招かれざる客
王国との争いから得た問題点を改善していた不死王は、何者かが領域に侵入したのを感知した。ただちに警戒部隊を派遣するが、何者かが侵入した形跡はなかった。
王国と領域が接し、さらに戦闘にまで及んだ事から、王国との境には監視施設を設置していた。ところが、今回は王国とは全く別の方向からの侵入だったのだ。さらに加えて言うならば、王国以外と領域は接してもいない。
何とも不可解な事態だが、実は大部隊が通過しても一人が通過しても感じ方に違いは無かったりする。そのため、不死王領では厳戒体制令が発令された。不審な事があれば、例え些細な事でも不死王の下へと届けられる。
発令されてすぐに第一報が入る。城の上空を何者かが通過したとの報告が上がってきた。方角も侵入地点と一致しており、十中八九その者が犯人だと考えられる。捕縛命令が出されるも、上空を通過する相手を捕獲するのは困難を窮めると思われたが、思いの外に早く捕縛された。
領域の中心部、すなわち不死王の居城に向かって飛んでいた侵入者は、城に到達する前に力尽きた。死の荒野は中心に向かえば向かうほど魔力の濃度が濃くなり、肉体を持つ者には文字通りに死をもたらす。侵入者は己の体の防衛反応により、致死量に届く前に気を失ったのだ。
捕縛されたとの知らせを聞いた不死王は、浅部の城で拘束するように指示を出した。侵入者は若い女で、背中には羽が生えているらしい。肌は褐色で、耳は尖り、犬歯が長いと言う。
今回の騒動により、先の争いで問題とされた情報伝達の遅さが改善されていることが判った。とくに犬の加入が大きく、なんと意志の疎通が可能だった。スケルトン・ヒューマンは勿論、ドック、バード共に骨だけで肉体はない。すなわち、声帯もない。骨人種は魔力を用いて音を作り出しているので、何を言っているかは判らないが、内容は判るという感じだ。
この特性を利用してスケルトン・ドックを部隊編制して各地に派遣、移動可能な通信施設とした。このシステムが上手く填まり、迅速な情報伝達を可能としている。今回はこのシステムがしっかりと機能しているか、実戦に堪えうるかを判断する良い機械となった。
しばらく意識を失っていた侵入者だったが、目を覚ますと騒ぎだした。牢に入れられていること、周りに骸骨しかいないこと、主より預けられた書状が無いことに平静を保っていられなかったようだ。
書状は中身を改められ、内容を確認して不死王の下へと届けられた。書状は不死王宛の物だった為である。不死王は書状の中身を確認しており、侵入者に会う必要があると判断していた。侵入者が錯乱している時には彼女のいる城に到着していたが、慌てふためき、己の失態に青くなり、意気消沈する一連の出来事の後に呼び出した。
王国との紛争からそんなに日が経っていないにもかかわらず、なかなかの騒ぎを引き起こしてくれた輩に気が立っていた。不死王はたまには刺激を求めるが、本質的に静寂を愛する男だ。今回の一連の騒動は不死王の神経を逆撫でにするには十分だった。




