14/42
第二部 桃色の約束 エピローグ 桃色の約束
夕方、蓮と別れた後の一人で帰る十分間。その時間が、桃花の一番好きな時間になっていた。
桃花には、好きな時間ができた。
夕方、蓮と別れた後の、一人で帰る十分間。
今日あったことを、ゆっくり思い出す時間。 蓮の言葉を、もう一度だけ確かめる時間。
(今日は百円玉だった。)
(昨日は「笑ってる時の顔、好き」だった。)
(その前は「大したことないよ」だった。)
大きなことは、何もない。 それでも毎日、何か一つ、残るものがある。
(これが好きってことなんだ。)
(誰かと一緒にいるってことなんだ。)
Noctの町の夕暮れは、いつも少し橙色に染まる。 海の方から風が来て、桃花の髪を揺らした。
(蓮に、また会いたい。)
(明日も、明後日も。)
(ずっと。)
それはまだ、声にならない約束だった。 でも桃花の胸の中で、確かに、桃色に咲いていた。
声にならない約束が、胸の中で桃色に咲いていた。大きなことは何もない毎日が、こんなに重いなんて。好きな人と過ごす普通の一日の、全部が宝物だった。第二部「桃色の約束」読んでくださってありがとうございます。




