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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第3章 千面道化襲来

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第99話 研究所探訪

 準備を終えた俺達オーロラファクトリーとジョシュア先生は四季森に入る。

 前回はここを通るために苦戦を強いらえた。だけど今回はジョシュア先生が居る。

 ジョシュア先生は俺たちが苦戦した魔物たちをあっさりと倒していった。


 まずユニウルフ。

 襲い掛かってきたユニウルフの首をジョシュア先生は鷲掴みにし、そのまま握りつぶした。


 次にトレント。

 ジョシュア先生は軽やかに枝や根の攻撃を躱し、最後は雷の弾丸で仕留めた。


 新しく見た魔物たちもジョシュア先生の魔弾を前に呆気なく散っていく。


「これ、私達が防衛に居る意味あるの?」


 そうルチアが愚痴るのもわかる。

 それほどに、ジョシュア=ベン=クロスフォースの戦闘力は異常だった。


「ジョシュア先生」

「なんだヴィヴィ」

「その色々な性質に変化する弾丸はなんですか?」

「ああ。お前には言ったよな? 俺の義眼のこと」

「視認している対象のマナを吸い取る義眼、ですよね」


 初耳のアラン・ルチア・フラムは驚いた顔をする。


「義眼と弾丸に関係があるのですか?」

「あるよ。なんせ、この弾丸は俺の義眼を素材に作っている」

「義眼を……!?」


 さすがのヴィヴィも驚きを隠せない様子。俺も驚いた。

 見た目は完全に弾丸だけど、その内側にはあの義眼が刻まれて詰められているのだろうか。


「義眼と通常の弾丸を素材にこの弾を錬成してるんだ。名は解封弾。義眼に封じたマナの特性によって着弾時の効果が変わる。雷を発生させる弾丸に込められたマナは葬雷のマナ。千面道化に使ったマナを吸収する弾丸には俺の封印のマナを装填していた。フラムのマナを義眼に吸収し、弾と合わせれば爆発する弾丸を作れるな」

「面白い設計ですね……」


 ヴィヴィは素直に感心している。


「ようやく俺の凄さがわかったかね」


 そう言われると褒める気が失せるな。


「さぁ、着いたぞ」


 ジョシュア先生が先導し、コノハ研究所へ到着する。


「お待ちしておりました」


 と玄関で出迎えてくれたのはラビィさんだ。


「まずこの研究所のルールを説明いたします。外観を見てわかる通り、この研究所は三つの施設で構成されております。1つはここ、居住棟。ここから東にある別棟が研究棟、西にある建物が保管棟となります。この内、研究棟と保管棟への出入りは全面的に禁止いたします。禁を破った場合は最悪死んでもらう場合もありますので、お気をつけください」


 おっかないな……。


「ではお入りください」


 居住棟へ入る。


「ここ右手側にある大部屋にジョシュア様、イロハ様、アラン様は寝泊まりしてください。左手側にある大部屋にヴィヴィ様、フラム様、ルチア様は泊まっていただきます。就寝時は私がヴィヴィ様の護衛をいたします」

「よろしくお願いします」

「冷蔵庫にある食料は自由に使ってください。お風呂や洗濯装置も自由に使って大丈夫です」

「コノハはどこに?」

「ご主人様はリビングを抜けた先、書庫にいらっしゃいます。基本的にご主人様は第一錬成室か書庫にいます。最後に、ご主人様より伝言です。ヴィヴィ様以外の方々も外で行動する際は必ず、常に2人以上で行動するようにとのことです」


 2人行動は千面道化対策だな。

 単独行動中に融合錬成をくらった場合、俺以外の人間じゃそいつが千面道化かどうか見破ることができない。俺が融合錬成をくらった場合は最悪だな。


 だが2人行動ならその辺の事態は防げる。


「ご主人様に用がある際は私を通してください。ご主人様が研究所へいる間は、私は女子部屋で待機しています」


 説明を終えたラビィさんは女子部屋に入る。それに追随するようにフラムとルチアも女子部屋に入るが、ヴィヴィはなぜか部屋に入ろうとしない。


「なによヴィヴィ。入らないの?」

「ちょっとイロハ君と2人で話がある。ジョシュア先生、少しだけ外で彼と2人になってもいいですか?」

「手短にな」


 なんの用だろうか。

 とりあえずヴィヴィについて外に出る。


「どうした? わざわざ2人になるってことは、お前の過去に関係した話か? それとも賢者の石関連か?」

「両方だ。イロハ君、アゲハさんの手記にあった2つ目の錬成物を覚えているかい?」

「えーっと、たしか……『錬絶のナイフ』だったか?」

「そう、錬絶のナイフ……アレの素材の1つに融合のマナがあるんだ」

「融合のマナ? そういや、千面道化が『僕の融合のマナ』とかなんとか言ってたな」

「間違いなく、奴は融合のマナを持っている。フラム君の起爆のマナと同じで、融合のマナはロストマナに分類されるマナだ。貴重なマナだよ。このチャンスを逃す手は無い」

「奴から融合のマナを奪うってことか。でも、どうやって?」

「毛や爪に至るまでマナは宿る」

「じゃあ奴の髪の毛でも奪えばいいってわけか」

「でも髪の毛程度に宿るマナじゃ足りない」


 ヴィヴィはストレージポーチから注射器を出した。


「血液50mlがノルマだ。この注射器なら1瞬刺すだけで抜き取れる」

「千面道化の肌にこれが刺さればいいけどな」

「傷口を狙うしかないね」

「……難易度たけぇ」

「無理にとは言わない……自分の身を最優先で考えてくれ。この際、ハッキリと言う」


 ヴィヴィは不安そうな顔をする。


「もしも、もしも君が千面道化に殺されたら……私の心は完全に壊れる」


 ヴィヴィにしては珍しい、素直な弱音だった。


「ファウスト卿、って奴はお前の知り合いか」

「ああ。ヘルメスの王、それがファウスト卿だ」


 ヘルメス。ヴィヴィが居た闇組織か。そのリーダーがファウスト卿ね。


「……」


 ヴィヴィの顔色が悪くなる。


「どうやら、お前の様子が変なのはそいつが原因みたいだな」

「……思い出したくもない。冷徹な瞳で、私の体を弄り回す彼の姿を……思い出すだけで気分が悪くなる。千面道化……アレについても覚えがある。会う度に姿を変えていた子供。あの子供がきっとそうだ。最後まで男なのか女なのかもわからなかったね」

「四大傑作の千面道化。そういえば、ヘルメスと一緒に行方をくらました子供って4人だったよな。まさか……」

「可能性はあるね。私の妹と、千面道化と、あと2人……この4人が四大傑作なのかもしれない。予想に過ぎないが」


 ヴィヴィは俺の肩にもたれかかる。

 体は震えている。


「ヴィヴィ……」

「おかしいね。ようやく、奴らが接触しに来たのに……怖いんだ。もし、攫われて、またあの日々に戻るかと思うと……私は……」


 焦点が合ってない。精神が不安定なんだ。


「らしくないぞ。お前はいつも通り、不遜なヴィヴィ=ロス=グランデで居てくれ」

「……私だってたまには、女子になってもいいだろう」

「そうだな。そんじゃ、俺もたまには男らしくいかせてくれ。――大丈夫だよヴィヴィ。千面道化は俺が何とかする。心配するな」


 ヴィヴィは震えを止め、俺から離れる。

 数秒後、気恥ずかしくなったのか、顔を紅潮させた。そしてコホンと咳払いし、


「……ありがとう。感謝する……」


 と言って、足早に研究所に入った。

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