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青い春など春ではない  作者: 猫屋の宿
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emotions





「お、凪さんは今日はお一人ですか〜」


下足場で一人で待っていると突然大きな声が廊下に響き渡った。

俺の名前を読んだ方に向くと部活終わりの和人がいた。


「今日はっていつも一人じゃないか」


「何言ってんだよー。噂じゃお前後輩ちゃんと毎日二人で帰ってるらしいじゃねえかよ!俺が大会に向けて一生懸命部活してるって言うのにお前は……」


「噂になってるのかよ…」


部活終わりで疲れていると言うのに和人はふざけている。それほど体力に余裕があるのだろうか。さすがサッカー部の副キャプテンなだけあるな。


「まじさ。まぁ、お前が年下好きってのは知らなかったが」


「いやいや、好きだから一緒に帰ってるわけじゃないから。それに、後輩って言ったって佐藤だしな」


「佐藤…あーお前と同じ図書委員会の子か〜。あの子、見るからにお前のこと慕ってるよな」


和人は佐藤愛佳の事を知らないのだろう。アイツにとって俺の存在はからかいがある先輩の一人にしか過ぎない。それが分かりきっているから俺は後輩ではあるが一人の友達として関係を築く事が出来ている様な気もする。


「慕うも何も俺はからかわれてるだけで…」


「そのからかうってのが彼女なりの愛情表現かもしれないだろー?鈍感な男子は嫌われるぞ〜」


からかう事が愛情表現…。俺にはきっと導き出せない答えだろう。

経験がものを言う…とはこの事だろう。

からかうなんて言わば楽しむ為のおもちゃの道具であり、俺もその内の一つで代わりはいくらでもいる。俺に飽きたら、俺が卒業したら、また代わりを見つける。執着されない関係が一番楽だから佐藤とは自然に会話をする事が出来ていると言うのに……本当に愛情表現ならば?

と言ってもあくまで和人がそう考えているだけで、それほど気にする必要もないが…。


「…和人こそ。そう言う色恋沙汰は無いのかよ?」


「そーだなー。無い事はないかもしれないがやっぱりそんな事も無いこともない…だな」


「何だよそれ」


相変わらず和人はひょうきん者だ。

俺には真似できない巧みな返し。言わなくても和人は様々な経験を俺の何倍もしているはずだ。しかし、俺の質問にあえて答えず濁してきたと言う事はあまり聞かれたくなかったのだろう。


「んじゃこの後予定あるから先に帰るわ…あ、もう一つだけお前に伝えたい事があったんだったわ」


出口に向かって歩んでいた足を止め、再び俺の方へ体を向け和人は真面目な顔をして言った。


「上坂さんの事、ちゃんと見てやってくれよ?それじゃ俺はお先に帰るぜ!」


気づいた時には和人の姿はもうなく俺はまた薄暗い廊下で一人きりになっていた。



翌日



今日も俺は妹にガン無視を決められながら朝食を摂り、学校へ向かった。

玄関を出ると少し厚みのかかった雲に覆われながら僅かな隙間から太陽の陽の光が差し込んでいる過ごしやすい季節感であった。

学校へ向かう途中、俺の頭の中は昨夜のことでいっぱいであった。

和人に言われた言葉の理解が出来ておらず、自分が何をするべきなのか分からなかった。

見てやってくれ…上坂の何をどのようにして見ると言うのか。

実は上坂が乱暴な人で、時折人気のない場所に生徒を誘い込んで恐喝でもしていると言うのか。それとも、授業中も食事中も上坂の事を見続けろと言う事なのか?

