第一部 桃色の缶と、はじまりの恋 第八章 桃色の約束
素直になるって、こんなに怖くて、こんなに温かいんだ。
目をぱちくりして、桃花は蓮の言った言葉を反復した。
「えええー」
顔が一気に赤くなる。
なんですと?
顔を両手で押さえて、気持ちを沈める。
好きって言ったよね。
これって告白だよね。
そうっと蓮の方を見ると、こっちを真剣な眼差しで見ている。
また、桃花は視線を落とした。
これマジなやつだ。
蓮が告白してくるなんて。
そんなこと、誰が想像するって言うの!
答えなきゃ。
なんて言おう。
なんて……あ……
桃花は両手を顔から離した。
一歩前へ進んで、
「私で良いの?」
そう聞いた。
「当たり前だろ」
「当たり前ってさあ」
素直になろうと思って、前に進んだけど、伝えたい気持ちが言葉にならない。悔しい……。
なんとも言えない顔をしている桃花を見て、蓮には桃花の気持ちが痛いほどよく分かった。
「言いたくなったら言って」
「なにを言いたいのか、分からないくせに」
「分かるさ、俺もおんなじだから」
もう限界。
桃花の方から蓮の腕の中に飛び込んだ。
蓮は桃花を抱き止めた。
お願い。このまま時が止まってください。
今、もう少しで気持ちが伝えられそうなの。
「焦んなくて良いから。でも待ってる。」
桃花が上を見上げると、蓮は笑ってる。
なんか腹立つな。
自分だけスッキリしたみたいな顔してさ。
そっと蓮がやさしく桃花の頭を撫でた時、全てが解けた。
また腕の中に身を委ねると、素直になった桃花の口が伝えた。
「好き」
最後に「好き」と言ったのは、桃花の方からだった。それで良かった。




