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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第3章 千面道化襲来

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122/138

第122話 尋問

 意識を寝かせ、シロガネに身を委ねると、俺は一定時間覚醒できない。

 時間にして約10時間だ。そして10時間後、意識が覚醒すると同時に俺は体の所有権を手に入れ、そして、意識を寝かしていた間の記憶を手に入れる。


 シロガネに体を渡してから10時間後、俺は目を覚ました。

 ユンセルさんとの戦いの記憶を脳にぶち込まれる。結局、シロガネは最後に拳を貰って敗北したらしい。技術的には互角だっただろうが、肉体強度の差で負けたな。


 さて、記憶は手に入ったが、今の状況は全く理解できない。

 瞼を開き、目を凝らしても何一つわからない。

 俺は椅子に縛られ、口を札で封じられていた。目の前にはジャック校長とレイン副校長が立っている。


「お目覚めだね、イロハ=シロガネ」


 灯りは数本のロウソク頼り。部屋は薄暗く、輪郭が掴めない。床は石だ。


「いま、貴殿には世界樹への不正アクセス容疑がかかっている。記録によると、貴殿は世界樹の90階へ足を踏み入れている。レイン副校長ですら入れていない領域だ」


 レイン副校長は眉をピクリと動かす。


「もしも、貴殿が悪意を持って世界樹へ不正アクセスをしたなら、厳しい罰を受けてもらう。少なくとも、退学は確実だね」


 マジかよ……。

 いつもと違ってジャック校長も本気だ。これは、受け答えをミスったら本気でヤバいな。後ろめたいことは無いんだ。正直に話せばわかってくれるはずだ。わかってくれなきゃ困る。今回のことは本当にただの事故だ。


「レイン副校長」

「はい」


 レイン副校長が人差し指を立てると、俺の口の札が勝手に切れて落ちた。


「それでは世界樹で何が起きたか、吾輩達に説明してもらおうか?」


 俺が口を開こうとした、その時、


『ラタトスクについては喋るな』


 シロガネがストップをかけてきた。


(なんでだよ)

『なんでもだ。言ったら死ぬぞ、お前』


 コイツ、説明不足が過ぎるぞ。

 仕方ない。なにか悪意があるようにも感じないし、とりあえず、言う通りにするか。


「実は……」 


 俺はラタトスクについては誤魔化しつつ、身に起きた出来事を話した。

 ムショについては爺さんが製作したペットってことにした。


「――っていうわけで、恐らく世界樹が俺の事を爺さん……アゲハ=シロガネって誤認して、こういう事態になったんだと思います。なんで世界樹が俺を爺さんだと思ったのかは知らない。俺と爺さんに血縁関係は無いはずですから」

「血縁関係があったところで世界樹は誤認なんてしない」


 レイン副校長がキッパリと言う。


「考えられるとしたら、アゲハさんがお前に何か仕込んだ可能性だな」

「……」

「ジャック校長、あなたの見解は?」

「レイン副校長と同じだよ。アゲハが貴殿に、何かしらの錬成物を仕掛けたのだろう。貴殿が世界樹の90階へ飛べるようにね。恐らくはキミが90階に入るのと同時にその仕掛けた物は消失した。吾輩はそう結論付ける」

「?」


 嬉しいけど、結論出すの早くないか?


「なぜアゲハさんをイロハをあの階に?」

「恐らくはこれだ」


 ジャック校長は暗がりから小包を拾う。包みを開くと、折れた剣が入っていた。


「複製剣・レプリカ。魔剣の一種だ。アゲハは貴殿にこれを託したかったのだろう」


 マナを消費し、刃を複製することができる魔剣……。


「ただ残念ながら『複製』の特性は折れた瞬間に消えてしまったらしい」

「それにしても素晴らしい魔剣です。私のティルヴィングと何ら遜色ない」

「格としては同等だよ。ティルヴィングもレプリカも、八宝剣に名を連ねる。さてさてイロハよ。今回の件は不問としよう。状況と貴殿の話を照らし合わせるに、どうやら全てアゲハの仕業のようだ」


 レイン副校長が人差し指と中指を合わせて上げる。すると、俺の手と椅子を縛り付けていた鎖が解けた。


「帰っていいよ。これも貴殿にあげる」


 レプリカの残骸をジャック校長から受け取る。

 ありがたい。錬絶のナイフを作るには十分な量だ。


「レイン副校長。彼を送ってあげなさい」

「はい」


 レイン副校長がロウソクを持って先導する。レイン副校長がこの取調室の扉を開けた。開けた扉の先から大量の光が入ってくる。

 俺は出口の前で立ち止まり、最後にジャック校長にある質問をぶつける。


「ジャック校長」

「なにかね?」

「爺さんの友人だったあなたに1つ聞きたい。アゲハ=シロガネは、善人ですか?」


 俺の質問に対し、ジャック校長は即答する。


「無色だよ。彼に善意も悪意も無いさ」

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