第130話 無人島試験①
「ん、く……!」
なんだろう。あったかい。あったかくて、ふわふわしたものが顏に当たっている。
これは……なんだ。そう、アレだ。雑草の匂いだ。それに右手の甲を何かが伝っている。これはもしかして、蟻か……?
蟻? 蟻がなんで手の上を歩いている。
俺はうつ伏せで眠っているみたいだ。よし、段々と意識が覚醒してきた。俺は瞼を開く。目の前は、土色。
「って、土!?」
土の上で寝ているのか俺!?
慌てて体を起こし、手の上を見る。蟻が、本当に歩いていた。
周囲を見渡す。木々が大量にある。森の中……? 下は土の地面。雑草が大量にある。空、青空。太陽が照り輝いている。雰囲気はまるで南国。
「えーっと、森の中、だな。なんで俺、こんなところに……」
登校して、席に座って、そんでそのまま……。
服は制服。ポケット、空だ。学生鞄も無い。けど、すぐ傍にリュックサックが落ちていた。
俺はリュックを開き、中を見る。
「食料……缶詰に、水筒。時計、布、マナスティック、ペン、チョーク、この筒は……ラベルに書いてあるな。発煙筒か……ん? ラベルの裏にはなんか書いてある。使用注意? 発煙筒は使うなってことか? あとは、本があるな」
本を手に取る。タイトルは――
「『特別課題のしおり』……って、マジか。これ学校の仕業かよ」
しおりを開き、内容を見る。
1、本課題は無人島で行う。
2、本課題では同じ島に居る他4名の生徒と協力して3日間無人島で暮らしてもらう。
3、5人の内の1人、リーダーのリュックサックには白紙のノートが入っている。5人で協力し、現在居る無人島の解説書をそのノートを用いて作成してもらう。ノートの完成度・情報量に応じて採点する。ノートに記載する内容の例を以下に示す。ただし、あくまで例であり、これ以外にも多くの情報を記すことを推奨する(例:無人島の地図、生息する魔物の種類、気温の変化等)。
4、発煙筒を焚くことでリタイアすることができる。ただし、島に居る5人の内1人がリタイアすれば、他4名も同様にリタイアとする。
「ん~っと、つまり……無人島で暮らしながら、この無人島の説明書を作ればいいってことだな」
リュックの中をもう一度探る。だが、ノートらしきものはない。
「俺はリーダーじゃないってことか」
島には他に4人もいるらしい。
「まずは他のメンバーと合流しよう」
それにしても、不意打ちで眠らせて無人島に運んでいきなり試験って……何度も何度も言ってるけど無茶苦茶だなこの学校!
「……3日って、3回陽が落ちたら終了ってことか? それとも3回朝を迎えたら? 説明不足過ぎるぞまったく……」
それにしても暑い。
水筒の水を飲む。1回で3分の1も飲んでしまった。
「……水分確保しないと死んじまう」
川、川は無いか?
「ん?」
靴の足跡発見。まだ新しいな。それに足跡の傍の木に矢印が書いてある。矢印の方向に来いってことだろう。十中八九同じ島に来た生徒の仕業。
走って追跡しよう。
追跡すること2分ほど。木に石で傷をつけながら移動している女子を見つけた。
赤毛の女子だ。
「ロアか!」
「ん? ――あ! イロハじゃん! またチームなんて、私達、運命の赤い糸で結ばれちゃってる?」
「そんな糸で結ばれているなら俺に見えないはずが無い」
「やれやれ。相変わらずのリアリストちゃんだね」
ロアが同じグループなのはラッキーだ。
錬成力、コミュニケーション力、体力、知力。
どれをとっても隙が無い錬金術師だ。
「ロア。もしかしてお前がリーダーか?」
「お、よくわかったね。そだよ~」
ロアはリュックを開き、一冊のノートを出す。
「ほい。これがリーダーノート」
「分厚いな……」
「まったくだよ。超重い!」
ざっと見たが、300ページは余裕であるな……。
「見てこれ! 万年筆も付いてた! これで書き込めってことかな。これ高いやつだよね。試験が終わったらもらってもいいのかな!?」
「好きにしろよ。早く残りのメンバーとも合流しようぜ」
「うん!」




