02-28 魔物侵攻7
「爆発した!」
「大丈夫だろうか」
「いや無理だろ…」
木壁側の歩廊上からでも分かる大きな爆発が見えた。爆発の規模から火薬の樽に引火したように見えたので巻き込まれたら即死だと容易に想像出来た。ただ石壁側の攻勢により、ゴブリン達の大半は石壁側に移り、木壁側への魔法攻撃は無くなっていた。
「石壁側がゴブリンを惹きつけているから、その隙にオークをやるぞ!」
「火薬と弾を持ってきてくれ! 火縄銃を使う」
「矢持ってきて!」
木壁側はゴブリンからの魔法攻撃が無くなったため、オークを狙い撃ちし一方的に攻撃することが出来た。一匹、また一匹と滑落していく。
「これなら勝てるな」
「お前いい加減にしろよ!」
先程から油断した発言をしていた者が士気をあげようと軽口を叩いたのだが、直ぐに油断発言を窘められた。関係の有無は不明であるが順調に数を減らしていたオーク達が発光し始める。
「凶暴化したぞ!」
皆、気を引き締めオークに集中攻撃を加える。オークは攻撃をものともせず、その場で跳躍を行って足場の悪い箇所を飛び越えて接近してくる。そして歩廊の上に手を引っ掛け、落下を免れたオークが歩廊の上に到達した。
「来たぞ! 迎え撃て!」
兵士や村人はオークに斬りかかる。オーク達は腕や体を切られながらも、力任せに周囲の人間に殴り掛かる。殴られた兵士は数mほど吹き飛んだ。鎧と当事者の強さのために大怪我を負うことはなく、傷薬で直ぐに傷は回復する。
何匹ものオークが同様に歩廊の上に飛んでくる。中には木壁までたどり着かずに滑落するものもいたが、少しずつ歩廊の上まで到達し、オークと白兵戦が始まっていた。
「なんて馬鹿力だ!」
凶暴化しているため力が強くなっており、鎧を着ていても防御を突破してダメージを与えてくる。
一方村人や兵士たちも死線をくぐり抜けているため基礎能力はオーク以上に強い者が多く、マティアスが貸与した武器や鎧で能力をブーストしているため、拮抗して戦えていた。
ただし一発受ければ危うい事は変わらず、神経をすり減らしながら戦いを続ける。
オーク達は二箇所から歩廊の上に向かってきた。一分間に二、三体は送り込まれてくるため、殲滅する数よりも歩廊上にたどり着いた数が多くなっていた。
「十分戦えているが数が増えると厳しいな。一旦引くぞ! 後方に石壁を用意しろ! 人が通れる位の隙間は開けといてくれ」
守備隊長の指示により、歩廊の上に高さ及び幅一mを超える石壁が出来上がった。石壁の長さを二m、三mと延ばしていく。
石壁の横には、幅一m程の隙間があり、戦っていた者たちが少しずつその隙間を通って下がってきた。オーク達がその隙間を通ろうとしても幅が狭く進み難く、壁を抜けられるところまで進めても出口で待ち伏せ攻撃を受けて滑落していく。
通路ではなく壁の上によじ登って走ってくるオークもいたが、途中に高さを三m程高くした場所を設けたため、簡単には通れず右往左往していた。
しかし、木壁の歩廊が重さに耐えられずミシミシと音を鳴らし始めた。そして一気に轟音と共に崩れ始める。
「うぁ」
「死ぬ」
「下がれ!」
兵士や村人十数人が崩壊した歩廊に巻き込まれて、オーク共に下に落ちていった。大半の者は木壁に並列していた石製の壁の上や、崩れた場所よりも離れた先に退避することで難を逃れることに成功した。
壁が崩れた事で右往左往していた狼達も村の中に入り込んでくる。日が暮れ始めており視界が悪くなる中、厳しい戦いが始まる。
「もう駄目だ!」
「くそ」
村人達が諦めかけた時、火縄銃の一斉射撃音が聞こえた。そして敵が集中しているところに着弾し数体の魔物を倒した。兵士や村人達が音をした方向に視線を向けると、自分達と同様の鎧を着用している集団が見えた。
「味方だ!」
「救援が来たぞ!」
「助かった!」
兵士や村人達は一斉に歓声を上げた。諦めかけていた気持ちが持ち直した。積極的に反撃を加え、落ちていった味方を助けるために少しずつ前に進む。
援軍は二射目を放ち、再度数匹の魔物を倒した。魔物の一部は援軍に向けて走り出す。援軍の半数は火縄銃を投げ捨て、剣や槍を構えて迎え討った。
「はぁっ」
ティーモは飛びかかってきた狼の顔面をなぐりつけると、顔が破裂して周囲に血肉が飛び散った。別の狼が足元に食らいつこうとするがそれを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた狼は木壁まで飛んでいき近くにいたオークに当たった。オークはその衝撃で倒れ込む。
「とうっ」
アベルは飛びかかってきた狼に対して、横薙ぎに剣を振るった。剣先が狼の側頭部を捉え、顔の上半分を吹き飛ばす。直ぐに剣を戻して他の狼の胴体に当てると、狼の骨は砕け、切られた衝撃で十mほど吹き飛んで絶命していた。
「…つ」
イエーガーが放った矢はオークの口を貫いた。矢の半分以上が後ろに抜けるほどの威力ではあったが、致命傷にはなっておらず怒り狂ったオークが向かってきた。
再度、イエーガーが放った矢は目を貫き、オークは足がもつれて転倒し、痙攣した後に動かなくなった。
「えい! とう!」
マティアスは襲い掛かってくる狼の攻撃を避けて、喉を切り裂く。華麗なステップで敵を避けてはカウンターで的確に急所を狙って倒していく。
「マティアス様! あまり前に出ないで下さい!!」
ルイーサは狼を倒しながら、マティアスを引き留める。
「大丈夫! この程度なら問題ないよ」
マティアスの言う通り、実力差があり危なげなく魔物を倒していく。
マティアスの周囲では護衛の面々が戦い、死体の山を築いていた。
あと一話でストックが切れます。
ランキングとか入って、閲覧する人が増えたら、やるきも増えるかもしれないなあ。
チラチラ。




