02-30 報告
父ティーモ、母ハンナ、兄ニコラス、姉ミア、主人公マティアス(マティー)
姓アイヒェンドルフ
隣の領地 ウェーバー男爵 綿の産地
隣の隣の領地 シュナイダー子爵 衣類の加工
隣の隣の隣の領地 シュミット伯爵 鍛冶が盛ん
ベシュッツァー 砦のある村の名前
デル・ドゥンクレ・ヴァルト 闇の森
ウェーバー男爵は、アイヒェンドルフ子爵の使者から書状を受け取り内容を確認していた。
「なに! 魔物の襲撃だと! 数は三千以上五千未満、普通であれば絶望的だがあのアイヒェンドルフ子爵であれば…わかった。直ぐに隣のシュナイダー子爵領に連絡をとる。何か支援が必要か?」
「いえ、支援についての指示は受けていません。書状にあるとおり、万が一の際には領民の受け入れをお願い致します」
「分かった万が一の際には任せるが良い。前回は数万の魔物の群れを討伐したのだ。きっと今回も大丈夫であろう。ご苦労であった」
ウェーバー男爵は書状の内容に衝撃を受けたが直ぐに書状を書き写して領内及びシュナイダー子爵領に連絡を行うこととした。
「しかし連絡が来るのがこのタイミングで助かった。あと一日遅ければ王都に向かっているところだ。直ぐに防衛の指示を取ることが出来るのは僥倖であった。
この幸運を生かさねばな。この書状をシュナイダー子爵領に届けよ!」
ウェーバー男爵は伝令に書状を渡し、その他の部下に対して守備に対する指示を行う。
伝令は隣の領を経由し、最終的には王都にまで届くことになる。
~ウェーバー男爵に連絡が届いてから四日後~
「アイヒェンドルフ卿、無事であったか。良かった」
ウェーバー男爵はアイヒェンドルフ子爵に近寄って、握手をした後に軽く抱擁した。
「ああ何とかなったよ。魔物は討伐したから警戒は解除して良いと思う。これから王城に出向いて討伐報告をしてくるつもりだ」
「おお! 流石はアイヒェンドルフ卿、お強い。もう発つのか? この時間では隣村に着くのは夜になってしまう。今日はこの屋敷に泊まってくれ。私も王都まで同行させて貰っても良いか?」
「もちろんだとも、是非ともお願いしたい。あと泊めてくれて助かる。宿を手配するのはいつも大変だからな」
「直ぐに客室を用意する。あとシュナイダー子爵に書状を出すから、もう少し詳しく教えてくれるか」
ウェーバーはアイヒェンドルフ(ティーモ)に話を聞きながら書状を書き上げる。
~ウェーバー男爵に魔物の襲撃連絡が届いてから六日後~
王城の会議室では王を含めた関係者が集まり、シュミット伯爵経由で伝わってきたアイヒェンドルフ子爵からの書状の内容を確認していた。
「何! またデル・ドゥンクレ・ヴァルトから魔物が出たのか! しかもオーク、ゴブリン、狼にラージスパイダーの混合だと」
王は報告に驚き、将軍に視線を向けた。
「ラージスパイダーは厄介だ。あれは城壁があっても壁を登って侵入が可能。数は不明だが苦戦するであろうな。
ゴブリンやオークの中には人と同じように武器や防具を扱えるものや、魔法を使うものもいる。前回の狼以上に危うい」
将軍は説明を求められたと察し魔物の特性や危険性を伝えた。
「アイヒェンドルフは三十万の狼、五千のゴブリンの大群を討伐した実績があるではないか。なんとかなるのではないか?」
「ゴブリンの群れの時には多くの命が失われた。もともとのアイヒェンドルフ一族全員が無くなるほどの被害があった。結果、部下であった彼に家督を引き継がせて、あの地を引き続き守らせることにした。
今回はラージスパイダーやオークも居ることから苦戦する可能性が十分にある」
将軍は王が楽観視しないように慎重論を唱えた。
「で、どうする? 援軍を出すか? 出したとして間に合うのか?」
「仮に不利な状況となっていた場合であれば、ベシュッツァーでの戦闘には間に合いません。アイヒェンドルフ領は諦めるのが妥当かと。ウェーバー領も難しいかも知れんが、今から急いで派兵すれば、ウェーバー領の防衛に間に合う可能性もあるかと。急ぐのであれば徴兵はせず、王都の守備隊だけを派兵させるべきです。物資もあとから運ばせる、基本現地手配とする」
「分かった。それで良い。至急派兵せよ!」
フランク王国の方針として派兵が決定した。守備隊の半数である千名がウェーバー男爵領に向けて出立した。
「二日後の晩餐会はどうしますか?」
「既に多くの者が集まっているため、開催せざるを得ないだろう」
宰相の質問に対して王は開催する旨を告げた。直接は影響を受けない地域の参加者が多いため、中止するほどの状況ではないと判断したためだ。
~ウェーバー男爵に魔物の襲撃連絡が届いてから八日後~
ティーモ一行はシュミット伯爵領を王都に向かっていた。その道の先に兵士の集団を見つける。
「千人位いそうだな? どこの兵だ?」
「遠すぎて分からないな」
ティーモとウェーバーは騎乗の上で会話する。護衛の兵士一名が状況を確認しに向かう。お互いの距離が多少近づき、なんとなく相手の状況が掴めるようになった。
「あれは王家の旗か?」
「確かに、そう見えるな」
「ああ、兵が戻ってきそうだ」
ティーモとウェーバーは立ち止まって様子を伺っている。そこに護衛の兵が戻ってきた。
「王家の部隊でウェーバー男爵領に向かっている最中だそうです。防衛に協力するためとのこと」
「なんと! それはありがたい。ただアイヒェンドルフ卿の活躍で既に魔物は討伐されておる。まずはその旨を伝えねばな」
ウェーバー男爵一行は王家の部隊に向かい、援軍が無用なことを伝えた。
「流石はアイヒェンドルフ卿!」
「王国の英雄!」
「いや無駄になるって思ってたんだよね」
守備隊の面々はティーモを称えた。また命を掛けるような事態も避けることが出来て皆安堵していた。
行動をともにすると移動速度が遅くなってしまうため、ティーモ一行は先に王都に向けて出立した。
なお以前にも同様の事があったため、守備隊は討伐に成功したと分かった時点で引き返す指令を受けていた。




