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青い春など春ではない  作者: 猫屋の宿
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企み①

第1部分から13部分までの加筆修正を現在行なっております。ストーリーに大きく影響を及ぼす事は無いと思いますが、修正後のお話も読んでいただけると幸いです。



体育祭まで残り二週間


気づけば二週間に一度ぐらいの頻度で陽翔とくるみと俺含め三人でファミレスに集まり勉強会を開いていた。

勉強会と言えるほど勉強オンリーではなく雑談を挟みながら行っていた…と言うより、勉強よりも雑談の方が多いように感じている。


「遅い!」

「おはよう凪」


「ああおはよう」


集合時間が朝10時は早すぎないだろうか。いくら8時に起きても、布団から抜け出すのに一時間、ご飯を食べ、着替えて30分、さぁ行くかと言う気持ちになるまで30分…家から自転車で20分かかってしまい間に合わない。俺は休みの日は文字通り身体を休めておきたいんだ。にも関わらず、朝っぱらから勉強モードになんて全くならない。


「それじゃあ今日も頑張ろう!」


「ほら凪、あんたもやる気出しなさいよ」


「俺の事は気にしなくて良い…くるみは勉強に集中してくれ」


「はぁ?あんたどうせ今日も眠いから寝る、とか言うつもりなんでしょ!」


「まあまあ、凪は慣れない体育祭の仕事で疲れてるんだから…」


「そんな事言うなら陽翔だって疲れてるでしょ?」


「僕は元々運動していたおかげか体力はある方だからね。凪は万年帰宅部で休みの日は基本家に篭りっぱなしなんだから…仕方ないよ」


何だか陽翔の擁護が惨めなものに聞こえてきた。


「ふ〜ん…なるほど…。ねえ陽翔?自発的に行動する事を嫌う凪がどうして一番大変な体育祭の係をしているのか…不思議じゃない?」


「確かに、言われてみるとそうだね。他人から与えられたものを最低限こなせばそれでいいって散々モットーの様に言っていた凪からは想像できない…」


「別に俺が体育祭の係になっているのは、半分は先生の強制による無茶振り。もう半分は誰も立候補しないから先生が俺を逆指名してきた…だから俺は仕方なく立候補したんだよ」


「そうだったんだね。凪が何だか成長していて嬉しいよ」


「ちょっと待って!そんな理由で…納得出来ないわ。私には何か訳がある様に思えるのよね。」


「訳も何も、俺だって体育祭の係なんて面倒だからな、最初はする気なんて微塵もなかったさ」


それでも納得する様子のないくるみを俺はどうすれば良いか頭を抱えていた。

俺が体育祭の係に立候補する理由として先程述べた内容は間違いではない。事実ではある。

なぜなら、先生による誘導が立候補のきっかけとなった根本的理由たからだ。

でもなぁ…確かにその他にも理由があったのではないかと問われれば、すぐに他に理由はない!とは言いきれない自分がいるのも事実である。


「だったらどうして断らなかったの?」


「だからそれは先生が−」


「先生のことじゃない。私は凪のことが知りたいの。だって、いつも通りの凪ならどんな理由があっても断っているでしょ?」


「たしかに…少なくとも去年までの凪ならそうかもしれないね。うん…僕も疑問に思うな。どうして凪が先生から言われた程で承諾したのか…」


俺たちの会話を傍観していた陽翔まで俺に対して疑いの目を向けてきてしまった。

しかし、コイツらがここまで気になってしまうのも仕方ない事である。なんせ俺はクラス委員長から言われても、図書委員の委員長から言われても俺は断る事を続けていた。図書委員に関しては結果的に副委員長になってはしまったが…。

しかし、副委員長を承諾した理由は楽だったからだ。他の委員会は分からないが少なくとも委員長は責任持って職務に励ま必要がある。それに比べて副委員長になると実質存在意義としては委員長のサポートぐらいしかなく、それが結構楽であったのだ!


