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転生ストライカー 氏真 ~The Renaissance striker Uzizane~  作者: みなも
第1章 目覚め ~県予選編~

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第12話【四人の守護者】

【あらすじ】

全日本U-12サッカー選手権の頂点を目指す吉良氏真たちだが、司令塔・基哉とGKジョンの二人に守備の負担が集中しているという致命的な弱点を抱えていた。早川愛の直感と舞のデータ分析により、インパルス清水FCに四人の新たな才能――圧倒的なスプリントを誇る双子の朝比奈兄弟、空中戦の覇者・葛城大和、そしてFWから転向した超攻撃的リベロ・井原光が加入する。さらに、彼らを統率する「作戦参謀」として、氏真と基哉の師の魂を宿す、ある少年がピッチに降り立つ。鉄壁の陣形を手に入れたインパルスは、いよいよ最後の「全国」へと出陣する。


1. 頂点へ届かない「盾」の不在


ジュピター磐田ジュニアに敗れ、冷たい雨の中で涙を流したあの日から数ヶ月。


いよいよ小学生年代最後となる、12歳の春がやってきた。


「……ダメだ。データは残酷なくらい正直だよ。今のままじゃ、全国の『怪物』たちには絶対に届かない」


クラブハウスのベンチで、小学6年生になった舞は、タブレットに映し出されたインパルス清水FCの布陣図を見つめ、ギュッと唇を噛み締めた。


画面上で赤く点滅しているのは、相手のカウンターに対する極端な脆さだ。


「ウジ様の圧倒的な突破力、ジョンと基哉くんのコンビネーション。攻撃力は全国でもトップクラス。」


「……でも、守備の負担がアンカーの基哉くん一人に集中しすぎている。これじゃ、全国の激戦を勝ち上がる途中で絶対にスタミナがパンクするよ」


窓の外、夕暮れの三保の海を静かに見つめていた中学3年生の愛が、手にした扇子をパチンと閉じた。


さらに大人びたその瞳には、データを超えた鋭い直感が宿っている。


「ええ、舞の言う通りね。どんなに美しい鳥でも、地上から足を引っ張られれば高くは飛べないわ。


氏真様たちが全国という大空を自由に舞うためには、泥を一切寄せ付けない、強固で分厚い『盾』が必要……。」


「今こそ、彼らを支える守護者たちを呼び集める時ですわ」


愛の鋭い直感と、舞の徹底したデータスカウティング。


二人の執念が導き出した答え。それは、静岡県内に埋もれていた「四人の原石」を、インパルスの最終ラインへと引き入れることだった。




2. 左右の烈風と、中央の要塞


数日後、インパルスのグラウンドに疾風のごとく駆け込んできたのは、瓜二つの顔を持つ双子の兄弟、朝比奈あさひなしょう朝比奈あさひなつばさだった。


「よっしゃァ! 今日から俺たちが、このチームのサイドをぶっちぎるぜ!」


彼らのプレースタイルは、まさに「烈風」。


右サイドバック・翔は、圧倒的なスプリント能力を誇る超攻撃的ディフェンダーだ。


氏真が前線でタメを作った瞬間、矢のようなオーバーラップで敵陣を切り裂き、右サイドを完全に制圧する。


左サイドバック・翼は、荒々しい兄とは対照的に、精密機械のような左足を持つ知性派。


彼が左サイドから放つ正確無比なクロスは、これまで攻撃の組み立てを一身に背負っていた松平基哉の負担を劇的に軽減させた。


正式にU-12のレギュレーションである8人制のシステムへと組み込まれた彼らは、瞬く間にチームへ融合していく。


そして、ゴール前の最終ライン――絶対の要となるセンターバックに鎮座したのは、静と動、全く異なるプレースタイルを持つ二人の巨漢だった。


「……俺の頭上を越えるボールは、一つ残らず叩き出す」


葛城かつらぎ大和やまと


小学生離れした屈強な肉体を持ち、圧倒的な対人ディフェンス能力を誇る武闘派だ。


無口だが、内に秘めた闘志は誰よりも熱い。


彼の真骨頂は「空中戦」にある。飛来するボールをすべて跳ね返し、コーナーキックのチャンスには、その強烈な一撃から「ボンバーヘッド」の異名を持つヘディングを叩き込む。


