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訪れるもの  作者: 須永独歩
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第一章 死

 突然、訪れるものというのはいくつかある。ゲリラ豪雨や転校生や曲がり角から走りこんでくる眼鏡をかけた地味な女子など色々ある。人は幸せなことが訪れることを願いながら生きている、私だってそれを願いながら生きている。だが、私の眼前には今、大型トラックが近づいてきている。最後に訪れたのは「死」だった。

 どうなったのだろう、体の中から聞こえてきた骨が打ち砕ける音が鼓膜にこびりついている。目を開けると一面が赤色になっているかもしれない。いや、そもそも目など開かないだろう。ふと私は思った。なぜ、こんなことを思ってしまうのだろう。というより、なぜこんなことを思えてしまうのだろう、思考は残っているのか自分は生きているのか。頭の中で疑問を生んでは自己完結するという何とも無駄な時間が10分は過ぎたころ、あることに気が付く。

 地面の感触や風が確かに私の肌や体に感じられる。しかも、その地面もアスファルトなどという人工的なものではなく、草原のような草地に感じられる。おびえながらもいつも起床するときのようにゆっくりと目を開くと、その場所は確かに草原で空模様は快晴だ。ただ、何もない。ゆっくり起き上がり周りを見渡してみても草原と空が広がるばかり。もしかしてここは天国なのではないのかと、そして、私はもう死んでしまったのかもしれないと思い始めた。

 私は何かないかと思い歩き始めた。話で聞いたり想像していた天国とはイメージが違った、これほどまでに空虚な場所なのかと思い少しずつ足取りも重くなっていく。

 20分は歩いただろうか、ふと目線を右の方にやると川が流れているのが分かり「川があったー。」とここにきて初めての言葉を叫び、ここにきて初めて駆け足をした。駆け足をして初めて気づいた、なんて走りやすい場所なのだろう川までの距離が一瞬にして0になる。

 こんなにも嬉しいものなのか、何もないと思っていた場所に川があるというだけでこんなにも心は満たされるのか。ありがとう、川。川・・・川・・・川!?私は「川!?」と叫び、その場で立ち止まった。改めて考える、自分の仮説通りなのであればここは天国で目の前にあるのが川だという危ない状況。なぜ、死んだ人は三途の川に入ってしまうのかが分かり天国という場所の底知れぬ恐ろしさを知ったような気がした。

 私はまた辺りを見回す、するとこの空虚な世界にはあまりにも似つかわしくないような電飾のようなものがあり、私の体はなぜだかその電飾へと誘われていく。近くにきて分かった、そこには看板もあり看板には大きな文字で某コンビニエンスストアにインスパイア―を受けているような店名が書かれている。

 ”ヴ―ン”自動ドアの開く音を聞いて、私は右足をその店に入れようとする。そして、自動ドアが開いて初めて気づいた。人がいた。人に出会えたことで少し安堵できた自分がいた。その安堵感とは裏腹に驚いて声が出ない自分がいた、おそらく相手もそうだったのだろう。

「いっ、いらっしゃいませ。ようこそコンビニエンスストアヘブンイレブンへ。と、と、当店では生活用品や・・・あれっ、生活用品やえっと、生活用品や・・・衣類なども販売しています。ゆっくりとご覧ください。」

 どれほどここに人が来ないのかがすぐに分かってしまうほどの動揺の仕方をみせたが、この人に色々と聞きたいこともある。

「あの・・・。」

「はい!」と返事にしてはあまりにも威勢がよく、とびきりの笑顔を私に向けながら言った。

「あっ、ここってどこですか。」

「えっ、コンビニエンスストアヘブンイレブンですけど・・・あっ、三途の川店です。」

「いや、この店のことじゃなくてこの世界についてのことなんですけど。」

 私は思った。もしかしてこの人は、頭が悪いのではないか、そしてこのヘブンイレブンがチェーン店だったんだということ。そんな私の気持ちを知らない彼は質問にしっかりと答えてくれた。

「ここは天国です。あなたは・・・誠に残念ですが現世の世界では亡くなっています。」

「そうですか。」

はっきりと言われて私は実感する。”私は死んだのか”と、涙があふれた。止めれなかった、止めたくなかった。

「どうして・・・どうして俺なんだよ。」地面にうなだれながら私は泣き叫んだ。

 うなだれて泣きじゃくる私を見て、慈悲の心からか心配そうに「大丈夫ですか。」と私に声をかけてくれた。私は、流れた涙を袖で拭き取りながら「大丈夫です。」と返す。ただその時に気付いた私の服が血まみれなことに。


 

 

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