怒りの捌け口
不法侵入を行った女は、不死王の前に引き出される。道中は拘束され不満気な様子だったが、不死王の下へと連れて来られるとそんなものは吹き飛んでしまった。不死王からは怒気と威圧の為の魔力が噴き出していたのだ。
彼女はこの段に至って自分が行った行為を後悔しだした。領域への不法侵入とは、宣戦布告したのと同義である。さらに相手は王、彼女の主と同等の存在である。もちろん彼女は自分の主の方が上だと思ってはいるが、現状彼女は敵地にただ一人である。
加えて、彼女は主から目の前の王に対しての書状を届けるという任務を遂行しなくてはならなかった。しかし、友好を示すために派遣されたが、己の愚行により敵対されてもおかしくない状況を作ってしまった。つい、自分たちよりも下等(彼女の主観)な存在だと見下してしまい、当初の慌ただし対応を見て、それを確信してしまった。
だが、それは間違いだったと今なら判る。現に今の彼女は罪人として拘束され、目の前の存在は何があっても勝つことが不可能だと理解出来てしまう。彼女は同族の中でもエリートな存在だ。そんな彼女に対して不死王は、意識を飛ばさない程度に加減して圧力をかけていた。そして、彼女もそれを理解するだけの能力は備わっていた。
「お前の持っていた書状には友好を示す内容が書かれていたが、その使者は自ら体を張っての宣戦布告とはどのような了見だ?」
「あ、いえ、……そのぉ」
彼女は最早、涙目である。物理的な圧力と変わらないプレッシャーをかけられ、腰は抜けてしまい失禁していない自分を褒めたいぐらいだった。
「どのような了見かと聞いている」
「あの、それは、えっと……」
まともな解答を得られないことに、ますます腹を立てている様子の不死王。さらに強くなる圧力に気を飛ばしそうになる。目玉の存在しない眼孔から飛び出す何かで、体を刺し貫かれているかのような錯覚を感じていた。
「話しにならんな。兵を集めろ、直接確かめに行く。その女も連れて行くので用意せよ」
「なっ! お待ちをっ!!」
「もう十分待った。連れていけ」
こうして不死王は二十万の軍勢を率いて出陣する。目的地は彼女の主である魔人族の王の下である。目的は盛大なストレス発散だ。