得点のすべてを頭で奪う、異能のディフェンダーだ。


「大和、突っ込みすぎるなよ。裏のスペースは俺が掃除しておく」


その横で冷静にラインを統率するのは、井原いはらひかる。彼こそが、チームの最終防壁たる「リベロ」だ。


井原はもともと、他チームで点取り屋のFWとして名を馳せていた。


しかし、インパルス加入の際にその類稀なる危機察知能力を吉良コーチに見出され、センターバックへとコンバートされた。


井原の恐ろしさは、ストライカーとしての攻撃本能を研ぎ澄ませたまま最後尾に君臨している点だ。


敵の攻撃を完璧に読み切ってボールを奪うや否や、最前線の氏真へ寸分の狂いもないロングフィードを供給する。


さらに、機を見てドリブルで攻め上がり、FW時代に培った弾丸ミドルシュートをネットに突き刺す。


守備の要でありながら、チーム屈指の「得点源」をも兼ね備えていた。


「……ヘッ。岩みたいなボンバー野郎に、点取り屋あがりの掃除屋か。まあ、俺の『門』を汚さねぇって言うなら、歓迎してやるよ」


蒼き眼の門番、八重洲ジョンが不敵な笑みを浮かべる。


彼もまた、この四人の加入によって、自分たちに足りなかった「絶対に崩れない壁」が完成したことを肌で感じ取っていた。


3. 雪の師匠と、病の参謀


鉄壁の守備陣が揃い、インパルスの戦力は大幅に向上した。


しかし、個々の能力が高すぎるがゆえに、ディフェンスラインの「統率」という新たな課題が浮上していた。


「……ダメだ。大和と井原のプレースタイルが噛み合ってない。」


「サイドの上がりも、僕のパスのタイミングと微妙にズレる。これじゃあ、全国のトップレベルには通用しない」


グラウンドの中央で、基哉が苛立たしげに指示を飛ばすが、強烈な個性を持つ守備陣はなかなか一つにまとまらない。


そんな時、一人の小柄な少年が、吉良コーチに連れられてピッチサイドに現れた。


「みんな、紹介する。今日からチームに加わる、大原おおはら由紀夫ゆきおだ。まだ小学4年生の10歳だが、彼には特別な役割を任せたい」


現れたのは、色白でどこか儚げな印象を持つ少年だった。


その瞳の奥には、年齢に似合わない深い知性と、すべてを見透かすような凄みがあった。


(……なんと。あの眼差し、あの佇まい。……間違いない。雪斎せっさい先生だ)


氏真は、由紀夫を見た瞬間、全身に電撃が走ったような衝撃を受けた。


太原雪斎。


かつて今川家を東海一の戦国大名へと押し上げ、氏真の偉大なる父・義元を育て上げ、精度高く若き日の家康(基哉)をも導いた、伝説の軍師にして僧侶。


「大原由紀夫です。……基哉さん、あなたの指示は理にかなっていますが、彼らの『個の力』を型に嵌め込もうとしすぎている。」


「組織とは、個を殺すものではなく、個の力を最大化するための器でなければなりません」


由紀夫の静かな、しかし威厳に満ちた声がピッチに響き渡る。


彼は幼少期から世界のプロサッカーチームの戦術をビデオが擦り切れるほど見て研究し、そのすべてを諳んじることができるほどの「戦術オタク」であった。


「……なんだと? 4年生のくせに、偉そうに……」


基哉が反論しようとしたが、由紀夫の的確すぎるポジショニングの修正指示に、言葉を失う。


由紀夫がピッチに入り、中盤からディフェンスラインへ声をかけ始めると、バラバラだったインパルスの陣形が、まるで魔法にかかったように一つの巨大な生き物として機能し始めた。


