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第一部 桃色の缶と、はじまりの恋 第三章 桃缶
好きすぎて、ごはんを食べるのも忘れてしまうなんて。
最近、ご飯を食べるのも忘れちゃう。
どんだけ好きなんだよって話。
そりゃあ体を壊すでしょ。
こんなに高熱を出したの、いつぶりなんだろう?
小学生、まだ幼さの残るあの頃、熱さで目の前が真っ暗に見えて、
「怖いよー」
と言ってお母さんに甘えていたっけ。
お母さんが桃缶を開けて小さく刻んでくれて、
「お口あーん」
と言って食べさせてくれたの。
懐かしいなあ。
ああ、これはきっと熱さのせいね。
泣けて来ちゃった。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴る。
熱に浮かされてる桃花には、空耳に聞こえた。
ピンポーン。
まただ。
ピンポーン。ピンポーン。
今度は続けて鳴った。これはもう空耳じゃない。ふらつきながら立ち上がる。ふらふら歩いている間も、まるで雲の上を歩いているかのようだ。
その間もチャイムは鳴りっぱなし。
もう誰だろう?文句を言ってやろう。こちとら病人なんだよ。
ドアを開けるとそこに立っていたのは、蓮だった。
チャイムが鳴った。空耳であってほしい。でも——。




