02-27 魔物侵攻6
オッフェンブリュッケン 中心の町、アイヒェンドルフの館がある。
ベシュッツァー 闇の森のそばにある、砦兼村
「開門! 開門!」
夜の十時、オッフェンブリュッケンに伝令が到着した。普通夜に移動するのは危険であり、通常であれば絶対にしない行為である。今回は危険を冒してでも伝えるべき緊急事態であった。
「誰だ!」
「ベシュッツァーに魔物の大群が攻めてきた! 至急アイヒェンドルフ様に取り次いで欲しい」
「何! 分かった、今門を開ける」
門番は紋章の入った旗とマティアス様から貸与されている鎧を見て、問題ないと判断し直ぐに門を開けて通した。
「何! ベシュッツァーに魔物の大群が攻めてきただと!」
ティーモは書簡を読んだ後、伝令にも確認を取る。伝令からも同様の内容が口頭で繰り返された。
「援軍を送るべきだな。明日の早朝に立つ、そのためには一旦皆を起こすぞ。本来なら物資の準備が必要だが」
ティーモはマティスに視線を移す。
「大丈夫だよ。食糧に武器、火薬、傷薬、は大量にストックしてあるから身一つあれば良いよ」
マティアスは意図を感じ取り、問われるまでもなく返答する。
「しかし今日連絡が来てよかった。明日なら王都に向かっているところだった」
ティーモは年末の晩餐会に参加するため、王都に向けて出立する予定であった。
緊急を知らせる鐘が街中に鳴り響いた。兵士は大声を出して広場に集まるように走り回る。多くの住民や兵士が集まったところで、ティーモは少し高い場所から説明を始めた。
「ベシュッツァーに魔物の大群が攻めてきた。この様な時に備えて守りはしっかりと対策してきた。しかし守備をするにはまだ人手が足りていない。
そこで俺とマティアスで救援に向かう。十六歳以上で戦いに参加出来る者は一緒に参加して貰う。一家族から一名だけで構わないので代表者を決めておいてくれ。また明日の朝六時半に鐘を鳴らす。そしたらここに集合だ。貸与している鎧や武器を装備するように。水や食糧はこちらで用意するが水筒を持ってこれるものは水筒も用意してきて欲しい。
では明日は早いので家に帰って休んでくれ。解散!」
ティーモからの説明を受けた住民達は驚き戸惑っていたが、ティーモとマティアスが参加すると聞いて、二人が居るならきっと酷いことには成らないだろうと思う者が多かった。また、問題が発生した際に救いに来てくれる存在というのは辺境の地では貴重であり、自分たちが困った際にも同様の恩恵を期待して良いはずであった。
翌朝隣村や隣の領への連絡要員は既に出立していた。広場には住民百人が集まっている。この町の防衛を任せる兵士を残す必要があるため、同行できる兵士はマティアスの護衛の兵士六人だけであった。ただ、全員死線をくぐり抜けておりその強さは折り紙付きで住民にも知れ渡っていたため、皆安心していた。
「皆集まってくれてありがとう! フォカッチャとソーセージは受け取ったか? 受け取っていない者は炊き出し要員のところで受け取ってほしい。
食事が済んだら水筒があるものは水を詰めてくれ。水筒が無いものは少しであれば用意しているのでそれを受け取るように。
休憩は隣村マグデベルクまでの間に一回、マグデベルクで一回、ベシュッツァーまでの間に一回、計算三回になる。休憩込みで約八時間だ。
日が暮れるまでに到着したいので、場合によっては休憩が無くなるかも知れない。皆大変だと思うがよろしく頼む。出立は二十分後だ! 漏れがないように準備してくれ以上だ」
皆慌ただしく準備を行い、ベシュッツァー向けて移動を開始した。
途中狼やゴブリンに襲われるがあっという間に撃退されて行軍には影響は出なかった。
休憩予定地に近づくとマティアスとアベル達は先行して休憩地に着いた。マティアスは木材を大量に配置する。簡易的な椅子とするためだ。
また幾つかのテーブルを用意し、そこにチーズケーキと塩が入った桶を置いた。水が入った樽も直ぐ側に置く。休憩地に着くとマティアスから住民達にチーズケーキを配布していく。
「はいこれ、四等分して食べてね。食べると疲労が回復するから」
等分に分けるのは少し工夫が必要だったので、大半は適当にちぎって回し食いをしている。
「水分補給も忘れずにね。塩も一つまみ取って口に入れて! 汗を書いているだろうから塩分取らないと動けなくっちゃうよ」
マティアスに言われて、塩を一つまみ手に取って口に含む。辛いため水筒に入っている水も飲む。マティアスが出した水は煮沸しなくても飲める安心な水である。
「椅子があるのは楽で良いな」
「ああ、地面に座るよりも全然楽だ」
「うまい! この前の祭りで出た料理よりも美味いんじゃないか?」
「足がむくんでいたと思ってたんだけど、これ喰ったら治ったぞ」
「またまた大げさだな。ムシャムシャ、美味い! 治った!」
皆マティアスが用意してくれた椅子や食事のお陰で万全な状態で行軍することが出来た。




