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青い春など春ではない  作者: 猫屋の宿
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さざ波の兆し

第四部〜第六部分までの加筆修正を行いました。




こんなにも憂鬱な朝は久しぶりだ。

昨夜の事が頭から離れずにいるせいだろう。俺がここでダラダラと生きていれば娯楽であるパソコンゲームが出来なくなってしまうんだ。

今の俺という人生の大半を共に過ごしている言わば恋人の様な存在が無慈悲に奪われようとしているのだ。


「はぁ……」


「ドンッ!!」


「え!?何だ…今の音は」


ネガティブ思考に陥っていた所、部屋の扉が誰かに叩かれた様な鈍い音が響き渡った。


「サッカーボール?」


扉を開けると少し空気の抜けたサッカーボールが置かれていた。

理解不能な出来事に現実ではなく、幻想を見ているのではないかと疑ってしまう程だった。

二階から降りてリビングに行くといつもの様にひなだけがそこにいた。

と、言う事は先ほどの仕業はこいつで間違いなさそうだな。

しかし、どうして俺の扉にサッカーボールを投げつける行動の理由が全く分からない。


「おはよう。ひなは今日も相変わらず学校に行くのが早いな」


「……何?話しかけないで。あと私はもう出るから戸締り」


「え、あ、ああ分かった。気を付けて…」


こんな関係で今後上手くやっていけるのだろうか。解決策の見つからないこの不安はとても心身にくるものがある。

それにしても今日のひなの様子はいつも以上に反抗的であった。


「話しかけないで…か。こう言うの面と向かって言われると辛いな」




「はぁ…私の馬鹿…」




教室に付くと、月曜日と言うこともあってかまだ教室内にはそれほど生徒が居なかった。


「上坂さん。おはよう」


「あ…おはようございます」


何だかかなり長い間会話をしていない風に感じてしまうのは、どうしてだろう。月日が経った分、上坂との会話が凄く楽しいと思ってしまう。


「猫のストラップ…」


「…ん?あぁ、これ、可愛いでしょ」


カバンにつけていた三毛猫ストラップを見つけた途端、笑みを浮かべながらストラップを撫でている。


うん、可愛い。


純度100%のこの笑顔に俺は無茶振りを言われたとしても断れる気がしないな。

そう言えば上坂も通常クラスから昇格してきた実力を持っているんだし、周りからもだいぶ頭が良いと言われている。一度定期考査について聞いてみようと思う。

勉強の事であれば、上坂さんも会話をしてくれるかもしれない。


「あの、上坂さんは次の試験の勉強とかしてる?」


「え?試験って定期考査の事?」


「そうそう!流石にまだ時間もあるしやってな−」


「もちろん対策しています。蒼井君もですか?」


「え、ああ…いや」


上坂は俺の反応にお構いなく追い討ちをかけてきた。


「体育祭もあるんですから、むしろこの時期に取り掛かっていないとですもんね。ですが、1位は譲りませんよ?」


「いやいや…俺馬鹿だからさ。前のテストだってクラス最下位なんだよね…ハハ笑えるだろ?」


……?

先程までの和やかな表情が一変し、俺を蔑んでいるかの様な目つきに睨まれて体に寒気が走った。


「…そうなんですか」


もしかして…俺が勉強のできないアホだと知り幻滅してしまったのだろうか…。

私はこんな出来損ないの為に時間を割いていたなんて最悪。もう声も顔も聞きたくも見たくもないわ。と言っているみたいだった。





「どうしたー?大丈夫かー?」


「…ああ何とかな…」


机にうつ伏せになっている所を和人が心配そうにしている。ありがとう、和人。こんなアホにまで構ってくれて……。何だかいつもは騒がしい奴だと思っていたがいつも話しかけてくれている和人がカッコよく見えた。


「今日はやけに静かだと思ったが…何があったんだ?」


「…何もない…と言いたいが…」


「和人は馬鹿な俺と一緒にいてなんとも思わないのか」


「何だよ急に。別になんとも思う訳ないだろ」


「仮にだ。お前が馬鹿で運動音痴でボッチだろうが俺はお前の友達には変わりないさ」


「和人…案外優しいよなあ〜」


運動音痴でボッチという部分は余計な事だとは思ったが、こんな言葉を堂々と言える事は凄いと思う。

俺は例え思っている事があっても心の中に閉まってしまう。本当の事を告げた時相手にどんな風に思われるのかが怖いからだ。


「で?何だ…そんな事聞くなんて…」


「いや…俺って容姿的には頭良く見えるらしいんだ。だから、テストの話になった時に俺の順位を言うと…失望された様な目を向けられるんだよ」


「…何だよそれ!あー腹痛いわ」


「そんなに笑うなよ。俺は真剣に言ってんだから」


「ごめんごめん。お前がそんな事気にするなんて思ってもなかったから、つい…」


そんなに俺がこういう事を気にするのが意外だったのか、ゲラゲラと腹を抱えて笑っている。


「お前…少し変わったよな」


「変わった?俺が?」


「ああ。だってお前は今まで自分の成績を気にした事なんてあったか?」


「いや…特には」


「だろ?お前は勉強、運動、恋愛に興味が無かった変人だったのに、気付けば勉強に対して意識が向いている。あとは、運動と恋愛だな!」


「俺が……?」



一年ほど前だろうか…真剣な眼差しをした和人に言われた事がある。


「学生のモットーは青春を謳歌する事!これに限る。今のお前には難しいかもしれない…だが、一つ言っといてやろう。真の青春を謳歌する者は部活で活躍して彼女と一緒に勉強を頑張る者だ。凪、お前は運動は残念だが諦めるしかないが…恋愛と勉強はチャンスがある」


「好きな人が出来れば勉強の痛みに耐え抜く事なんて朝飯前よ。まぁ、今は分かんなくてもいい。お前に好きな人が出来ればこの意味が分かる」



俺に好きな人はいない。

この気持ちは一生変わる事のないものと思っていたのだが、心の隅の奥深い所で抗おうと、否定しようとしている気持ちが湧いている様な気もする。


もう()()()()()()()()と思っていたこの気持ちは…





続く。




























最後まで読んでいただきありがとうございます!

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