灯籠祭 終幕
ここは歓楽街のとあるホール。その中で今、壮絶な戦闘の幕が降りようとしていた。
「くたばれぇぇぇぇえ!!」
「純粋な力比べもまた一興!!」
俺と天梁星が鍔迫り合いで信念をぶつけ合い、
「死ねやぁぁぁあ!!」
「くっ!」
シオンが絶体絶命の状況に追い込まれていた。男のナイフがシオンの命を断とうと迫っていた。
その瞬間……俺とシオンが目配せをする!
「ヨウタ!」
「シオン!」
次の刹那、シオンが小太刀を投げ、俺はシオンの足元に煙玉を投げる!
「何ぃ⁈」
「む⁈」
奴らは完全に予想外。次の瞬間煙玉が爆ぜ、俺は小太刀を掴む!
「テメェの命はここまでだぁぁぁぁぁあ!!」
俺は鍔迫り合いの中、その小太刀を奴の腹に叩きつける! いくら鎖帷子を着込んでいようと、衝撃は伝わる。
「ぐっ!」
その瞬間、奴に一瞬の隙が生まれる!
俺がその隙を見逃すはずがない。
「喰らってろ!」
俺は反対の手で刀を握りしめ、魂を込めて振り下ろす!
「俺の全力じゃぁぁぁぁぁあ!!」
「がはぁぁぁぁぁぁあ!!」
その一刀は鎖帷子さえものともせず、奴を完璧に断ち切った! それと同時、全ての衝撃を受け止めた刀が砕け散る。
◆◇◆◇
それと同時にシオンの足元で煙玉が爆ぜ、辺りが白煙に包まれる。
(チッ! だが服は掴んでる。このままその首斬らせてもらうぜ!!)
しかし男は止まらずナイフを振り抜く! ……だが、手応えはない。
「なっ⁈」
奴は急いでシオンを掴んでいた右手を引くが、手応えはない。
(私を見失うのは死と同義……)
その時、シオンの気配はまるで煙に溶けているように薄かった。
(何処にいやがるか分かんねぇ……)
奴はシオンを見失ったことで神経がすり減っていく。
その瞬間、奴の背後にシオンが音もなく現れる!
「さよなら……」
「チィッ!!」
奴も動くが遅かった……。
「ぐぅぅぅぅぅう!!」
シオンの一刀が奴の背中を深く切り裂いた! 奴が血を吐く。
「舐めんなぁぁぁぁあ!!」
しかし奴も踏みとどまってカウンターの横薙ぎを繰り出す!
「チッ……」
シオンもバックステップで離れるが腕を浅く斬られる。
(もう一度煙に潜って……能力使って仕留める!)
シオンは再び気配を消し、息を潜める……。
「どこにいやがんだ? 正々堂々来いよ」
しかし奴は全く動かない。間違いない、突っ込んできたシオンにカウンターをするつもりだ。
(奴の体勢……狙いは、横方向)
だがシオンは煙の中でも冷静に奴を観察していた。
(でも後ろも警戒している……なら、裏をかいての正面から行く! ドライブ1発動!!)
シオンは即決し、能力を発動。舞台の床が割れる程の踏み込みで一気に最高速度へ達した!
「死ね……」
シオンがそうして小太刀を振り上げた瞬間……。
「そこだぁぁぁあ!!」
なんと奴がシオンを睨みつける! そしてナイフを突き出した!
(なっ……躱せない……)
シオンはあの不意打ちが成功したことにより心の何処かで慢心したのだ……そしてそれを奴は見逃さなかった。
「ガハッ……!」
次の瞬間、奴のナイフはシオンの腹を貫いた……。血を吐き、体から力が抜けていく。
「シオン!!」
俺の心の中を嫌な悪寒が走る……だがいくら呼びかけても返事はない。
そして煙が晴れる……。
「手間かけさせやがって……」
奴はシオンの腹からナイフを引き抜いた。シオンが力無く倒れる。
「どうやら、2対1のようだな」
天梁星も立ち上がり、ゆっくり歩き出す。
(クソッ……小太刀一本でどうにかできる状況じゃない……)
俺はそれでも立ち上がり、奴らに向かい合う。
次の瞬間!