「高校生活最後だし…少しくらい振り返りのある高校の思い出を作りたくなったんだよ…」


陽翔は感心しているのか俺の言葉を受け止めてくれていたが…くるみは全く信じてくれていなかった。コイツは何を言っているんだという軽蔑さえ感じた。


「そうなんだね…ほらやっぱり凪はただただ成長していただけなんだよ。くるみもそんなに疑わないでさ凪の言っている事を信じようよ」


ナイス陽翔。心の中でどうかこのまま何も起きずに事が進んでくれと祈っていたが…。


「……」


明らかに不満がっているくるみを俺は直視出来なかった。


「そ、それじゃあ改めて今日も頑張ろう!」


気まずい空気感の中、本日も勉強会が始まった。

俺は学校から配布されたテキストをカバンから取り出した。今日の科目は社会−日本史だ。目の覚めていない朝には暗記重視型勉強が俺には合う。数学や理科の計算などただでさえ苦手だと言うのに身体が起きていない時間に取り組んだ所で何も得るものはない。

くるみも日本史を、陽翔は予備校から貰ったのか見慣れない参考書を開いている。


「なぁ陽翔。お前の参考書って予備校のか?」


「うん、そうだよ。今取り組んでいるのは数学なんだけど…三次関数の変曲点の求め方に参ってるんだよ」


なんだなんだ?三次関数?変曲点?俺には聞き馴染みのない言葉ばかりで理解が追いつかない。言えるコメントは一つのみ。


「何か難しそうなのやってんだな…」


「なに陽翔こんな問題も分かんないの〜?」


「え、くるみお前分かんのかよ…まじか…」


「是非教えていただきたいです!お願いします!」


冗談でも言って俺達を騙そうとしているのだろうと思っていたが、どうやら本当に数学の才能があるらしい。

なぜだろう…俺の周囲にはアホそうに見えて飛び抜けた学力を隠し持っている者が沢山いる。という事は?そんな俺自身にも何か飛び抜けた学力があるという事なのか?ただ今は隠れていてその正体が分からない…フッ。

中々面白いことやってくれるじゃないか。


「え…何笑ってんの…怖いんですけど…」


「あ、あぁごめんごめん」


今日の俺は何か口を開ければ開けるほど、くるみに不快感を与えてしまうらしい。時々今までもネタというかノリで俺をいじってくる時はあった。

しかし、今日の様にネチネチと言うか、永遠に続くのではないかと予感させる程になるとネタやノリの許容範囲内なのか曖昧な所であった。

そう思ってしまう程、今日のくるみは真剣な表情であの時俺に問いを尋ねていたからた。


「くるみすごいね〜。ほんと、教え方上手だよ」


くるみの指導力に陽翔は賛辞を送っていた。確かに聞いていると、陽翔の理解度を適宜確認し、理解が及んでいないならばもう一度詳しく解説を行い、再度確認をするなどただ答えを教えるのではなく、答えを導くその過程を覚えさせようと重点を当てていた気がする。


「ふふーん。ほら〜凪も誉めていいのよ?」


「わーすごいすごい。流石くるみさん」


「むー。凪には教えてやらないんだから!」


くるみは容姿端麗な上に頭も切れる俺にとっては高嶺の花の様な存在であるのは認めざるおえない。

きっと、俺がくるみと幼なじみでなければ一生関わる事は無かっただろうな。こうして見ていると、くるみと陽翔はお互いステータスは互角、俺とは違い高校でも共に時間を過ごしていたとなると、付き合っていてもおかしくはない。

いつも席配置は俺が一人で座り、机を挟んだその先にくるみと陽翔が隣同士になり座っている。

よくよく考えてみるとこれは怪しいな……だからと言って、疑う程の判断材料がある訳でもないんだが…身体が勝手に反応していた。


「今度さ三人でどこか遊びに行かない?こう、ショッピングとか映画とか水族館とか!」


「たまには受験生にも息抜きは必要だし、僕はいい提案だと思うけど」


「あー俺はパスで。だから二人で行ってくれ」


「…またぁ?凪って遊びに誘ってもいつも断るよね〜…。そんなに外に出るのが嫌いなの?」


俺が断る事を予測していたのだろうか、くるみは俺が遊びを断っても顔色変える事なく会話を進めていた。


「外に出るのが嫌なら今日だって勉強会には来ない。ただ、まぁ…そう言う商業施設だったり娯楽施設に行くのが苦手なんだよ」


「へぇ〜そうだったんだ。私知らなかった」


「僕も知らなかったな。確かに、凪と最後に遊んだ記憶って随分前だしその時も駄々をこねていた気がしていたけど」


「あの時と比べれば、随分と外の環境にも慣れてきてはいるんだけどな…まだのり気にはならないんだ」


と言う嘘を俺はついていた。

商業施設だろうが娯楽施設だろうが少し前は妹とも一緒に訪れていたし、

高校生になっても時々訪れていた。

こんな冗談を言っている理由は端的に言うとくるみと陽翔の二人で行ってほしいからだ。そこに俺の存在は邪魔でしかなく、くるみ達も実際のところはそう思っているに違いない。

