第131話 無人島試験②
というわけで、またロアとサバイバルをすることになった。
「いきなり眠らせて無人島に放置とか、めちゃくちゃだよね~」
「まったくもって同感だ」
「暑いよ~。もう汗で服びちゃびちゃ。あ! そういえば服の替え無くない!? どうするの!?」
「リュックの中に布があったぞ。ほら」
俺は白地の大きな布を見せる。
「え~、それっぽっちじゃ服にはならないでしょ」
「言えてるな。布団も枕も服もタオルも、何もかも錬金術で作れってことか。これは骨が折れるな」
「ぼっきぼきだよ。ん? イロハ、アレ見て!」
ロアが遠くの空を指さす。視線を移すと、一筋の煙が上がっていた。
「まさか発煙筒か?」
だとしたら俺達の特別課題はここで終わってしまう。
「いや違うよ。煙の感じからして焚火じゃない?」
確かに、あの煤が混じった感じは焚火の煙っぽい。
なんにせよ、
「行くか」
「うん!」
煙の立つ場所へ向かって歩く。
「……ねぇイロハ」
「ん?」
ロアにしては珍しく小さな声だ。
「ちゃんと……帰れるかな」
意外だ。意外にもロアはこの状況を不安がっていた。
いきなり無人島で3日……普通に考えて大変なことだ。俺だってプレッシャーを感じる。ましてやロアは女子だ。女子は男子よりも気を遣う部分が多いだろう。ロア達女子組の抱えるプレッシャーは男子のそれと比にならない。
「いざとなれば発煙筒を焚けば助けに来てくれるだろ」
「でも1人がリタイアしたら、全員がリタイアになっちゃうんだよ?」
「命が危険だと思ったら迷うな。文句言う奴は俺が黙らせる」
「……ふふーん」
ロアは俺の脇を肘で小突いてくる。
「かっこつけちゃってさ! イロハって恥ずかしいセリフ平気で吐くよね!」
「よく言われる」
パチパチ、と火を焚く音が耳に入った。
俺とロアは煙の出所へ辿り着く。
「あ、どうも」
焚火の前に居たのは、まったく知らない女生徒だった。
「えっとぉ、ごめん。ジャッククラスじゃないよね……?」
「うん。アニスはエースクラスだよ」
凄いな。
髪色がヴィヴィとまったく同じだ。赤と青の2色。でも、ヴィヴィと髪型は違ってツインテールだ。瞳の色もヴィヴィとは違う。黒色だ。
髪色が同じなだけで、他の部分は全然違うな。
「てっきり同じクラスだけで構成されると思ってたけど、そうでもないみたいだな」
「そうみたいだね」
アニスが同調した。
「早く残りの2人も見つけよ。ね、えーっと」
「イロハだ」
「私はロアね!」
「イロハとロアちゃん。一緒に頑張ろうねっ!」
コイツはこの状況でも全然動揺していないな。
普通、無人島で人に会えたらもっとリアクションあるだろ。
「ねぇイロハ」
ロアも俺と同じように違和感を感じ取ったのか、耳打ちしてくる。
「……あんなかわいい子と3日も一緒だなんて、私の理性もつかな?」
「知るか」
コイツに何か期待した俺が馬鹿だった。
「おー! 居た居た!」
「げっ」
草木をかき分け、新たに2人が現れる。
知っている2人だった。
「あ! フォックスじゃん!」
「ついでにルチアな」
「誰がついでよ!」
「ははは! ロアとイロハとはね~。こりゃ楽しくなりそうだ」
我がオーロラファクトリーの新人ルチアとロアの幼馴染であるフォックス。
これは楽な面子だな。
気になるのは……、
「ん? そっちの女の子は誰だ?」
「アニスだよ。エースクラス出身」
1人だけエースクラスなんてバランス悪く無いか? それとも学校側からの『揺さぶり』か? 1人だけ別クラスの人間を混ぜて、チームバランスが崩れるかどうかを見ているのかもしれない。
「エースクラス……ふんっ! エリートクラスね。ムカつくわ」
そういやエースクラスは何でも満遍なくできる奴が集まるんだっけか。
「エリートだなんてとんでもない! アニス、なんにもできないよ~。錬成も並、勉強も並。運動能力には多少自信があるけどね」
「おお。俺とおんなじだ」
「アンタは錬成も勉強も並も無いでしょうが!」
ロアがフォックスに突っ込む。
「それで、リーダーは誰なんだ?」
「はいはーい! 私でーす!」
ロアが元気よく手を上げると、フォックスとルチアは顔を青くさせた。
「お前かよ。心配だな」
「まったくよ。なんで私じゃないのよ!」
「2人とも失礼だね!」
いやいや、この中じゃ1番ロアが適任だと思うぞ。アニスの実力は未知数だからアニスは考慮しないけど、少なくともお前らにリーダー適正は無い。
「さ! みんな動くよ~。サバイバルは初動が大事なんだからね!」
「ほーい」
「早速仕切ってるわね……」
「まぁ学校側はロアをリーダーに選んだんだ。ひとまずは、ロアにリーダーを任せるべきだよ」
と一応ロアを擁護する。
「私はロアちゃんがリーダーでぜんぜんいいよ。楽しくなりそうだし」
「アニスちゃん……!」
ロアはアニスを抱きしめる。アニスはロアより頭1つ分小さいので、ロアの胸の谷間にアニスの顔がすっぽり嵌まる。
「アニスちゃぁん! 一生大事にするよ!」
「……!」
アニスはロアをドン! と押しのけた。
「おっとと」
アニスの少し強めの押し返しに、場が静まる。
アニスは頬を赤くし、動揺している感じだ。
「ご、ごめんねアニスちゃん! いきなり抱き着いて……距離感近すぎたね!」
「う、ううん! いいんだよ。全然……うん。ご、ごめん。人に抱きしめられたの、久しぶりだったから……驚いて」
ロアは少し距離感を考えるべきかも。言わずとも、ロアなら自分で調整するだろうけど。
「お前はいきなり過ぎるんだよ」
フォックスが諫める。
「えへへ……ごめんなさい」
「反省したならとっとと指示を出せ」
「うす! まずは水だよ! 川を探そう。川が無ければ海水を真水にするよ」
「川ならもう見つけたわよ。この私がね!」
ルチアが威張る。
「川というか湖だな。さっき俺とルチアはその湖で合流したのさ。案内するぜ」




