝ってくれ」
僕も同じようにやってみることにした。
やってみると、楽しかった。暑いけどこれで綺麗な円柱になるなんて。できたやつを見てみる。
「あれ〜?なんか曲がってないか?」
「そうだな。もっと同じ力で動かさないと綺麗な円柱には、ならないぞ」
そうか!同じようにしないと曲がるのか。鉄と同じで力加減に気おつけないとな。
そして、また作っていく。次は成功。同じようにどんどん作っていった。
できたシャフトを山のように重ねていった。そのうち、全てが終わり少しの休憩をしていた。
「なあ、リラ。ここにあるバックの残骸らしいものはなんだ?」
「これは、作っていたサイドバックです。ですが、上手くいかなくて。師匠に助けてもらおうとおもって持ってきたんです。どうすれば、形になるんですか?なんかペラペラになってしまうんです」
「そりゃ、横の部分。まちって言うんだが、そこがないからな。まちがないってことは底もないんだろうな。手伝ってやるから、もう一回設計しようか」
やっぱ師匠だ。僕がわからないことを教えてくれる。こんな人になりたいな。
そんなこと考えながら、皮から金具を取り外した。
「そうだな。リラは、どんな形にした良いんだ?丸い感じか、それとも四角か?それとも、特殊なやつか?」
「四角や丸形じゃなくて、もっと便利感じがいいですね。道具を持ち歩けるようなそんな感じがいいですね。あれ?そしたら、シアさんのやつにから、かけ離れるな?」
「いいじゃねえか、自分があったやつにしろよ。便利なバッグで行こう。そうだな、差しでも付けるか」
「差しって?」
「バックの横にリングをつけてそこに工具を差すんだ。ここすると取りやすいし。無理にバッグを大きする必要もない。それに超便利だ」
「それでどんな工具を使うんだ?」
「主にナイフ、ハンマーですかね?」
「そうか。なら、薄いポッケと差しを二つでも付けるか?そうすれば、新しい工具を増やしたい時にも使える。三つにするか?」
今でも工具がいっぱいあるんだし、未来を考えて三つでもいいか。
「三つで!」
「そうだな。正面にポケットとリング。両側面に差しなんてどうだ?これだと効率的だ」
「ポケットって、底がないぐらい薄いんですか?」
「そうだな」
「なら、側面にもつけれません?」
「できるが。側面は狭いぞ」
「なら、それでいきましょう。使う時が来るかもですし」
「じゃあ始めるか。まず、革を広げて、線をつけようと」
「なら、インクで〜」
「まて!革にインクはまずい。ディバイダーを使える」
そう言ってコンパスみたいな形のやつを渡してくれた。
「削るように線をつけるんだ」
言われた通りやってみることにした。定規で測って、サイズを合わせて両面、両側面、底面をドールさんの指導のもと線を引いた。
「よーし。次は、フラットを作る。バッグに被さる部分だ。ここは、少し特別だな。裏面とそこに曲がる部分を付けた形になる。フラットの形は自由だ。被さればいいからな好きにデザインしな」
「好きにって言っても。ぼくは丸いテント見たいな形にしますよ」
「そうだな。正面にリングをつけるならその方がいいか。フラットは、長めに作るといい。リラのことだ物を詰めすぎるだろうし」
「詰めすぎないようにするための差しでしょ」
そんなことしてるうちに線が引けた。
「よくできてるじゃねえか。次はこれだ。革包丁。真っ直ぐに切れよ。丸い部分はシャフトと同じで、四角か少しずつ丸くしてけよ」
革包丁は、倉庫にで使ってるナイフよりも革を滑らかに切ることができた。
革から切り離すことに成功。倉庫で使ったものより断面は綺麗で、見た目がスッキリしている。
「よくできてるな。次に移ろう。ステッチンググルーバーを使え。これで、革の内側に線を削るんだ。そしたら、その線の上に、この菱目打ちで、一定間隔に穴を開けるんだ。そしたら、ロウ糸を使って縫うんだぞ」
「ステッチングルーバーは、こっちのガイドを革の端に当てろ。刃先が縫い線の位置に来るように調整するんだ」
「こうですか?」
「そうだ。あとは端に沿ってゆっくり引け。力を入れすぎるなよ。深く削ればいいってもんじゃない」
言われた通りに引いてみると、革の表面に細い溝ができた。
「これが縫い目の道になるんですか?」
「そうだ。糸が溝に収まるから、表面に引っ掛かりにくくなる」
「俺は、一緒にやってやれないから一人でやってくれよな。なんかあったら呼んでくれ。ロウ糸作ってくる」
ドールさんは、下の倉庫に行ってロウソクと、糸を持ち出して合わせている。ロウ糸ってそういうことか。
