表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃色の夜に、きみがいた  作者: Noct


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/42

第ニ部 桃色の約束 第一章 数週間後

「好き」って言えた日から、十七日。付き合ったのに、まだ慣れない。でもその慣れなさが、全部愛おしい。

「好き」って言えた日から、十七日が経った。

桃花は今日も蓮の隣を歩いている。 並んで歩いてるだけなのに、なんか変な感じがする。 変というか、 まだ慣れない。

(彼氏、なんだよな。蓮が。)

また心の中でこっそり確認してしまった。 一日に何回やるんだろう、これ。

 「桃花」

 「は、はい」

 「なんで敬語」

蓮が少し呆れた顔をする。 でも目は笑ってる。 ずるいよそれ。

(怒ってるわけじゃないって、分かってるんだよ。だから余計に恥ずかしいんだよ。)

 「なんでもない」

 「そう」

それだけ言って、蓮はまた前を向いた。 桃花も前を向く。

二人の間に静かな風が通り抜けた。


コンビニの前を通りかかった時、蓮が急に立ち止まった。

 「なに?」

 「桃缶」

ショーウィンドウの中に、缶詰のコーナーが見えた。 黄色いラベルの、あの桃缶。

(あの日のやつだ。)

桃花の心臓が少し跳ねた。 あの日、二人で食べた。 まだ何も始まってなかった、あの放課後。

 「食べる?」

 「……食べる」

蓮はさらりとコンビニの中に入っていく。 桃花はその背中を見ながら、少しだけ笑った。

(覚えてたんだ。)

(もしかして、大事にしてくれてるのかな。)

(やば、嬉しい。)


ベンチに座って、二人で蓋を開けた。 あの日と同じ甘い匂いが漂う。

 「桃花」

  「うん」

 「付き合って良かった」

唐突すぎる。 また顔が熱くなる。

(なんで急に言うの!)

(こっちは心の準備があるんだけど!)

(というかそれ、今言う必要あった!?)

 「……わ、私も」

絞り出すように言ったら、蓮がふっと笑った。 またその顔。

 「なんで笑うの」

  「別に」

 「別にってなに」

  「可愛いと思って」

(もう無理。)

桃花は黙って桃缶のシロップを一口飲んだ。 甘くて、少し冷たかった。

隣で蓮も同じように飲んでいる。 なんでもない顔して。

でもその耳が、少し赤い。

(あ。)

(蓮も、慣れてないんだ。)

それに気づいたら、なんだかすごく嬉しくなった。 桃花はもう一度、桃缶を見た。

甘い。 今日の桃は、特に甘い気がした。

蓮の耳が赤かった。桃花も気づいてた。ふたりとも、まだ慣れてなかったんだよね。今日の桃缶が、特に甘かった理由はきっとそれだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