王の集い
「あのようなことは、一度だけにして欲しいわ」
不満を声に乗せ、気だるげな様子で呟くのは下半身が魚の美女だ。不死王と同じく、招きに応じてやって来たのだ。やって来たのは良いのだが、陸上では本調子ではない様だ。
「すまないな、魚人族の女王。勢いでやっちまった」
詫びを入れるのは、招き主である魔人族の王だ。本当に反省しているのか、その顔では信じるに値しなかった。
「左様。一度目なので乗ったが、次は無いぞ」
話しに入ってきたのは、竜人族の王である。全身を竜鱗で覆われ、顔は竜その物である。背中からは翼が生えており、強靭な肉体を誇っていた。
「もちろんだ、もうしない。一度だけだ」
信用が無いのか、竜人族の王にまで釘を刺されてしまう。そこに真面目な響きを感じ取った魔人族の王は、砕けた態度を改めて答える。
「そんなことはどうでも良い。俺たちをここに呼んだのは、何が目的だ?」
一連のやり取りを一通り聞き流していた面々だが、鬼人族の王は痺れを切らしたのか口を挟む。その事には多少なりとも関心があったのか、残りの面々も意識を向ける。
「目的か。そうだな目的は二つある。まず一つ目、あの場に居た連中がどうなったのか気になったからだ。」
それなりに納得のいく答えだったのか、皆が理解の色を示す。それでも軽く流す程度のものだったが。
「俺はここに拠点を構えて魔王と名乗っているが、他の皆はどんな感じで過ごしているか気になっていたんだ。皆も多少は気になっていたから、ここに来たんだろ? 良い機会だから、意見交換でもしようじゃないか」
特に反論もなく、積極的には賛成しないが、反対もしない空気が流れていた。この空気に、意見交換会が行われる事が、暗黙の内に決定される。
「二つ目だが。どうだ皆、一緒に世界征服でもしないか?」
この提案に返された反応は、大きく分けて四つだ。呆れる者、肯定的な者、考え込む者、興味を示さなかった者だ。考え込んだ者たちは、戦闘能力に自信の無い種族達だ。最悪のパターンを考えるなら、参加するのも一つの手だと考えたのだ。
他の三つの反応は単純だ。肯定的な者は好戦的な者、呆れる者と興味を示さなかった者は俗世に関心が無い者達だ。
「どうだ、骨人族の王。あんたは人間と一戦交えているだろ? 参加しないか?」
魔王と不死王以外の者たちが、驚き顔を向ける。魔王は良い目と耳を持っている様だ。そこは十二人の王を集めている現状から、明らかだろう。が、不死王は隠す気もなかったので、淡々と答える。
「確かに戦ったが、世界征服に興味はない。好きにするが良い。邪魔もしないし、交流が続くのなら参加しよう」
これで話しは終わりだと、背もたれにもたれ掛かる。話し合いで決定を翻意できるのならば、そもそもこの地にはいない。そういった者たちは、選考の段階で弾かれているのだから。その事を理解していない者はこの場にはいないし、人の意見にどうこう言うような者もいない。
「そうか、無理強いをするような事でもないしな。この話しは興味のある者たちだけで、後日に集まろう。今は親睦を深めようじゃないか」
こうして、どんな所で拠点を構えて、どんな生活をしているのかと話し合った。中でも注目を集めたのは不死王で、人間と交戦する事になった経緯などを聞かれた。




