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訪れるもの  作者: 須永独歩
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第二章 出会い

 十代後半から二十代前半に見える男は退屈そうに商品棚の一点を見続けていた。そんな時、突然自動ドアが開く。入ってきたのはおそらくは白だったYシャツが赤くなっている三十代前半の男だった。僕はそんな姿の人間を見たのは初めてだった。だが、マニュアル通りに進めようと思い最初の挨拶をしたがこの状況が怖く思えてきてたどたどしさ満載の挨拶になってしまった。これじゃいけないと思い相手が話し始めてきたので元気よく返事を返すと相手は僕に奇怪の目を向けてくる。それもそうだ、先ほどの挨拶をした人間とは思えないほどの声の張り方だったのだから。

 話を聞いていくとどうやら相手はここがどこなのかいまいち分かっていなかったので、少し考え真実をありのまま伝える。すると、相手は泣き崩れた。よく見てみると左手の薬指には指輪がはめられているのが分かった。この人は僕と違って現世に家族がいる。そんなことを思うと声をかけざるを得ないような気がしたので”大丈夫ですか”と声をかけ相手もそれに応えてくれたが、突然”うわっ”と大きな声を上げた。驚いて呆気にとられていると相手は焦りながら。

「血、血、なんで血が付いてるんですか。」と僕に聞いてきたが、僕は知る由もないので必要であろう情報をできるだけ事細かに伝える。

「いいですか、落ち着いてください。あなたに何があって死んだのかは分かりませんが・・・。」

「事故です。事故!私が家から会社に向かっている最中に大きな道路があって、そこを横切ろうとしたら大型トラックが突っ込んできてその後・・・。あっ、すみません。」少し相手は落ち着きを取り戻していたが、それでもまだ焦りの色が見える。

「とにかく、うちには服も売ってあるのでそれを買って着替えましょう。」

「えっ、買うんですか。」僕のいつものクセが意外にも相手の冷静さを取り戻させた。

「はい。買って着替えましょう。」

「そんなの、どうやって買うんですか。」初めての人はみんな大抵そう言う。

「あなたの遺産から引かれます。」

「遺産って、いくらあるのかも分からないのに。」

呆れとバカバカしさが混じったように言ったがそう言うのも無理はない。

「それでは、今からお調べします。」僕は相手に名前と生年月日を聞く。それを1980年代のような大きなパソコンの画素の荒い画面に打ち込んでいった。

 相手の名前は、井上優斗。1985年8月21日生まれだということを情報としてパソコンに入力した。

「もうすぐで出るんで、もう少し待ってください。」

「別に、もう時間なんて・・・。今はあってないようなもんなんだから。」

意気消沈する井上さんにかける言葉が見つからない。時間にしたら10秒ほどだったのかもしれないが体感でいえば永遠にこの時間が続くのかと思った。

だが、そんな時間を終わらせたのはパソコンの電子音だった。

「あっ、出ましたよ。井上さん。」

「えっ、あーはい。いくらですか。」

「5020万円ですね。」井上さんは、ぽかんとした表情を僕に向けてきた。

「それは、高いんですか。」

「平均より少し高めですけど、どうしてですか。」

「いや、私には家族がいるんで少しでも残るなら残してあげたいなと思いまして。」

そう言うと井上さんはその場で座り込み深いため息を一つついて、僕に突然質問してきました。

「あなたは、なんでここにいるんですか。」

 僕は今まで聞かれてこなかったから答えてこなかった。でも、いざ聞かれると答えたくなかっただけなのかもしれない。

「僕は・・・僕には、一人の人の命を奪ってしまったという事実があるからですかね。」僕は井上さんに過去を語った。

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