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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第3章 千面道化襲来

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第123話 錬絶のナイフ①

 取調室の外。石で出来た通路に出る。


「アゲハさん。少なくともあの人は、ユグドラシルを90階まで上ったのだな」


 そういえば、レイン副校長の最高記録は80階だっけか。やっぱり悔しいのかな。


「やはり、まだまだ敵わんか」


 自身の最高記録を抜かされていたというのに、レイン副校長は嬉しそうだ。成功するのも納得の精神性だ。


「90階の様子とか、あまり深くは聞いてこないんですね」

「それも含めて楽しみだからな」


 俺とレイン副校長はロウソクで照らされた通路を歩く。

 通路には窓が一切なく、未だに俺は今が朝か夜かも知らない。


「ところで、ここってなんですか?」

「牢獄だよ。この学園都市のな。学園都市で犯罪を犯せばここに入ることになる」

「へぇ」


 それにしてもやけに広い通路だ。


「うわっ!?」


 正面から、体躯3mはある猪人間、ミノタウロスが歩いてきた。手には棍棒を持っている。

 ミノタウロスは俺達に会釈をし、俺達を避けて通路の闇へ消えていった。


「怖がる必要は無い。奴らは特定の条件を満たす人間にしか襲いかからない」

「アレは獣人ですか? それとも」

「キメラだ。亜人・獣人とキメラの見分けは難しいだろうな。実際、外見じゃ判別は付かない。ただ決定的な違いとして、キメラは喋ることができない。覚えておくといい」


 それはタメになる情報ですね。


「今って時間は……」

「5月12日木曜日、13時というところだな」


 ユンセルさんと戦ったのが11日の夜……ということは、15時間以上は寝ていたわけか。


「授業サボっちまったな……」

「気にするな。減点にはならないように手配する。授業の遅れは仲間に補完してもらえ」

「そういえばアラン達はどうしたんですか?」

「アイツらはアイツらだけで世界樹に潜って夜の内に退散した。私も最初はアイツらと一緒に行動したが、途中からはお前を探すため別行動を取り、見つからなかったので外に出た。そしたらあの様だ」


 軍服を着た看守が集う関所を越えると、牢獄の出口が見えた。大扉だ。

 レイン副校長が合図すると、門番らしき人が門の傍にあるマナドラフトに手を合わせ、扉を開いてくれた。


 ようやく外に出られる。


「って、雨かよ」


 残念ながら外は雨だった。


「これを使え」


 レイン副校長はストレージポーチからピンクの傘を出した。


「これ……レイン副校長の傘ですか?」

「そうだが?」


 何気に少女っぽい傘持ってるんだな……。


「お前は今日、私と特別な訓練をしていると皆には言ってある。口裏を合わせておけ」

「どんな訓練をしていたことにしますか?」

「滝行、手合わせ、サバイバル」

「了解しました」

「あと、世界樹で起きたことは他の者には話すな」

「はい。もちろんです」


 俺は傘を開き、外へ歩き出す。


「イロハ」


 レイン副校長に呼び止められた。


「お前……どうやってユンセルさんの刀を折った?」


 レイン副校長は視線を尖らせる。


「手入れが甘かったんじゃないですかね? ユンセルさんがあの刀を地面に叩きつけた時にポックリいってましたよ」

「……そうか」


 レイン副校長は小さく笑う。

 俺は雨の中進み、牢獄を見上げる。

 巨大な鉄塔だ。見たことがある。学校の近くにある鉄塔だ。牢獄だったのか。こんな危険なもの、学校の近くに建てない方がいいんじゃないか? 囚人が脱走して学校に来たらどうするんだ。ま、俺が考えることじゃないか。


 俺は帰路につく。


「今日の店番は俺じゃないけど、ヴィヴィは店番の日だったか。魔鉄のこともあるし、ムショのこともある。寄っていくかな」


 ヴィヴィには起きたこと全部、ちゃんと話そう。シロガネとユンセルさんの戦いの所はあれだ。俺があっさり気絶させられたことにしよう。

 正直俺が抱えられる問題量をとっくにオーバーしている。アイツの知恵を借りたい。

 


 --- 



 オーロラファクトリーの店に寄った。

 店番はヴィヴィとアランの2人だ。


「よっ。どうだ調子は?」

「それはこちらのセリフだよ」


 ヴィヴィは呆れながらに言う。


「イロハ君。ボロボロだね」


 アランの指摘。

 しまった。ユグドラシルの90階を歩き回ったし、その後ユンセルさんとバチバチにやり合ったから、制服のあちこちに傷や穴が……。


「レイン副校長の訓練のせいだよ。サバイバルさせられたんだ。ほら、昨日の世界樹のやつ、俺ビビッて1人で脱出しちまって。それをバチバチに怒られてな」


 こ、これで誤魔化せたかな。


「え!? イロハ君が居なかったのって逃げたからなんだ……流石に見損なったよ」

「悪い。いざ入ったら怖くなっちゃったんだ」


 アランは意味ありげな視線をぶつけてくる。俺はアランから顔を背ける。


「それよりヴィヴィ、かな~り積もる話がある。どこかで時間を作れないか?」

「それ、僕が居ると困る話? ここでしたら?」


 うっ……それはちょっとな。アランにまで聞かせたくはない。


「実はイロハ君には内密でお願いをしていたんだ。すまないが、今日はイロハ君と店番を変わってくれないか?」


 俺の顔色から察してくれたのか、ヴィヴィがアシストしてくれる。


「秘密のお願い……? まさか!? 2人ってそういう関係だったり……!?」

「「それは無い」」


 アランは「そっかそっか」と笑う。


「気になるけど、あまりしつこいと嫌われそうだし、僕は退散するよ」

「悪いなアラン」

「気にしないで。店番を変わってもらえるんだし、僕にとってはラッキーさ」


 アランは笑って店を出た。

 俺とヴィヴィ、2人だけが店内に残る。


「君臭いよ。下にシャワー室を設置したから、そこで汗を流してきたまえ。話はそれからだ」

「いつの間にそんなもん……」

「女子達の要請だ」


 俺はお言葉に甘えて、1階のシャワー室で湯浴びをした。

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