若気の至り
ルイーダは今、過去の自分を呪っていた。同族では上位十人の実力者ということで、自分は世界でも上位者だと思い込んでいた。しかし、その思い上がりは、粉々に打ち砕かれる事になる。
彼女は正しく世界でも上位の力の持ち主だった。だが、上位に位置しているだけで、頂点ではない。彼女よりも上の者は数えるのが面倒な位にはいた。その中でも上から数えても簡単なくらいな実力者に喧嘩を売ってしまった。
彼女はけして喧嘩を売っているつもりはなかった。故郷で通じていた態度を他領でもやってしまったのだ。最初の方に見かけた人型は取るに足りない者たちだった。奥に進むに連れて実力が上がっていっている様だったが、それでも気に掛ける必要を感じていなかった。
ところが、奥に進めば進むほど呼吸が上手く出来なくなってきた。引き返すという選択肢もあったが、彼女はそれが何だか負けな気がしてしまったので突き進むことを選択した。何故なら気にも掛けていなかった相手が普通に行動していたからである。結果は気を失い、捕縛される。
その後、引き出された場所には、比べるのも馬鹿みたいな相手がいた。それもそのはず、相手は彼女の主と同じ『十二人の王』の内の一人だったのだから。自分の領域内を謀らずとはいえ、掻き回されたら苛立ちを感じていてもおかしくない。ましてや、相手は最近まで人間を相手に戦争をやっていたのだ。
目の前で兵を集めろと言われた。自分のせいで戦争が起きてしまう。相手は王自ら兵を率いて来るのだ、弱い訳がない。不死王を止められるのは、彼女の主しかいない。だが、兵の数は相手の方が圧倒的だった。二十万の兵を集めてなお、領域の守備に支障の出る動員ではないのだ。
そんな相手を敵対させてしまったという現実に、彼女の心は耐えられなかった。ただ涙を流し、いっそ死のうかとも考えたが拘束具によりそれも無理だった。
だと言うのに、だと言うのに、目の前の光景は百八十度、彼女の想像した現実とは異なっていた。
「くくくくくっ。彼女の道中の様子といったら、面白可笑しくて演技が崩れそうになったぞ。」
「はははははっ! それはそうだろうな、ここに着いた時の顔は傑作だったからな!」
「あんたも悪い事を考えるな。配下の者を地獄の底に叩き落とすとはは」
「いいんだ。こいつらは種族特性上、生まれつきの傲慢だからな。荒療治だが、鼻柱を折っておかないな。後々に問題を起こされても面倒だ」
「違いない。今回は面白そうだったから乗ったが、次もそうだとは限らないぞ?」
「もちろん心得ている。今回だけの遊びだ。一度だけ顔を合わせたことがあるが、ほんの短い時間だ。正式に面識を持っておきたいと思ってな。他の者たちも招待している、会っていくだろう?」
「折角の機会だ、そうさせてもらおう」
目の前でなされる会話に、愕然とする。心が落ち着いてくると、今度は自分の行動を思い返して顔から火が出るかと思うくらいに恥ずかしかった。その顔を見られて、また笑われる。これからしばらく羞恥の地獄を味わい続けたが、他の派遣された仲間たちも同じような地獄を味わっていたと知るのだった。




