魂は知っているのに
人生には、ときどき説明のできない出会いがあります。
好きとか嫌いとか、尊敬とか憧れとか、そんな言葉だけでは表せない。
なぜか気になる。
なぜか目が離せない。
頭では理解できないのに、魂だけが知っているような感覚。
今振り返ると、あの出会いは「恋」ではなく、
本当の自分を目覚めさせるための扉だったのかもしれません。
31歳になったころ、私の前にひとりの上司の方が現れました。
その方は、とても厳しい人でした。
けれど、遠くから見ているだけでも目を引くほど魅力的で、カリスマがあり、
どこか色気を感じる、不思議な光を放つ存在でした。
なぜか気になる。
なぜか目で追ってしまう。
意識しないようにしても、意識してしまう。
そんな自分に戸惑っていました。
近づきたい。
でも近づけない。
あと一歩踏み出せば、きっと何かが変わる。
関係も、空気も、もっとよくなる。
そんな感覚があるのに、身体がぶるぶると
震えるように緊張して、一歩が踏み出せないのです。
頭では落ち着こうとしているのに、魂だけが、
その人へまっすぐ向っていく。
その強い引力に、自分でも戸惑っていました。
その方を強く意識するようになってから、私の内側では、
不思議なことが起こり始めました。
指示されていることがあるのに、なぜか違うことをしてしまう。
やろうと思っているのに、身体が反対へ動いてしまう。
自分でも理由がわからない。
心はずっと落ち着かず、そわそわして、仕事にも集中できない。
頭では「ちゃんとやらなきゃ」と思っているのに、うまく噛み合わない。
コミュニケーションもすれ違い、職場でトラブルになることもありました。
あまりにも内側がざわついて、
「少し空気を食べてきます。」と
その場を離れたくなることもあったほどです。
あるとき、その方から、まっすぐにこう言われました。
「まじめにやろうよ」
その言葉は、胸の奥に深く刺さりました。
だって、本当は誰より真面目に向き合いたかったから。
ちゃんとやりたい。
期待に応えたい。
認められたい。
でも、自分の内側で起きているものを、
自分でも止めることができなかったです。
私の内側では、説明のつかない強いエネルギーが渦を巻いていました。
ぐつぐつと煮え立ち、
今にも噴き出しそうに膨らみ、
さらに身体の内側をビリビリと電気が走るように巡っていく。
落ち着かない。
じっとしていられない。
でも、まだ外へ出せない。
まるで、殻の中に閉じ込められた本当の自分が、
「ここにいるよ。早くだして。」と
内側から何度も叫んでいるようでした。
ーーちがう。わたしは、こんなもんじゃない。
まだ出せていない何かがある。
ほんとうの自分が、内側から強く、熱く、表へ出ようとしていたのです。
あの頃の私は、この苦しさの正体を知りませんでした。
ただひとつ確かだったのは、
自分の中で何かが目覚め始めていたこと。
そして、その変化はやがて、
私の人生を大きく動かしていくことになります。
魂が知っていたものとは何だったのか?
その答えを探す旅が、ここから始まっていくのです。




