デート……?
「今日の体育祭の準備はこれで終わります。皆さんお疲れ様でした」
「お疲れ様でしたー」
19時を過ぎて空はすっかり暗くなってしまっている。
「蒼井君、また明日」
「うん。上坂さんまた明日」
笑顔で手を振りながら教室を出ていった上坂は俺には幸福を呼ぶ天使そのものであった。
しかも、また明日と言われてしまった!これにはきっと…
蒼井君!また明日(も会いたいよ)的な意味が隠されているに違いない
これは俺なら私の気持ちに気づいてくれるよねというメッセージも込められている!!
それに、どうでもいい男相手に愛想良く振る舞う理由が見当たらない。
女子と言うのは自分にとって無価値な人間には悪い意味で素を見せるものだ。逆に価値ある人間には気を使い、相手によく思われようとしてくれる。そう言う生き物なのだ!!
(※蒼井凪による偏見であって、こちらの言葉には何も根拠はなく信憑性もありません。ご理解の程よろしくお願いします。)
「これはもう…ハハハハッ!!」
「凪先輩!!おつかれ…様です。どうしたんですか?おかしくなったんですか?お願いですから、何かあったと言って下さい」
この気持ちの悪い生物はなんだと言う目をしている。
俺の一つ下の後輩である佐藤愛佳も俺と同じ設営係のメンバーであり、委員会の中ではよく話すのたが体育祭の準備期間中はこれが初めての会話である。
「何でもないよ!それじゃあな!気をつけて帰れよー」
「ちょ!ちょっと待って下さい先輩!」
「ん?どうしたんだよ?」
俺は今すぐにでもこの場から去りたかった。あんな子供の様な妄想をしながら自分でも分かるほどの気持ち悪い、不快な笑みを浮かべていたのを見られたのだ。
すぐに家に帰り暖かい布団の中でひっそりとこれから一生を過ごしたい気分だった。
「一緒に帰りませんか??」
「は!?」
佐藤は急にどうしたと言うのだ。
どうせいつもの様に意味不明な事でも言うのかと思えば、俺と一緒に帰りませんかって…
「まぁ…意味不明な事ではあるが…」
どういう意図があって発したのか全く分からない。何か帰り道俺に意地悪でもしようと思っているのか?何かこう落とし穴があったり…仕掛け人でも雇って俺を脅そうとしたり……怖い。なんせ、佐藤ならやりかねないと言うのがさらに怖い!!
とは言っても…今さら罠にはめられただの言っても仕方がない。
それに、後輩からの頼みを理由もなしに断れるほど俺は冷血な人間ではない。
ここはとりあえず佐藤の悪戯心をくすぐらない様に紳士な先輩を演じてみせようじゃないか。
と、言ったものの下足場の前で待っていろと言われたがなかなか佐藤は姿を見せない。
「……」
春の終わりが近づいていると言っても夜になると少し肌寒い。
いつもはガヤガヤしている下足場も今は人っ子一人いなく、とても静かな空気が流れて自然に何だか心が落ち着いている。
この学校にもう二年以上通っているが、学校にこんなにも居心地のいい場所があるなんて知らなかった…。
「凪先輩!!お待たせしました」
「お、やっと来た…か。って、その大荷物なんだ?」
目の前に学校バッグをからい、両手の手をプルプルと震わせながら大きな巾着袋を持っている佐藤が現れた。
「その…私たちのクラスの体育祭で使う備品です…うぅ重い、、」
「……え?凪先輩?」
「なんだよ?俺がこんな事するのが信じられないって顔してるな」
あまりにも重そうというか辛そうなので重そうな方を一つ佐藤の手から奪った。
ただ、俺の善意に佐藤は疑いの目を向けていた。
「だって…凪先輩はそう言う女の子の気遣いとか面倒だと思ってる人かと…」
「いやいや、流石に俺だってそのくらいの気遣いぐらいできるわ!」
「そうなんですね。凪先輩の事初めて先輩だと思えました!!」
「そうかそうか……は?初めてって…佐藤、お前いままで俺の事どう思ってたんだよ…」
「そうですね…おも−じゃなくて…う〜ん…何でしょう?分かりません」
「おい、今おもちゃって言おうとしてなかったか?」
「ン?ナンノコトデスか??」
「フッ…面白いな佐藤は」
全くもって誤魔化しきれていない声と表情をして自信ありげに返答している佐藤の姿に思わず笑い声が溢れた。
「……ねぇ…先輩」
わずかな沈黙の後想像できない低い声で問いかけた。
「ん?どうした?」
靴に履き替え、玄関を出ようとした時、佐藤が神妙な面持ちで俺を見つめていた。
「私と……今からデートしません??」
続く。
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