「ここで終わりじゃぁぁぁあ!!」
―ザンッ―
天梁星が吠えると同時、隣の男の首が落ちた……。
「……は?」
奴は信じられないという顔をする。
「あの程度で倒れたと思った?」
そしてシオンが俺の隣に来た。
「な、なぜ……」
奴はまだ狼狽えている。
「私達、普通じゃないの……だから動ける」
シオンはそう説明した。シオンの能力は「身体能力の一時的強化」、そしてそれは言わずもがな全身に適応される……そのため奴に腹を貫かれた直後から全身にダメージがあるのを承知で能力を使い、動ける程度まで回復したのだ。
「普通じゃない……? だとしても、殺すまで!!」
その瞬間、奴の空気が変わり俺達に向かって突っ込んでくる!
「チッ!」
俺は咄嗟にチャカを構えて撃つが避けられる。
「オラァァァァァア!!」
そして奴が強烈な横薙ぎを放つ!
「ぐぅぅぅう!!」
俺は何とか止めようとするが何とそのまま吹き飛ばされる!
「喝ぁぁぁぁあ!!」
それでも奴は止まらずシオンに向けて突き刺すような蹴りを繰り出した!
「ガハッ!」
シオンは能力の反動で動けず、腹の傷を打ち抜かれた! そのまま壁に叩きつけられる。
「ハァァ……ハッハァ!」
奴が何かから解き放たれたかのように笑う……そして再び歩き始めた。
「クソが……」
俺は立ち上がれない。しかし、この口角は上がる。
「お前の敗因はなぁ……周り見てねぇ事だよ!」
俺がそう言った瞬間、何処からか縄が現れて奴を縛り上げる!
「ぬぅ⁈」
「哭星搦手、影縛!!」
奴が上を見上げると、そこには居るはずのない巣流の姿があった!
「何故……」
「あの程度でこの巣流を止められると思ったんなら大間違いだ!!」
そのまま巣流が急降下しながら苦無を構える!
「哭星大手!! 影刃墜!!」
そして奴の脳天に苦無を深々と突き刺した!
「ぐっ……ガハッ……」
その一撃は重く、命に届いていた。
「くっ……最早ここまでか。強くなったな……坊ちゃん」
奴は頭から血を流しながら諦めた顔でそう言う。
「あなたが巨門星を殺し、出奔した時は驚いたよ……」
「アイツはそこまで強くなかったからな……」
「ふふっ、ここで死ぬは無念だが……あなた達は間違えた」
「間違えた? どう言う事だ?」
巣流が問いただす。
「「星は14が良いが、神には多い」この言葉の意味が分かる頃にはもう死んでいるだろうな……。お前達は死んでも俺を生かしておくべきだった……」
「んだと?」
巣流が聞こうとするが、奴はそれを言い切った後……静かにこの世を去った。
「どう言う事だ?」「俺にも分からん……」
場の空気が少しばかり重くなった時、
「ちょっと……支えて欲しいんだけど……」
そんな声が響いた。
「シ、シオン! 大丈夫?」
そう、シオンが放っておかれたままだったのだ。
「傷は粗方塞がってる。それよりも……外に」
「外? ……あぁ!」
シオンの言葉を聞いて僕はようやく思い出す。
「花火、行こう……」
そう、シオンとの花火を見に行く約束だ。
「分かった、行こう!」
そうして僕は傷を縛り、シオンを背負った状態でホールから出る。
日は沈み始めており、中央の広場に人が集まり始めていた。
「ここからならあそこが良い。屋根の上、よく見えるぞ」
巣流に先導してもらい、着いたのは広場近くにある建物の屋根の上。
「後、数分だね」
そうして僕たちも応急処置をして待っていると……音楽と共に花火が打ち上がった!
空中で爆ぜた花火は色とりどりの火で空を明るく照らし、まさに花のようだった。
「すごい……綺麗……」「去年もここから見たんだ。良い場所だろ?」「すごいや……」
3人で花火に見惚れている時、地上から光が昇ってくる。
(なんだ?)
僕が視線を下げるとなんと、大量の小さな灯りがゆっくりと昇って来ているのだ。
「これ……何?」
僕の質問に巣流が答える。
「これが灯籠。この世に帰ってた死者の魂を導くんだ。花火で送り出し、灯籠で導く。それが灯籠祭の終わり方だ」
「そう……なんだ……」
僕はそれだけ言って、目の前の光景に見入っていた。この街での血塗られた生活が浄化されるような気がしたのだ。
でも、この時はまだ誰も知らない……この灯籠が、僕達が地獄へ進む送り火となる事を……。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回はついに灯籠祭終了! と言う事で次回から新章です! 妖狐衆と研究所からの刺客との戦いがより派手に、より大スケールで描くつもりですので楽しみにしていただけると嬉しいです。
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