きっと、俺は断るだろうと言う計算の元、この場でこの話を持ちかけて来たのだろう。俺が断れば二人で行っていても何もおかしくはないからな。


「……」


この嘘には前にいる二人にもかわす事は出来ないだろう。


「そうだったんだね。ほら、くるみも凪がこう言ってるんだからさ?」


「…分かった」


全く納得のしていない顔ではあるがとりあえずこの話を上手く丸め込める事に成功したようで一安心だ。

今日はいつも以上にくるみに疑われてしまっている。もしかすると俺に対して疑心暗鬼に陥っている可能性があるかもしれない…。


「…あ、もうこんな時間だ」


「陽翔、今から予備校に行くの?」


午後1時を過ぎ先ほど昼ご飯を食べ終わり勉強に取り掛かろうとしていたタイミングではあったが、陽翔はこれから予備校で午後の講義がある為片付けをしている。


「ごめんね二人とも。いつもすぐに僕だけ帰ってしまって…」


「陽翔が謝る事じゃない。予備校、頑張ってこいよ」


「うん。ありがとう」




……。


…。


何だか気まずいな…。

今目の前に陽翔はいない。いるのは…ご機嫌斜めなくるみだけだった。

お互いの視線は机に置いてある参考書に向けられているはずなのに、どうしてか俺の事を睨んでいるんじゃないかと思い込んでしまっている。

違和感なく顔を起こしてくるみの方を見上げたが、どうやら勘違いのようであったが…このままでは勉強に集中できない。

ふと考えてみれば、二人で勉強なんて勉強会を除くと随分前の事だ。

中学二年生の頃に数学の問題に苦戦していた俺は、放課後居残り勉強をするよう強いられていた。その時だっただろうか…くるみが何故か俺の勉強に付き合ってくれた記憶がある。

けれど…よくよく考えてみると、くるみが俺の勉強の手助けをするなどあり得ないのだ。他の生徒の手伝いをする事はあっても、俺の勉強に時間を割くなどこれまで一度もなかった。

考えられる理由としては、くるみが上機嫌だったから、俺がくるみに勉強を手伝うよう言ったから…?

何か重要な部分が分からなくなっている気もするが、今更過去の事を思い返そうとしてもどうしようもないだろう。


「あー!もう!」


「ど…どうしたんだ?」


「何か今日はこれ以上勉強出来ない気がするの」


「はあ、それで……って…帰るのか?」


急に開いていた参考書を閉じてカバンに直し、早く帰りたいオーラを俺に見せつけている。

くるみもこの空気感に耐えられなかったのだろうか。


「帰るのかって…凪も一緒に帰るのよ」


「まぁ、たまには早く切り上げるのもいいな」


折角の休みの日に勉強ばかりするのも勿体無い。今日はこれから家に帰りのんびりと時間を過ごせるんだ…。そう思うとどこから湧いて来たのか分からない嬉しさに身体が興奮していた。

取り敢えず今日は、途中まで読んでいる漫画を読んで久しぶりにゲームでもして……こんなにも有意義な時間を送れるなんて最高な日だ!


「…って、ちょっと!何帰ろうとしてるのよ」


「いや、だって帰るってくるみが言ったんじゃ」


あーもう!と、拳に力をいれこちらに近づきてきた。


「ちょっと付き合って欲しい場所あるんだけど」


「あーいや俺は今から……」


どうしようか。この場合の選択肢はどちらが正しいのだろうか。

①用事があると言って断る

②くるみの付き合いに同行する

断る事は簡単ではあるが、本来ならば午後も勉強会の予定であったので用事があると言う理由は少し厳しいものがある。

逆に用事あると言って断れば、くるみを避けていると思われかねない。


はぁ…これは詰みだな。

断れば、くるみの疑心暗鬼度がさらに強くなるだけだし、ここで同行すれば多少は消えてくれるだろう。



「…仕方ない。行こう」




続く。









最後まで読んでいただきありがとうございます。

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