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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第3章 千面道化襲来

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第129話 気まずい3人

 家の場所はほとんど同じ。目的地はまったく同じ。

 というわけで、登校中にクラスメイトと会うことは珍しくも無く――


「……」

「……」

「……」


 とはいえ、今日は引きが悪かった。

 家を出てすぐ、ラルーシェに鉢合わせした。挨拶をした後、流れで一緒に登校することになった。

 そのすぐ後、今度は家を出るシオン=クロードと出会った。シオンとは特に接点は無い。1度店で絵画を売買しただけの仲だったのだが、無視するわけにもいかず、「一緒に行くか?」と誘ってしまった。いや、てっきり断られると思ったんだよ。コイツ、初対面の時俺のこと凄く睨んできたし。でも普通についてきた。


 黒髪のつんけん女子と白髪(はくはつ)の内気女子。会話が弾むはずも無く。


「アレだな。今日はいい天気だな」

「……」

「……」


 どっちも無視は勘弁してくれ……。


「で、2人はどういう関係なんですか?」


 にっこり笑顔でシオンがそう切り出した。言葉に圧を感じるのは気のせいだろうか。


「と、友達です!」


 俺が答える前にラルーシェが答える。


「先輩の口からもそう聞きたいものですね」


 先輩。という単語を聞き、ラルーシェが顏を青ざめさせた。心配するな。コイツの言う先輩とはお前のことじゃない。


「友達だよ。あと先輩って呼ぶな。同級生だろ、俺達」

「そうですね。先輩」


 コイツ、話を聞いてない。


「ラルーシェさん。ご挨拶遅れてすみません。私はシオン=クロードです」

「ら、ラルーシェ=ウェントゥスです。よ、よろしくお願いします……!」

「こちらこそ。ところで、2人は知っていますか? あの噂」

「噂?」

「……」


 ラルーシェは知っている様子だ。


「この時期、特別課題が発生するらしいですよ」

「特別課題ってのは……なんだっけ?」

「成績に大きく影響する課題です。しかも、特別課題は予告なしで始まるそうですよ。課題の内容は様々で、登校したらすぐさま筆記テストが始まったり」

「それはやばい」

「いきなり密室に閉じこめられて、どう脱出するかテストしたり」

「えぐいな」

「不審者が教室に乱入して、どう対処するかテストしたり」

「それはこの前似たようなことやっちまったな」


 千面道化の件でな。


「生き残れるといいですね。みんな」

「おいおい。そんな過酷なのかよ」

「そりゃ過酷ですよ。この特殊課題で酷い結果を残し、留年・落第・退学等の処分を受けた生徒は数えきれないぐらい存在する」

「そこまでか……」


 ラルーシェの瞳に涙が浮かぶ。


「き、気を付けてくださいぃ……イロハさぁん!」

「お前こそ気を付けろよ」


 コイツが留年したのって、もしかして特別課題がきっかけか?


「先輩はたとえ退学になっても美術家という道が残っているから、気楽でいいですね」


 流し目で、挑発するようにシオンは言う。


「……あのな、別に俺は錬金術師になれなかったとしても、画家に戻る気は無いぞ」


 そもそも画家じゃなく画家見習いというレベルだったしな。


「なんでですか? アレだけ良い絵が描けるのに。先輩には錬金術師より画家の方が向いていますよ」


 やけに突っかかってくるな。やっぱりコイツ、俺のこと嫌いなんだな。


「イロハさんの絵、ぜひとも見てみたいです」

「そういやラルーシェには見せたこと無かったか。なにか描いてほしい景色とかあったら言ってくれ。すぐに――」

「そんな……」


 シオンが俺の正面に回り込む。


「アナタの絵は! そんな安売りしていいもんじゃありません!!!」


 周囲を歩いていた生徒も、思わず足を止めてしまう大声でシオンは叫んだ。

 シオンは自分の両手で口を塞ぎ、顔を真っ赤に染める。


「……すみません」


 シオンは学校の方へ走っていってしまった。


「け、喧嘩でもしてるんですか?」

「いやぁ? 俺は別に……」


 アイツの俺に対する感情わけわからん。

 俺とラルーシェは学校の門をくぐって中へ。廊下を歩いて教室の中へと足を踏み入れる。

 2人ともそれぞれに席につき、授業が始まるのを待った。

 教室に続々と生徒が揃っていき、全員が出揃った頃、


(あ、れ?)


 唐突に、眠気が襲ってきた。昨日はたっぷり眠ったし、さっきまで頭はクリアだったのに、酷く眠くなった。

 何かがおかしい。


「!?」


 煙だ。青白い煙が、教室を漂っている。目を凝らさないと見えなかった。多分、俺以外の人間にはこれは見えない。

 バタンバタン、と次々とクラスメイト達が倒れていく。

 この煙のせいか。この眠気は……!


「あ、が……!」


 口が上手く動かない。

 瞬きをすると、そのまま瞼が上がらなかった。

 俺は深く深く、眠ってしまったのだった。

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