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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第3章 千面道化襲来

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第102話 ホムンクルス

 土曜、早朝。

 脱衣所を破壊した罰で昨日はコノハ先生に一晩中正座を強いられた。おかげで足と腰が痛い。

 外の空気を吸おうと居住棟から出た俺は、信じられない光景を見た。


「なんだ、この人だかりは……!」


 お爺さんから子供まで、老若男女が集団を作っていた。

 全員それぞれ違う服を着ている。数は50人程。

 不気味なのは全員真っすぐ前を見据え、微動だにしないことだ。人間なのに、人形のような表情。目の前に居る俺にも反応を見せない。


「コノハのホムンクルスだな」


 寝起きパジャマのジョシュア先生が言う。

 昨日コノハ先生が言っていたカメラを搭載したホムンクルスってコイツらのことか。


「おはようございます」


 ひょこっと、金髪の女子が研究所から出て来る。


「おはようルチア。なんだか不機嫌な面だな」

「そんなことありません」


 ルチアはキッ! と俺を一瞥する。昨日の裸を見られた件、まだ怒っているみたいだな。ていうか怒るならそっちの眼帯だろ! そいつが適当なこと言ったのが原因だろ!


「……ホムンクルス研究の第一人者というのは本当みたいですね」


 すでにキッチリ身支度を整えているルチアが、現れるなり称賛した。


「今まで見たホムンクルスの中で一番完成度が高い」

「いやぁ、照れるね」

「どうしてジョシュア先生が照れるんですか」


 とツッコみを入れておく。


「彼らは抱魂人造人間(アニマクルス)ですか? それとも無魂人造人間(エンプティクルス)ですか?」

「エンプティクルスだ。コノハが開発した抱魂人造人間は三体だけで、あの中には居ないよ」

「エンプティなんとかとアニマなんとかの説明を求む」

「アニマクルスは魂の入っているホムンクルス、エンプティクルスは魂の入ってないホムンクルスだよ。ほら、いつもコノハの側にいるラビィはアニマクルスだ」


 そもそもラビィさんがホムンクルスだってこと自体が初耳だ。


「ラビィさんってホムンクルスだったんですか!?」


 良かった、俺と同じ奴がいた。


「アニマクルスは法律上も明確に人間扱いされる。けれどエンプティクルスは人間ではなく人形って扱いだ。この辺りはいずれ生物錬金学で習うと思うぞ」


 魂のあるなしが人間と人形の違い、って判断なんだな。

 確かにさっきの人たちは人形味が強かったが、ラビィさんは人間って感じだった。ラビィさんも基本無表情なのに、なぜだろうな。無意識の内に、魂のあるなしが人にはわかるのかもしれないな。


「戦闘力はどうなんです? このホムンクルス全員が戦えるなら心強いですけど」


 ルチアが良い質問をする。


「天と地の差だな。アニマクルスはマナを持っているから、マナを消費する錬成物を扱える。だけどエンプティクルスはマナを持ってないからそういった錬成物を使えない。エンプティクルスの戦闘力は錬金術を知らない一般人レベルだ」

「なるほどね。俺の持ってる虹の筆とかは使えないってことか」

「……ちょっと待った。イロハ、お前は虹の筆を持っているのか? 千面道化を撃退した時に持ってた筆が、まさか――」

「はい。爺さんが昔作ってくれたんです。俺は画家だったので、その手助けになればと」

「そっか……お前が錬成したわけじゃないのか」

「はい」

「だよな。アレは特規錬成物、生徒が作れるレベルの物じゃない」


 なんとなく嘘ついたけど、正解だったかな。


「いや~、でもよかったよ。虹の筆を作ったのがお前じゃなくて」

「どうしてですか?」

「コノハも昔、虹の筆を錬成しようとしたんだよ。でもどれだけ研究しても結局虹の筆を錬成することはできなかった。だからもしお前が虹の筆を作っていたなら、アイツはもっともっとお前に対して敵意を抱いていたに違いない」