和人の言葉はいつも端的に済ます為、言葉が足らない事がよくある。

しかし、あれだけ真剣な目を向けられたまま言われれば、和人の言葉を信じるしかないと思えた。


今日もまた体育祭準備が始まる。

しかし、教室に入ると驚きの光景が待っていた。


「ね〜上坂さん?今日この後さ暇?私達と遊びに行かない?」


「…今日ですか。せっかくの誘いですが、本日は予定がありまして。ごめんなさい」


「……。そっか!上坂さん勉強とかで忙しそうだもんね。ごめんね〜無理に誘っちゃって。またね!上坂さん!」


どうやら上坂に話しかけているのは俺にも話しかけていた金髪女子だった。

上坂に遊びの誘いをしている様に見えたが…あの二人はそんなに仲が良かっただろうか。女子の中にもさほど仲良くない相手に対して遊びに誘うタイプもいるが…上坂に話を持ち掛けたところで断られる事は百も承知なはずだ。

本来ならば、上坂に遊びの誘いをしてくれた事、言わば友達が出来たことを喜ぶのが正しいのだろうが……上坂の表情は強張っていた。


「上坂さん、おはよう」


「…おはよう…ございます」


「たまたま見ちゃってて、さっきは誰かと話していたみたいだけど。知り合い?」


「知り合い……そんなところです」


何だろう。ここ最近俺と上坂の間に距離があるように思ってしまう。

俺は少なくとも上坂と仲良くなりたいと言うスタンスで話をしているが…彼女は俺と話す事を苦痛だと思っているのではないかと思わせる雰囲気を醸し出していた。


「上坂さんの方の設営は順調?」


「…うん」


「俺の方は−」


「ごめんね。私もう行かなきゃいけないから…また後でね」


「…また」


逃げるように去っていく上坂を俺は止める事は出来なかった。





「凪!…おーい凪!」


「…!?デカい声出すなよ陽翔。耳が死ぬ」


「ごめんね。凪が何回呼んでも気付かないから…。凪?どうしたの?」


「……」


「…体調悪いの?」


「なぁ、少し話をしたいんだけど…時間もらってもいいか?」


「ハナシ?」




「えーーー!!!気になる女子に嫌われちゃったの!?」


「ちょっと待て!?それは俺の知り合いの事だからな!知り合いからそう言う相談をされたんだけど、何て答えたら良いか分からなくて…」


体育祭の準備中にこそっと抜け出し、誰も来ないであろう中庭のベンチに座っている。ここはやはり落ち着ける場所だ…いつもならば。

やっぱ陽翔にこの事を話すのはダメだったか?コイツは誰かに告げ口する様なプライバシー全開な奴ではないからいいと思ったのだが。


「知り合い…ね。僕に相談なんて凪らしくない、けど僕にも手伝える事があれば全力で頑張るよ」


「ありがとう助かる。なるべく早くその知り合いにも返してあげたいしな」


「まずここでは相談者をAさん。気になっている事をBさんにしよう。その上でそもそも、どうしてAさんはBさんに嫌われたの?もしくは嫌われたと思ったの?」


「そうだな…確か気づかないうちにAさんがBさんと話している時にあまり笑わなくなりいつしか淡々とした口調になっていたから嫌われたんだと言っていたな」


想像以上に陽翔がこんな訳もわからない相談に乗ってくれて何だか申し訳なさと嬉しさが入り混じっていた。


「気づかないうちに……本当にそんなのかな。そんなにも対応が変わる事なら何か予兆があったはずだよ」


「予兆…例えば?」


「そうだね…例えば好意的に接していたのは好きと言う感情があったけれど、他に好きな人が出来たとか、Bさんが実はAさんをからかう為にわざと好意的に接していたとか…」


「いくらなんでもそれは条件が絞られすぎじゃないか?」


「仮定の話をするにはある程度状況を絞らないと話が進まないからね。けれど、Bさんがコミュ力皆無、友達なしの場合だったり、コミュ力抜群、男子友達が多いとかだったりするとまた話は変わってくるよ」


「Bさんの性格は陽翔が言った前者の方だな。誰とも自発的に会話を行わない人だと言っていた」


「…なるほど。そうだね僕には今二つの考えがあるんだけど…一つはハッピーエンドな結末。もう一つはバッドエンドな結末」


「どっちから聞きたい?」





続く。

















最後まで読んでいただきありがとうございます。

次の更新日は火曜日となります!

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