「……さすがは雪斎先生。彼がピッチに入るだけで、戦の空気が引き締まる」


氏真が感嘆の声を漏らす。


しかし、由紀夫には一つだけ、誰にも言えない秘密があった。


彼は生まれつき、指定難病である「エプスタイン病」を抱えていた。


心臓の構造に異常があるため、激しい運動にはドクターストップがかかっており、彼がピッチに立って全力を出せるのは、わずか「20分以内」と厳しく制限されていたのだ。


体力の限界として告げられたその「20分」という数字が、将来プロ選手になるという夢を永遠に閉ざすほどの重い鎖である事実を、10歳の彼はまだ本当には理解していない。


(……由紀夫くん。君のその類稀なる才能が、制限された時間の中でしか輝けない運命だとしても。)


(……予たちは、君の授けてくれる戦術(軍略)を以て、必ずや天下を獲ってみせる)


氏真は、儚くも気高い「師」の生まれ変わりに対し、静かに胸の中で誓いを立てた。




4. 三鱗の絶対防壁ミツウロコ・イージス


「……よし。これで、すべてのピースが完璧に組み合わさった」


アンカーの基哉は、目の前に広がる新たな最終ラインと、その前でタクトを振るう10歳の作戦参謀を見て、確かな手応えを掴んでいた。


朝比奈兄弟の烈風による、サイド攻撃の完全封殺。


葛城大和の圧倒的なパワーと、空中戦の完全支配。


井原光の頭脳的なカバーリングと、最後尾からの強烈な攻撃参加。


そして、大原由紀夫による、神算鬼謀のライン統率。


>> 新陣形解放:【三鱗の絶対防壁ミツウロコ・イージス


「ねーさま、すごい……! これならいけるよ。シミュレーション上、失点確率は激減してる。」


「それどころか、両サイドバックとセンターバックの攻撃参加で、ウジ様の得点パターンがこれまでの何倍にも跳ね上がってる!」


ピッチの外でタブレットを操作する舞が、興奮気味に声を上げる。


その傍らで、愛は静かに微笑み、激しい練習を終えた選手たちのために最高級のスポーツドリンクを準備していた。




5. いざ、最後の決戦へ 夕暮れの三保グラウンド。


茜色に染まる空の下、インパルス清水FCのイレブンが円陣を組んでいた。


その中心に立つ氏真、基哉、ジョンの三人。


彼らの周囲を、新しく加わった四人の守護者たち、そして作戦参謀の由紀夫が力強く囲む。


「みんな。俺たちの目的は、ただ全国に行くことじゃない。この最後の年、最高の仲間と一緒に、全国の頂点――天下を獲ることだ。頼むよ、俺の新しい家族たち!」


氏真の真っ直ぐな声が、夕暮れの潮風に乗ってピッチに響き渡る。


「「「おうッ!!」」」


挫折と涙を乗り越え、最強の盾と矛、 無二の軍師を手に入れた少年たち。


全日本U-12サッカー選手権大会・静岡県予選。


宿敵・ジュピター磐田を倒し、全国の舞台へと続く険しい戦いの幕が、今、切って落とされようとしていた。


【次回予告】

全日本U-12サッカー選手権大会・静岡県予選。鉄壁の「三畳の絶対防壁」を手に入れたインパルス清水FC・ジュニアの進撃は、もはや他チームにとって「残酷」とすら形容されるものだった。順調に勝ち進む氏真たちだが、準決勝の相手は予想外の伏兵で……!?

第13話:【ジュピター磐田FC戦(前編)~魂の猛獣と、軋む翼~】。次なる天下へのパスを回せ!


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