 了解ですジョシュア先生。

 絶対アイツには俺が虹の筆を作ったことは言いません。



 ---



 朝食を食べた後、俺はラビィさんに連れられ噴水広場に足を運んだ。

 コノハ先生は噴水広場のベンチに座って、道行く人たちを鋭い視線で見ていた。


「来たか」


 ゆったりと立ち上がる。


「お前の役目は目に映る全員を鑑定し、千面道化を見つけ出すことだ」

「わかってますよ」


 俺はストレージポーチからクリスタルエッジと虹の筆を出し、背負う。


「ラビィは背後を警戒しろ」

「承知しました」


 コノハ先生と共に1番通りを歩く。


「この通りが最も人が多い。ゆえに千面道化が居る可能性が高い」

「もし千面道化を見つけたとして、コノハ先生とラビィさんで無力化できるんですか?」

「舐めるな。俺があんな道化に負けるはずがないだろう。あと、勘違いするなよ。俺は奴を無力化する気なんてない。見つけ次第殺し、解剖してやる。奴の体には興味がある」

「……殺すのかよ」

「なんだ、なにか問題あるか?」

「野蛮だなと思いまして」

「善人のフリか。くだらん」

「ご主人様」


 ラビィさんが後ろから声を掛けてきた。


「どうした?」

「我々を尾行している人物がいます。どうなさいますか?」


 コノハ先生は歩くスピードも表情も一切変えない。


「いつからだ?」

「気配を感じ始めたのはイロハ様と合流してから。確信に変わったのはつい先ほどです」

「拘束しろ」

「……申し訳ありません。たったいま、索敵範囲から脱しました」


 コノハ先生は小さく舌打ちする。


「勘の良い相手だな」

「千面道化ですかね」

「可能性は高いな。ラビィ、次からは俺に確認を取らずに捕えてよし」

「承知しました」


 気を取り直してすれ違う全員の肌を見る。

 中々疲れる……常に首を動かし、周囲を確認しなくちゃいけない。そして一瞬で千面道化か否かを判断しなければならない。


 とてつもない集中力を使うな……。


 探索を開始して一時間、


「ぐっ!?」


 頭痛と眼痛が同時にきた。


「ちっ、もう限界か」

「仕方ないでしょう。コノハ先生はわからないと思いますけど、色の詳細を見切るのってキツいんですよ」

「なんだと――」

「ご主人様、近くに目薬を売っているファクトリーがあります」

「……なんだラビィ、まさかコイツのために目薬を買えと言うのか?」

「任務達成のためです」


 コノハ先生は大きくため息をして、


「足手まといが……そこのベンチで待っていろ」


 言われた通り、道端にあるベンチに腰を落ち着ける。


「ご主人様、私はどちらにつきましょうか?」

「俺について来い。この大通りで融合錬成を仕掛けるほど奴も馬鹿ではない」

「承知しました」

「すみませんラビィさん。目薬お願いします」

「はい」


 一瞬だが、ラビィさんが口元を笑わせた気がした。

 コノハ先生とラビィさんは目薬が売っているらしいファクトリーに向かっていく。

 俺は1人、ベンチで佇む。

 上を向き、目の上にラビィさんがくれたタオルを置く。


「すみません」


 と、女性の声が耳に届いた。

 タオルをどけ、声の主を見る。


「少し、道を尋ねたいのですか。よろしいですか?」

「っ!!?」


 俺は目の前の女性を見て、慌てて立ち上がり、距離を取る。


「……どこまでの道を聞きたいのでしょうか」


 俺は剣に手を添える。


「――千面道化殿」


 俺が言うと、女――千面道化はにっこりと笑った。


「もちろん、姫様までの道さ」


 千面道化は……おかしな挙動をとりだす。


「やっぱり、やっぱり、君にはわかるんだねっ! やった! やっぱり君だと思ったんだ! 1人目で当たりだよ!」


 千面道化は20代前半程の女性の体で、顔を紅潮させる。


「僕が、僕がわかるんだね! 君には僕がわかるんだ! ははっ、嬉しくて涙が出るよ!」


 なぜか千面道化は涙を流している。

 なんだコイツ……不気味だ。不気味で気持ち悪い。


「僕がどんな姿になっても! 僕が何者になっても! 君には僕がわかるんだ! 僕だってわかるんだ! こんなに幸せなことはないよ!!」

「なにを、言ってやがる? 俺はお前の敵だぞ……!」

「敵?」


 一瞬だった。

 一瞬で俺は距離を詰められ、首に手を掛けられた。


「――っ!!?」


 警戒していた。

 臨戦態勢だった。

 目でその動きは捉えられていても、体はまるで反応できなかった。


「そんな寂しいこと言わないでよ……僕と君はこの世で唯一の仲間だよ。何者にも成れるのに、何者にも認識されない」


 千面道化の手の合成陣が、俺に当たる。

 あっさりと――詰んだ。


「せ、千面道化……!!!」

「……僕ね、今凄く悩んでいるんだ……君を殺したくない。でも君と溶け合いたい……! どうしよう、ねぇどうしようか!? イロハ=シロガネ君っ!!」

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