第100話 最先端錬成物
ヴィヴィと別れた俺は居住棟に戻り、男子部屋に入る。
男子部屋はかな~り広い。
フローリングの床に布団が3つ敷いてある。ご丁寧に本棚・クローゼット・机・椅子がそれぞれ人数分ある。大きなソファーもあり、ダーツやビリヤードなどの娯楽品も充実している。
「用事は済んだのか?」
ジョシュア先生はソファーでくつろいでいる。
「はい」
「一応忠告しておくが、女子と1つ屋根の下だからって無茶するなよ。男としては応援してやりたいが、俺も教員という立場上――」
「しませんよ何も!」
余計なお世話だ。
「イロハ君、ここの設備見た?」
外から部屋に戻ってきたアランが言う。
「いや、まだだ」
「凄いよ~。面白いものがいっぱいある。案内してあげるよ」
「おー」
最初に案内されたのはリビング。
リビングは以前この研究所へ来た時もチラッと見たが、ちゃんとは見てなかったな。
「まずはこれだ」
アランは1メートルほどの大きさの金属の箱を指さす。
前面には手形、マナドラフトがあり、マナドラフトのすぐ横にはつまみがある。つまみの周りには何やら絵が描いてある。絵の種類はハンバーガー・ポテト・黒い液体の入ったコップ(コーヒーかな?)・オレンジ色の液体が入ったコップ(オレンジジュース?)・ショートケーキ・プリンだ。
「『料理錬成器』! このつまみを回して、つまみに引いてある線を欲しい物に合わせる」
アランはつまみを回し、線をハンバーガーに合わせた。
「それで、横にある食器棚からご飯なら皿・飲み物ならコップを取る。取り出し口に皿もしくはコップを置く」
アランは取り出し口に皿を置いた。
「最後に、マナドラフトに手を合わせる」
アランがマナドラフトに手を合わせると、一瞬で皿の上にハンバーガーが出来上がった。
「今の一瞬でこのハンバーガーを錬成したのか?」
「食堂の錬金術に似たようなものだね。とにかくこれを使えば食事には困らない」
「三日三晩ハンバーガーで済ます気かよ」
「僕はいけるね。はぐっ、んぐ……うまい! タダでこれが食えるんだ。最高だね」
まぁ、朝飯ぐらいなら毎日ハンバーガーでもいけるか。
「お次はこちら」
次に案内されたのは、水蒸気に満ちた木造の部屋。
「なんだここ……蒸し暑いな」
「サウナって言うんだってさ。この蒸気の熱で体を温めるお風呂の一種。男女共用だから入る時は水着で入るように」
水が無い風呂……錬金術師の世界にはこんなものもあるのか。
「これも凄いよ」
アランが次に案内したのは――洗濯機だ。
「洗濯錬成装置!」
「洗濯機とは違うのか?」
「うん。イロハ君、その靴下汚れてる?」
「そりゃ、朝からずっと使ってるからな。森も歩いてるし、土だらけだぞ」
「その靴下を中に入れてみてよ」
靴下を脱ぐ。
土汚れが付いており、全体的に茶色くなっている。
その靴下を洗濯錬成装置とやらに投げ込む。2秒ほど間を置いてポチャンと音がした。
「ん? まさかコレ、底なしか?」
「そう。この箱の底は穴が空いていて、穴は井戸並みに深い。底には多分、水が溜まっている」
洗濯錬成装置に顔を突っ込んで下を見る。
冷ややかな風が顔に当たる。底が見えないほど深い穴が空いていた。感覚的には井戸に似ている。
「あの靴下戻ってくるんだろうな?」
「大丈夫大丈夫! まぁ見といてよ」
蓋にはマナドラフトがある。
アランがマナドラフトに手を当てると、筒からポン! と真っ白な靴下一組がシャボン玉に包まれて落ちてきた。
シャボン玉を割り、靴下をキャッチする。
水気はない。汚れも一切残ってない。新品同様の靴下だ。色も純白、キレイだ。
鼻を近づけて香りも嗅ぐ。……うん、ラベンダーのような甘い香りだ。
「便利だな」
「全てが効率化されているよ」
コノハ先生らしい家だ。
大体の設備を見終えた俺は、部屋へと戻るため歩みを進める。
「イロハ様」
男子部屋の前に、ラビィさんが待っていた。
「ご主人様がお呼びです。第一錬成室においでください」