ドールさんがいなくなって少し不安だったが、ガイド付いているので上手く溝を付けることができた。全てのパーツに線をつけることができた。次は菱目打ちで、穴を開けるんだっけな。さっきの溝に合わせて穴を打ち込んでいく。最初の一打は問題なかった。けれど、次に打とうとしたとき、最初の穴と同じラインに並んでいるのか不安になった。ずれたらどうしよく?どうすれば上手く打てるだろうか?定規を使う?そうすれば、定規と菱目打ちが干渉し合うし。縫う穴だからなー。そうか!前に開けた穴のうち、端の一つに菱目打ち合わせて打てばいいのか!早速やってみた。どうだ?革を持ち上げて穴を光に照らして確認してみる。
「おお!いいぞ」
やった!成功だ。この調子で続けて打っていく。そうすると、丸い部分にぶつかった。どうしよう?菱目打ちは、丸くないぞ。今のだと一気に多くの穴を開けすぎる。二つだけ開けるやつとかないかな?さっきドールさん菱目打ちを出してきた箱を探してみた。
「あった!これだよ。これさえあれば!」
「リラ〜。どうだ終わったか?どうした?探し物か?」
ドールさんが、帰ってきた。
「菱目打ちで、曲線にどうやって穴を空ければわからなくて。二本刃のものないかなって」
「あー。わりな。言い忘れてたわ。それであったか?」
「ありましたよ」
「それにしても、よく考えたな。えらいぞ」
ドールさんにほめらて嬉しいな。
目的の菱目打ちを見つけたし作業を再開した。
そこからは、道具を使い分けて、順調に進んだ。
「穴を開け終わったから?そしたら、ポケットと、差し、リングをつけていく。まずはポケットからだ。革を本体に重ねて、縫う位置を合わせる。穴も両方の革に通して開けるんだ」
「別々に穴を開けるんじゃないんですか?」
「それだと、ずれる。重ねて位置を合わせるのが大事だ」
「なるほど」
「リングは革を折り返して固定する。道具差しも同じように、使う道具の太さに合わせて取り付けるんだ。とりあえず、少し余裕をもってつけてもいいかもな」
何度も繰り返しているうちに、道具の扱いにも慣れた。最初は難しかった穴開けも、今では、簡単に思えてきた。
「取り付け終わったか?終わったなら縫っていくぞ。これを使え。まずは、今、開けたやつを重ねていくぞ」
ドールさんが、針と糸が入った箱を持ってきた。
「これで、やっとバッグになるんですね!」
「そうだ。まずは革を重ねたろ。そして、穴の位置を合わせる。今回は二本の針を使って縫っていく」
「二本も使うんですか?」
「一本の糸の両端に針を付けるんだ。一つの穴に両側から針を通して、交互に縫っていく。糸を引く強さにも気をつけろよ。それと、針にも。俺はそれで何回か怪我してる。」
言われた通り、気おつけながら縫っていく。そうしていくうちに、パーツが重くなっていく。できあがっていく感じがして好きだ。
「パーツもできたし、最後に全部縫い合わせるぞ」
やっとこの時が来きた。パーツを縫い合わせていく。少しずつバックの形できていく。僕は、針で指を刺さずに完成させられた。
「できた〜」
「やったな!」
バッグを手で持ってみる。ずっしりしていて耐久性がありそうだ。
「そういえば、持ち手ないですね。どうやって使うんですか?」
「あ、」
「え?」
「腰につけるんだよな?ベルトルーフをつけるぞ!」
ここにきて、ミス。ここまで上手くできたのに。
「そうだ。これをお前にだ。持ってないっていてただろ。だから、似合うやつを買ったんだ」
ドールさんが見るからに新しい革ベルトをくれた。
「いいんですか?」
「いいぞ。お前のやつだ。せっかくだ。こいつに合わせてベルトルーフをつけるぞ」
余った革から、二つの長方形のパーツを切り出した。
「革だけで止める方法もあるが、せっかくなら金具を使うか」
前に買った金具の出番がきた。
「バックができてるし、ちょっと難しいが。長方形のパーツと背面を合わせて、錐で穴を開けよう。そしたらバッグの中に鉄の板を仕込んで。カシメ金具で繋いでしまおう」
言われた通りやってみる。錐で開けた穴は菱目打ちより大きい。だけど大きすぎないちょうどいい大きさになった。穴は、上下合わせて六個。それを二つ。 穴に金具を通し、反対側から蓋をかぶせる。鉄の板を当てて、打ち具を金具に合わせた。打つ!そうするとなぜか繋がった。それに固い不思議だ。これを繰り返すと、バックが今度こそ完成した。
「おお!完成したな。よかったな。これが、お前さんの作品一号だ」
「そうか、これが作品……」
時は、夜を迎えていた。
アホウ!長すぎる。こんなこと一度もなかったのに。
次からは、こんなに長くないですからね!ないですからね!




